DAY1~5総括編・クロージング〜withworkweek@国際女性デー カンファレンスレポート〜
はじめに
5日間のカンファレンスを振り返って
2022年3月7日~11日の5日間にわたってオンライン形式で開催されたDE&I推進カンファレンス「withworkweek@国際女性デー #キャリアとライフはトレードオフじゃない 」。10のテーマで行ったセッションにおける5日目最終回のセッション内容をレポート形式でお届けします。
最終回は、12社もの登壇者が一様に集う回となりました。5日間のwithwork weekを開催する中で、各セッション視聴後の質問・要望事項として多かったのがDE&Iの「Equity(エクイティ)/公平性」について。視聴者みなさんの声に応えるべく、45分のセッションの最後にこの「Equity」についても触れます。
「企業のDE&Iを推進するために必要なこと」とは?
ぜひご覧ください。
- 各登壇企業からのメッセージ動画 -
それでは、セッション時のトークに沿ってレポートします。
DE&Iの推進に必要なこと
女性側にも根強いアンコンシャス・バイアスとは
Enbirh河合さん:まず、この調査で興味深かったことのひとつは、アンコンシャス・バイアスです。育児中の女性に対するアンコンシャス・バイアスにはとても根深い問題があり、今回の調査でも顕著に出ていました。
「あなたが現在の勤務先で子どもがいるが故に経験したことがあるものについて教えてください」と質問してみたところ、20%もの女性が「子どもがいるが故に責任の少ない仕事を与えられてしまう」「出張にアサインされない」と感じているんですね。一方で、ほとんどの男性はそういった経験をしたことが特にないようです。
では、アンコンシャス・バイアスの影響を強く受けているのは女性だけなのかというと、実はそうでもない。女性側のバイアスも根強くあります。これは内輪のメンバーでもざわついたのですけれども、育休を取った男性1,000人に「あなたはキャリア重視ですか、それともライフ重視ですか」と伺ったところ、60%以上の男性が「自分はキャリアよりもライフ重視である」と回答しているのです。確かに育休を取っている男性ですから、「ライフを大事にしているのだな」という見方はあるのですが、皆さんの周りを見ていただいても、「家庭なんて顧みず、仕事だ」と言っている男性は減ってきているのではないかなと思います。
一方で、92%もの女性が「男はキャリアでしょ」「男性なんだからライフよりもキャリアでしょ」と思っているんです。特にキャリア意識の強い女性ほどそう思う傾向があり、この結果を見た時に私はハッとしました。
上原さんはどうですか?
上原:色んな見方があると思うのですが、パートナーシップの問題、そこについて相互理解をし合えているか、といった観点があるのではないかなと思います。男性としてもすごく考えさせられるテーマですね。今回皆さんの中でも、アンコンシャス・バイアス観点で取り組んでいたり、考えを巡らせていたりする企業様もいらっしゃるかなと思うので是非コメントを頂きたいです。個人的にアンコンシャス・バイアスと言えばうるるの秋元さんだなと思っておりますが、取り組みや具体的な事例はありますか?
うるる秋元さん:各社さんやっていらっしゃるかと思うのですが、アンコンシャス・バイアス研修をやっています。ただ、ポイントだと思うのは「アンコンシャス・バイアスは悪いものだからなくそう」っていうのはちょっと違うなと思っています。バイアスっていうのはなくならないものなんですよね、無意識下にあるものなので。人間の脳に無意識領域が存在する中で、まずはそれを「認識する/認知する」ということが大事だなと思っています。研修の目的も「なくしましょう」じゃなくて「認識しましょう」「知りましょう」というスタンスでやっていますので、「知らなかった」「あっ、そうだったんですね」という反応が多くて。色んなバイアスがありますけれども、今はまず、それをまず知って頂くことから時間をかけてやっているところです。それがポイントかなと思います。
XTalent上原:コミュニケーション上においても、何か事前にバイアスを持ってしまうのは絶対に避けられないことですよね。こういったお話、「コミュニケーションを再発明する」という言葉をミッションにも掲げられているRevCommさんからも是非伺いたいなと思いました。
RevComm乾さん:RevComm乾です。うるるさんに仰っていただいたように、まず「認識する」っていうのはすごく重要だと我々も大前提感じています。そしてもう一つ大事にしているのは「多様な文化を創っていくってこと」です。組織においては二元論で語られる瞬間がたくさんありますよね。"男性-女性"という話や、なにか議題が出た時に"Aという意見-Bという意見"でどちらが"合っている-合っていない"といった話ってよく発生すると思うのですが、二元論による解消の仕方ではなく、第三の解を見つけていくことが大切だと思っています。問いかけることや、そもそも前提として対立構造が起きやすいんだよと伝えることなどですね。なので、対立構造の中でどう帰着点を見つけていくのか、普段のコミュニケーションで気をつけながらカルチャー設計をするようにしています。
上原:まさに、カルチャーのつくり方のお話ですよね。次は「女性管理職」に関するテーマです。
「機会の公平性」の重要性
Enbirh河合さん:女性管理職がなぜ日本で増えないのか、という問題の背景のひとつとして、「育休取得を機に昇進機会が大きく減少している」という要因があることが今回の調査から見て取れます。
◆育休取得を機に女性の仕事への意識は高まる一方、昇進意欲は減少
◆昇進機会が育休取得前は与えられていたのに対し、育休取得後は24%減少
というのは衝撃的な数字です。
XTalent上原:ライフイベントを機に昇進意欲が下がってしまうのは大きな機会損失だと思うのですが、皆さんはどのように管理職やリーダーの多様性をあげる取り組みをされているのでしょうか。アディッシュさん、いかがでしょうか。
アディッシュ杉之原さん:私が最近意識しているのは、「会社の実態を情報発信していくこと」です。女性の管理職比率で言いますと、アディッシュは様々取り組んではいるのですが、数年推移で横這いないし減少しています。それを発信していくことが重要だと思っています。
女性管理職がなぜ増えないのか、育休から復帰した時の機会設計がどうなのか、経営層が自分事として捉えているかというと、アディッシュの場合まだまだ手前にいるかなと思っています。それは私も含めてですね。その時差を超えていかなければいけないという点では「社内で数値を設けてそれを直線的に頑張る」ということをやってしまうと歪みが起きるなと思っています。社外に情報発信をしながら執行の大部分の意思決定を担っている男性陣が気付いて動いていけるよう、社内外を往復して息長く機会設計と向き合う必要があるのかなと最近冷静に考えているところです。
上原:杉之原さんが外に対して寧ろ「下がっているという事実も発信する」というのは覚悟の表れですよね。本当に素晴らしいことだなと感じます。
育休復帰後に昇進意欲が下がる13%にどう向き合うか
Enbrth河合さん:「育休復帰後に昇進機会が大きく減少する」というお話を先ほどさせていただいたのですが、女性側の意欲はどうなのかというと(棒グラフのオレンジ:育休前に本人が仕事に求めていたこと、緑:育休後に仕事に求めていること)、殆どの項目で緑の方が大きいことが分かるかと思います。つまり、育休前から仕事への意欲は高かったのだけれども、育休復帰後はさらに向上しているのです。にもかかわらず、一項目だけ大きく減っているのが昇進意欲。仕事の面白さ・仕事に対する質をより育休復帰後に求めるようになる一方、なぜか昇進意欲だけは減少している。もともと「育休前からそんなに昇進意欲はなかったよ」「育休復帰後もそんなにないよ」という人が83%存在する中で、育休復帰後に昇進意欲が下がってしまったという人は13%存在しています。なぜ昇進意欲が下がってしまっているのか、このあと是非お話を聞いてみたいなと思います。
XTalent上原:83%が意欲が高い状態ではなかった、というところも含めて様々な傾向や考え方があると思うのですが、こちらについては10Xの中澤さん、ぜひコメントをいただきたいです。
10X中澤さん:このデータ、凄く衝撃的だなと思いました。もともと低いというところも含め、本当に仰る通りだと思います。弊社の場合、まだ社員が50人ぐらいで、実は女性で育休から復帰しているメンバーの事例がまだないのですが、男性ですと事例があります。なので、あくまでコメントとしてこのデータを見て感じたのは「女性の方が自分の実力、昇進に対して自信がないという統計データはもっともっとある」ということです。さらには、育休が明けて申し訳なさを感じる方がすごく多いということを採用の場面で感じていて、家庭も大事にして働きたいという時に、昇進意欲が下がってしまう方が多いように思っています。その中で、今ですと「お子さんがいて管理職」という方は、特定の「珍しい人」「パワフルな人」になってしまい、「自分はそこまでなれないな」と思っている方が非常に多いと感じます。自社はもちろんですが、もっと全体で目指していかないといけないのは、「意欲がある特別な人が昇進する状況」ではなく「当たり前に昇進を本人も期待していいし周りも期待していい状況」です。
さらに、このロールモデルという文脈だと「凄い人」「優秀な人」だけではなく「普通の人」が、管理職就任や昇進を実現できるモデルを創っていくということと、「女性の自信のなさ」は本人だけの問題ではなく、傾向というものが必ずあるので、それを上司や周りの方が理解した上で「本人以上に本人の実力を応援する」そしてそれが「特性だということを理解」して「もっとチャレンジしてみなよ」と期待することが大事だと思っています。
XTalent上原:ここについて、いくつか皆さんからもコメントをいただきました。入社前の期待値、社内での接し方が原因なのかなど、色んな観点があると思うのですが、さっき仰っていた「統計上の違い」「元々の昇進意欲の程度」という話は、今回5日間のセッションの中でも2日目の昼、マネーフォワードさん、うるるさんの取り組み等でも伺いました。「どうやって自分たち自身の意識を変えていくのか」とか「女性への働きかけ」とか、様々なお話が出てきたのですが、女性の管理職比率で高い数字を出していらっしゃるマクアケさん、コメントをいただいてみたいなと思いました。
マクアケ坂本さん:当社の場合ですと、初期から男女の管理職比率はずっと半々ぐらいをキープしています。これは「創業時の経営陣の中に既に女性がいたから」というのが一つ大きい要素かなと思っています。そうやって経営の強い意志のもとで体現する、それが当たり前であることを浸透させることをやってきました。もう既に創業から長く時が経っている会社さんだとどうしようもないと思われがちですが、いつからでも意志を持てると思いますので、「私達はこうしていくんだ」という姿勢をしっかり見せていくことで自然と周りがついてくる状況を当たり前化していくのがいいと思います。
上原:マクアケさんでは実際、性別を問わず元々昇進意欲が高いと感じておられるのか、それともそこには違いがあって何か心がけていらっしゃることがあるのか、この辺りどうでしょうか。
マクアケ坂本さん:性別によってどう違うかという点は難しいのですが、よく社内で言っているのは、女性は「言われないと、意外と自分の昇進意欲に気付かない」「求められたらやります」というタイプが多いよねということで、よく経営会議の中でも話します。私は子どもがいますけれども、管理職から本人に「やってみない?」「やれるんじゃない?」と声を掛けていくことが大事かなと思っていて、それで「やってみようかな」と思う方も結構いると思うのです。なので、もしかすると昇進意欲は「見えている部分」と「本人も気付いていない見えていない部分」があるのかもしれないですね。それを「引き出す」ことは大事にしているケアポイントです。
上原:これは今回参加されている経営層の皆さんにとって一つの学びになりますね。
Enbirth河合さん:マーケター的な視点でいくと、キャズム理論と同じで「3%がイノベーター」で「13%がアーリーアダプター」なのです。ここを越えないとキャズムを超えられず、普通の人が管理職になれない。今は特別な3%のスーパーウーマンのような人しか管理職になっていないという状態なんですよね。なので、とにかくこの「13%の人に育休復帰後も意欲を保ち続けてもらえるかどうか」というのが、この「83%の人が管理職になれるかどうか、なろうと思えるかどうか」に響いてくると思うので、是非この「13%のキャズム越えだ」ということを皆さんに覚えていただけると嬉しいです。
時間的制約がある人だけにみえている世界
次は、働き方の話です。共働きに切って切り離せないのが時間の制約です。今は時間で評価する企業もだいぶ減ってきているので、パフォーマンスで評価されていればいいじゃないかと思うかもしれないのですが、ケア責任のある育児中の人は「もっと日常的に残業ができたら評価されると思う」と回答した人が37%であった一方で、ケア責任がない人・育児中ではない人は80%もの人が「いや、そんなことない」と回答しているのです。こういった暗黙知のルールが未だに存在している、長く残業する人の方が頑張っているように映る、火消しをして突発対応した人が評価される、このような従来の働き方や視点は根深いのだなと、このデータから見てとれました。
XTalent上原:今日の昼、ギバーテイクオールさんとハリズリーさんとのセッションの中で「業務設計の段階から、突発的対応があってもお互いカバーできる仕組みをつくる」「そもそも働く時間より成果で評価する」「時間が短くなっても給与を落とさない仕組みを職種に合わせてつくる」というお話があがっていましたね。長時間労働の中でどうやっていくかというのはアーリーフェーズになればなるほど難しいテーマだと思うのですけれど、Sherpa consulting Partiesの西さんはどうお考えですか?
Sherpa consulting Parties西さん:直近、大手コンサルティング会社が労働時間超過で新聞に載ってしまっていましたけれども、時間べースの働き方が主流の業界であるとまだまだ思っています。その上で、時間ベースで働くってそもそもが極めて社内的な考え方、上司に対するアピールでしかないと思っていて、会社としてどういうブランディングをするかだと思っています。「どれだけ頑張ったかではなく、何を出すか、お客様にどんな価値を提供するか」が大事なので、良質なアウトプットを出すことと、お客様にちゃんとブランディングをすることとを伝えています。社内メンバーに対しても、日常的にレビューの中で何回も伝えることを非常に意識しています。新しく入ってくれた育児ケア責任がある社員もいるのですけれど、彼には「"何を出すか"だから、残業できなくても何も問題ないし、昼や夜の時間帯で制約があってもそんなことは関係ない」ということを言い続けています。
XTalent上原:クライアントを向くとどうしても「すぐレスポンスすることに価値がある」と評価されがちなのですけれど、そこは意志を持って経営から変えていこうとされている、ということですね。
「時間ベースでない働き方」という観点だと、今リモートワークが当たり前になって各社お考えが変わってきているように思うのですが、こちらについてJustInCaseさんからも是非お話を伺いたいです。
JustInCase杉本さん:JustInCaseも実際、子育てをされながら活躍いただいている方は多いです。実際にwithworkさん経由で入っていただいた方も複数名いらっしゃいます。どうしても、「すぐに連絡ができる」「何かあった時にすぐに出られる」ことを重視する会社が多いと思うのですが、JustInCaseはまず、なるべく「絶対に会社に来ないといけない」「誰かじゃないとできない」というのをなくそうという動きをしています。
例えば、頭を使う業務はみんなにしっかりやってもらって、業務標準化できる業務はルーチン化、アウトソース。ドキュメントにまとめて誰かが助け合える状態を創ろうということをリードメンバーが主導しているので、いい文化だなと思っています。あとは、制度をしっかり準備している訳ではないのですが、Slackというチャットツール上で「申し訳なくない」スタンプを皆さん結構よく使っています。それを例えば「今日は中抜けします、ちょっと子どもが熱出しました、すいません」って誰かが言った時に「申し訳なくない」スタンプをみんなで押し合うんです。そういったところで助け合いが広まっているのを今度はどんどん制度化する段階にきています。
上原:Slackでまさに会社の文化って創られますよね。
JustInCase杉本さん:そうですね、リモートワークなので。そういった「見える化・言語化」は大事にしています。
XTalent上原:今日の昼のセッションの中で、ギバーテイクオールさんが「初期メンバーにお子さんがいらっしゃる方が活躍されていたことで、突発的に人が抜けてもまわせる業務フローを構築できた」という話がありました。そういった事例について河野さん、教えて頂けませんか。
ギバーテイクオール河野さん:ギバーテイクオールの河野と申します。弊社は創業時の経緯として、ゼロイチフェーズのビジネスモデルができるタイミングで当時育児中の方がキーパーソンになって事業の仕組みができています。私が逆の人材で、独り身で子育てをやったことがないという状態で経営をしているので、私が絶対にその意思決定を一人でしないということを大事にして会社の文化を創ってきました。その結果として、やろうと思えば一人で完結できる業務でも、敢えて少しでもみんなが協力し合える要素をオペレーションの中に組み込むことをみんなで決めてやってきたので、それは今になってはすごくよかったなと思っています。
上原:「敢えて、時間に制約のある方が業務をつくる」ことのメリットが中長期で効いてくるというお話だなと自分の中での気づきがありました。
Enbirth河合さん:時間制約がある人にしか見えない世界ってあるなと、私もこのグラフを見て思ったのです。ケア責任がある・時間に制約がある人から見ると「日常的に残業ができたらもっと評価されるのにな」と思っているのですけれども、日常的に残業ができる人から見るとそう思っていないのです。「それができて当然である」状態の時には、非効率な働き方に気付けなくなってしまっているんですね。なので育児をしている人、介護をしている人、障がいを持っていらっしゃる人など、多様な人の視点が入ることで見える世界は広がると思います。
制度の存在 << 本質的な運用
次に進みますけれども、これは「制度がどれだけ組織に浸透しているか」というのを表したグラフです。一番下の項目は「制度そのものは充実しているか」という制度の存在に関することですが、上の項目も重要視しています。「その制度は女性だけではなく男性も使いやすいのか」「制度を使っても肩身の狭い思いをすることはないのか」「評価や昇進に影響はないのか」といった"制度があるだけではなく、本質的な運用がなされているのか"という側面のことです。
この結果を見ていただくと、運用面の項目が凹んでいます。つまり「制度はあるのだけれども、その制度を男性は使いづらい」「制度を使うと肩身の狭い思いをする」「評価や昇進に影響がある」と捉えられているんですね。もう一つのポイントは、緑とオレンジで差があると思うのですが、ケア責任がある制度を使う当事者から見ると「制度を使うと肩身が狭い」「制度を使うと評価や昇進に影響がある」と感じている一方で、制度を使わない非当事者は「いや、制度堂々と使えばいいじゃないか」「評価や昇進の足かせにならないよ」と言っていて、そこに気付かないんです。非当事者と当事者のみている世界は違うということがこのグラフから分かります。
XTalent上原:「制度をどう浸透させるか」について、今回皆さんの企業の中のデータを取らせていただくと、運用面がとても浸透していました。アーリーステージでも大きな企業でも、そこがしっかりしているって本当に素晴らしいです。ここでアンターさん、「本質的な制度浸透」に関するお考え等、お聞かせいただけませんか。
アンター西山さん:子育て中のメンバーもいれば、親の介護をしているメンバーもいるのですけれども、私達が大事にしているのは「プラスマイナスじゃない」というのと「持ちつ持たれつ」と思っています。行動指針の中に「窮地の仲間を助けよう」「互いをリスペクトしてフラットな関係でいいよ」というものがあり、「どんな人がいても平等だよね」という考えが根本にあるんです。さっきJustInCaseさんに仰っていただいた部分で、「申し訳ないと思わせないことが大事」だと私達も思っているので、例えば、介護中・子育て中のメンバーには「何はできるけど何はできないか」を聞くようにしています。
例えば、介護中のメンバーに「日中のミーティングは難しいけれど、朝早めのミーティングは大丈夫です」とか「どうしてもミーティングは難しいのですが、Slackは昼の時間でなるべく見るようにするのでそこにお願いします」とか「夜やっておきます」ということだけ投げておいてもらえれば、みんな納得度が高くなるように感じています。介護中・子育て中だからといって「変な優遇」をしないことは大事で、例えば「●●さんはこのミーティング出なくていいよ」と言わない。「●時であればミーティングに参加できますか」と聞いてみんなで決める。もしくは「そもそもこのミーティングはなくてもいい・頻度を減らした方がいい」という判断をしてもいいと思っています。あとはマネジメント層がそれを率先してやることが大事ですね。例えばミーティング中に、メンバーのお子さんが入ってきて「パパ早く終わって」という言葉かけがあったとします。この場合、管理職からは「あと3分で意思決定しますね、ミーティングがショートになってよかったです」とポジティブに捉えていることを伝えて申し訳ないって思わせないこと、会社の行動指針でそうしているという位置づけを伝えることが大切です。マネジメント層がまず率先してそれをポジティブに捉えるということ、変な優遇をせずフラットであるということ、それが会社の文化であることを伝えています。Slackの行動浸透スタンプも「そのスタンスが当たり前だよね」という会社のカルチャー醸成にポジティブに働いています。
XTalent上原:ガタツキが生まれないような考え方だなと感じました。制度の本質的なためにはカルチャーが重要だよねという話は今回様々なところで出たのですが、そのカルチャーを変える試みはまさにPR Tableさんが取り組まれてきたことかなと思っています。大堀さん、いかがですか。
PR Table大堀:うちも企業カルチャーづくりに去年1年間かけていて、そこでミッション・ビジョン・バリューをつくりました。制度面もそれに合わせてつくる議論をしています。看護休暇の場合、例えば働いていると2時間だけお子さんを病院に連れて行かないというシーンがあると思うのですが、半日休むのではなく時間単位で利用できるようにしています。それは現場の声から生まれた制度づくりを大事にしてプロダクトをつくっていく感覚です。ニーズが出たら機能をつくるという組織づくりをプロダクト開発と同様にリーンに進めています。それが制度利用において「みんな躊躇わずに使える」という面で非常に機能していると思っています。
XTalent上原:「プロダクトづくりのように組織をつくる」ってスタートアップ的に響く言葉ですね。
PR Table大堀さん:大体過去のうちの場合、「この施策いいんだよね」というものは割と滑っていた印象があって、それに向き合ってきました。「本当の意味でためになっていない制度がある」という状態は、組織として非常によくないという感覚があります。
XTalent上原:スタッフが冷める体験は、ヒヤッとしますよね。
多様な人材活躍のセンターピンは?
Enbirth河合さん:では次に進みましょう。先ほどのグラフで気になるのは「制度はあるのだけれども女性のものになってしまっていて、男性が使いづらい」という点です。どうしていけばいいのかをまとめてみました。
まず女性管理職について「育休明けの13%の人が管理職になりたくない・昇進意欲を失ってしまっている」という話を先ほどさせていただきました。その背景に一体何があるのかというと「家庭環境」と「職場環境」の両方あるのです。今回、家庭環境の話はしなかったのですけれども、「昇進意欲を失ってしまった13%は、家庭内で70%も家事育児を負担している」のです。70%って結構大きい数字ですよね。なぜ70%も女性が負担しているのかというと、男性の働き方が大きく影響しています。
一方、職場環境においては「長時間労働・暗黙知の評価基準・アンコンシャス・バイアス」が渦巻いています。男性中心など、均一的な組織ではこういうことが起こりやすい。「男性の働き方・男性中心の職場」というのをどうやったら改善できるのか辿っていくと「男性が制度を使う」というところに行き着くのです。男性が「特別なこととしてではなく、育休を取る・制度を使う」ということがいかに大事か、今回の調査を通じて示唆されました。
XTalent上原:「女性のために」という制度やカルチャーをつくるのではなく、「性別・子どもの有無にかかわらず、誰もが」様々な働き方ができることを目指すことが大事なポイントなのかなと思います。
この観点でDROBEさん、経営層の皆さんも育児をしながらという状況かと思いますが、男性の制度活用や働き方という観点で前提となる考え方、制度の活用のされ方をお聞かせいただけますか。
DROBE山敷さん:まさにここは大きい課題で、このレポートの中でもこれだけ矢印がある中で「何を解決していくのか」ということはすごく大事です。起こっている事象の裏側として、男性のバイアスはメイン課題として捉えた方がいいと思っています。一企業だけだと拭えない考え方、例えば「男性は働くもので育児はしないものだ」といったものに対し、企業が「いやそうじゃないですよ」と言ったとしても、ご兄弟、ご家族、大学時代の友人、様々なところからバイアスは形成されてしまうものなので、いかに「その企業の空気感・カルチャーをつくっていくか」は大事だと思っています。裏を返すと心理的安全性にも近い話なのですが、我々はまだ今3期目。ベンチャー・スタートアップの中でも僕は楽だと思っています。なぜかというと100年の歴史がある大企業さんで今までの男性経営層が全員、「育休取らなくてもいけるよね」「全部、パートナーに任せてきました」というスタンスで、それが歴史として積み重なってしまうと、初めての男性育休を100年目にして取るというようなことになる。その場合、すごくハードルが上がってしまうと思うのですが、3期目で歴史をつくっていける立場だと全然簡単だなと思っています。ロールモデルという概念もすごく大事で、「トップ経営層になった時に象徴的な行動を取ること」だなと思います。指針も、例えばすごく駄目だと思う判例として「奥さんが出産をする時に、私全然関係なくミーティングしてました」のようなことを明け透けにチャットすると、メンバー・周りの人にとって「やっぱりそういうものだよね」「子育てや子どもは女性のものだ」と刷り込んでしまうことになると思うのです。トップ層というのはそうじゃなくて、象徴的な行動を取らなきゃいけない。体現出来てはじめて、社員が「じゃあ自分もこういう制度を使おう」という姿勢になってくるのかなと思うので、私自身育休はとっていないのですけれど、子どもが生まれた時に妻の実家で2か月ぐらいリモートワークをしていました。それをメンバーに伝えていましたし、トップ層がメンバー以上に心がけて象徴的行動を取ることによってある種、空気感をつくることはすごく大事だと思って取り組んでいます。
XTalent上原:まさに、経営層の振る舞いが組織や個人にどんな影響を与えていくかという観点で、昼のギバーテイクオールさんとのセッションでも、どのように制度をつくっていくのかというお話がありました。ギバーテイクオールの河野さん、元々考えていらっしゃることや今回気付いたこととしては何かあられましたか。
ギバーテイクオール河野さん:私、象徴的行動が取れない立場でどうしようかなと思っていまして、今回のカンファレンス登壇のお話をもらった時、男性の子育て中のメンバーに「実際、育休は取りやすいか」という話を聞いたのですけれど、「正直、まだまだ育休を取ることを言い出しづらいです」という回答が返ってきました。その状況で制度だけつくったら失敗しそうだなというのをさっきのお話を聞いて思いましたね。我々も5期目のスタートアップでちょうど20人ぐらい、これから制度設計などに取り組むタイミングなので何からやろうかなと今考えた時に、性別で区切った視点でみるのはよくないなと。何をセンターピンにしたらいいのかと考えた時に、家庭環境をお互いがもっとフラットに知れる会社になった方がいいのではないかなと今日の昼のセッションを踏まえて考えています。というのも、我々は住宅交流をマッチングするプラットフォームを創っていて、やり取りさせていただくのは女性の方なのですが、おうちを買う時って必ず家族の状況、共働きかどうか、今後どうしていくのか、それらをヒアリングしてお手伝いしているのです。各メンバーの男性がどれぐらい家事をやっているか、女性スタッフが朝何時に起きてお子さんを送っていって仕事をしているのか、家庭のリアルな解像度って私自身はそんなにまだ高くないなと思っていて、それに対して何か経営トップのメンバーが知っていたり、お互いが知っている環境があれば、「お前、何で働いてるんだ。お子さんかわいそうだから休めよ」ってみんなが言い合える会社になると思うのですよね。でも、私たちがやるべきことはそのための場をどう創っていくか、そこに対してどれぐらい本気度を持って取り組むか、だと思っておりまして、スタートアップでお金的にも人的にも余裕がない状態ですけれども、この時に形成される文化ってすごく大事だなと思うので、そこをいかに形成するかだと感じます。
XTalent上原:聞けて嬉しかった言葉だなと思います。
平等(Equality)か公平(Equity)か
Enbirth河合さん:最後のスライドです。今回「D&I」ではなく「DE&I」という言い方をしています。「Equity」の「公平性」というのは、今の時代になくてはならないものだなと思っています。そして「平等性」と「公平性」は違うのです。「平等性」はみんなにそれぞれ同じ台を与えることだけれども「公平性」というのは、一人一人に合わせた台の数を与えるということ。すごく大事な考え方だと思っています。
XTalent上原:こういった取り組みについて、amptalkの猪瀬さんは海外経験を通じて意識されていることがありそうです。教えていただけませんか?
amptalk猪瀬さん:私自身はアメリカで1年間勤務していた経験がありまして、その経験と視点からという観点では、実はEquityってシンプルによさそうに見えるんですけれども、そんな単純なものじゃないなというのは私がアメリカから帰ってきた時の意見です。これ右の方にすると何が起こるかというと、「一番背が高い人が不平不満を言う」ということが実際に起きているのです。
Equityに移行している理由はシンプルで、米国においてマネジメント層はメジャー人種の男性が圧倒的に多くを占めている。それを変えていくためにはマイナーな人種かつ女性に、より多く無理やりにでも機会をつくっていかないと変えられないよねという思想です。それでEquityが推進されています。例えば白人男性と、マイナーな人種の女性とが同時に選考に出た場合、その白人男性の方がスキル的に優れていてもその人が落ちる、ということがこの「Equity:公平性」だと思っているので、これを私たちがシンプルに全員実行できていますかというと、そんなにできていないと思っています。
私たちは小さい初期のスタートアップなので、ダイバーシティ、カルチャーをつくっていくことができる段階で、経営陣としてはこの「Equity」をより強く実践し、この社会自体を変えていくという意志があります。
「何ができているか、できていないか」ということではないのですけれど、こういう意志の強さを持って不公平に立ち向かっていく必要がある。それができるのがスタートアップだと思っています。
あと、「女性の家事負担が多いので、夫がやります」という話には別の要素が含まれる気がしています。米国ではベビーシッターの制度が充実しているので、「家事を双方ともやらない」という選択肢があるのです。会社から示すオプションとして家事代行・ベビーシッターの補助などを出すというのもある種一つのソリューションになるので、無理して男性がやるというシンプルな帰着点にいく必要はないのかな、というのが私の意見です。
XTalent上原:海外の視点、そして実際にどういうことが起きているのかを知るのはとても大事ですよね。
未来、何に取り組むか
XTalent筒井:5日間のカンファレンスも終わりが近づいてきました。最後に本企画を運営している2社の代表からのメッセージということでEnbirth河合さん、XTalent上原さん、それぞれ一言ずついただけますでしょうか。
Enbirth河合さん:皆さん、本当に1週間ありがとうございました。今回、弊社で調査分析を担当させていただいたのですけれども、とにかく「データの重さ」を感じました。何が重いかというと、まず「個人の声の重さ」です。
今回、インセンティブなしに1,000人以上の方が調査に協力してくださったのです。普通こんなことってなかなか有り得ないです。それだけ多くの方に「#キャリアとライフはトレードオフじゃない」というメッセージに共感いただき、課題意識も持っておられるのだなと「一人一人の声の重み」を強く感じました。
もう一つ、25社の「企業としての重み」も感じました。今回、各社さんの組織の診断も簡単に実施させていただいたのですが、その結果から、本当に皆さんはよりよい組織をつくるために日々努力されているのだなというのが、強く伝わってきました。と同時に「本当によい企業、面白い企業」というのは世の中にあるんだな、日本って捨てたもんじゃないな、と感じました。そういうのがなかなか外からは見えないってもったいないな、とも感じたんです。私たちはHRサーベイの事業をしているのでよく分かるのですが、そのサーベイの結果データは企業の中に閉じてしまっているのです。
でも、今回協力いただいた各社さんは、それぞれ凄くいいところがあって、カラーもあって、こういうことを可視化していけたら企業さんにとってもメリットはあるし、これから転職を考えている人にとってもすごくメリットがあるのではないかなと思いました。なので、次のチャレンジとしてどの企業で「キャリアとライフはトレードオフじゃない」働き方ができるのか、透明性高く開示していくことにチャレンジしていきたいなと思っています。こう思えたことは今回登壇いただいた皆さんは勿論、参加者の皆さんの思いと熱量に押されたおかげだなと、本当に感謝しています。1週間どうもありがとうございました。
上原:今回、withworkとして取引させていただいている企業の皆さんにお声がけをさせていただきましたが、皆さんのお話を聞いて自分たちが今変えようとしていること、社会をこうしていきたいと思っていることが実現できそうな勇気を頂いたなと思っていて、とても感謝をしています。
この「#キャリアとライフはトレードオフじゃない」という言葉、コンセプトが実現できるような皆さんのような会社にこそ人が集まるような仕組みを我々としてもつくっていきたいと思いますし、そんな社会にしていけたらという覚悟です。きっとこれから、人や物やお金がそういった企業にこそ集まることで成長し、持続可能な社会がつくられていくというのがあるべき姿だと感じています。このムーブメント、弊社のような1社ではなかなかつくれないと思いますので、是非皆さんと一緒に創っていけたらと思います。改めて、どうもありがとうございました。
XTalent筒井:調査に協力いただいた皆さん、そして登壇いただいた皆さん、視聴者の皆さん、伴走くださりありがとうございました。このアクションをこの5日間だけで終わらせないように、ここからつなげていくということをみんなで意識して動いてゆけたらなと思います。最後に、皆さんに感謝の気持ちをお伝えさせてください。5日間本当にありがとうございました。
- 各登壇企業からのメッセージ動画 -
- 視聴者の皆さんの声-
1,000名の調査協力、10のセッションテーマ、25社の協力企業、
事前申込枠だけで800を超える視聴者のみなさんとともに紡いだ5日間で
生まれた動きはとても大きかったことを実感しています。
ー 協力いただきましたみなさん、本当にありがとうございました! ー
withworkを運営するXTalentでは、今後もこのようなカンファレンスや企画を続けてまいります。ぜひ気軽にお声がけください。
問い合わせ窓口
■XTalent株式会社
- メールアドレス:yae.tsutsui@xtalent.co.jp
- 担当者:筒井八恵(事業開発・広報PR)
note:https://note.com/yae_tsutsui/
Twitter:@yaetsutsui
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- サービスページ:https://withwork.com/
- 公式SNS
note:https://story.withwork.com/
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