シェア
ichi。
2021年9月20日 15:58
紗英の表情は意外にも穏やかで、私の横にゆっくりと腰を掛けて口を開いた。「今思えば大した理由ではなかったのかもしれない。私は中学2年生の夏頃から、いじめが原因で不登校になったの。保健室経由で早退を繰り返す内に、学校に行くふりして図書館に行く事が増えて、結果的に毎日私服で通う様になった。親も放任というか、一緒にいる時は優しくて『叱る』ということをされた記憶が殆ど無い。休み始めた頃の不安は徐々に薄
2021年1月24日 15:22
「ねぇ、あの小説読んだ?『プリーツ』。女子高生連続殺人事件の犯人も女子高生でしたってやつ」靴を脱ぎリビングに向かう最中で紗英は問う。確かあれは、27歳くらいの岸飛鳥(きしあすか)によるデビュー作にして問題作。 ーーーーーーーーーーーー僕は女子高生が嫌いだ。馬鹿な女も、賢い女も、どこか男を見下す様なあの目が特にね。若さや制服で自分に価値があると勘違いしてる様な人は、そういう要素がタ
2021年1月24日 00:29
学校の最寄駅を二つ離れた駅から、歩いて30分ほどの住宅街に並んでいる紗英の家に着くまで、話す時間は充分にある。彼女は敢えてバスを使わず、途中のコンビニでスナック菓子を三つほど買った。「安いスナック菓子に抵抗なく手が出ちゃう女の子は嫌い?」コンビニを出るなり彼女は言う。「好きなものを食べれば良いよ。それに僕は女性を好きにはならない」私は表情を変えずに返した。「私、まあまあ胸大きい
2021年1月23日 18:43
高2の春、図書委員で一緒だった野球部の三年生に振られた。受験と部活、忙しいのは知っている。でも、理由はそれだけでは無かったはずだ。引退を賭けた最後の試合、彼は同い年の女性の肩を借りて泣いていた。校内で2人で歩く姿もよく見かけた。私に恋愛感情を抱けない、ただそれだけの話だ。私も私でその悲しみを埋める様に、同級生の女子と付き合った。名前は紗英。同じクラスの同じ図書委員だった紗英が、一緒に図書室に向