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ichi。
2019年8月7日 06:11
笑い声が聞こえる。自分の心情とは裏腹に、シロウは笑っていた。「お前、本気で《覗けばそのままの遺体を拝める》とでも思ってたわけ?隠しもせずに朝の学校に横たわったまま放置とか?確めるの遅すぎなんだよバーカ。」彼の口調は相変わらず煽るような姿勢だが、おかげで妙に冷静になれる自分がいた。 そりゃそうか、遺体は隠されるべきだ。当然だ。ブルーシートに覆われた現場を伏せ目で見下ろす。「知って
2019年7月15日 02:23
7月7日。この日はまさしく今日であり、自分の命日である。願い届かずこの世に存在し続けるこの身体は、例年長引く梅雨に埋もれてダボつく、生き辛い学校に未だ取り残されている。2時間目のチャイムは既に過ぎた。何か、他の気づきを得なければいけない。死んだその日の新鮮なうちに自分を確かめなければ。有耶無耶にしてきた生前よりも浅はかな日々が、際限なく続いてしまう事を酷く恐れた。自分は呪縛霊
2019年7月9日 05:37
行き場を失った。都市伝説とかどうでもよくなった。何か、勘違いをしていた気がする。典型的噂の最中で、一つの命が悶えていた。華は花子さんではないが、華にも華の物語がある。この学校にその断片があるなら、彼女の生きた証があるなら、巡礼の後に「彼女の死」を確かに受け入れたかった。そしてこの「存在」は、自分や彼女だけではないのだろう。この「存在」に終末があるなら、出来ることと出来ない事を
2019年7月8日 02:37
透過はしない。浮遊もしない。実体はあり、鏡にも映る。自分は、自分が存在しないことを証明できない。自分を認知できるなら、世の様々な奇怪も判明出来るのでは無いだろうか?自分は、後に継がれるような都市伝説に残る存在では無い。だからこそ、出鱈目な噂で嗤われて忘れられるのが関の山だろう。つまらない人間に対して、数多の恐怖と好奇を煽ってきた花子さんはどんな言葉をくれるだろうか。1時間目のチ
2019年7月6日 20:16
死んで尚、死にたい気持ちは変わらない。自分が一向に自分であり続ける事に、嫌気が差してこその乱心だ。自分のことが好きとか嫌いとか、だから楽しいとか辛いとか、そんなシンプルな生き方なら、前を向くたびに強くなれる。もうやめたい。終わりたい。消えたい。「死にたい」はその実現のための欲求であり、決して、死ぬことが目的な訳ではなかった。死んでも未だ自分は自分のままなんて、もう死ぬことも出来
2019年7月5日 04:40
月曜日朝翼が生えた気がした。いや、正確には「芽」とでも形容すれば良いのか。「翼を生やすならここだろう」そう思える肩甲骨内側の少し上が、軽く疼いていた。息絶えた実感は無く、ただ少しだけ身が軽くなった様な気がする。「生きる」に疲れていた自分は、それを脱いだ今、体感的な命の重さというものを知った。例えば、自分の吐息が触れた何れの生物もが朽ちていくのを目前に、自分の「生」を肯定出来るだろうか