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【詩】夜はやさしは誰が為
勿体ぶる夏の夜 忙しない冬の朝
憂鬱なる秋の夕焼け 去りゆくだけの春
どれほど移ろう時であろうと 夜はつねにやさしいという
君がいなくなった晩も おなじだったろうか
ぼくは憶う 初めての夜を知らないけれど 母は何を思ったのか
ぼくは憶う 初めての夜のことを 君の温もりについて
ぼくは憶う やがてくる夜のことを 誰がいるかはわからないけれど
夜の向こうには何があるのか 知ることのないよう人は眠る
惰眠を貪るほうが賢明だと、誰かに言って欲しかった
夜を徹して待ってみても そこには何もなかったのだから
君にとってはやさしかったのか 夜に食べたチョコレートケーキ
カフェインレスのブラックコーヒー それは君無しのぼく 頭はまだ回っていない
周るからこそ夜が明ける 太陽はただそこにいる
ぼくも同じようにあるというのに なぜぼくは廻されていると憶うのか
忘れたかつての記憶 誰かが覚えようとして 建てた記念碑
どれがかつてのぼくなのか 誰も知らない 墓守さえも
夜に起きて書いている この思いに傷をつける
部屋の外の喧騒 何を言っているかわからない 受話器の奥のあの雑音
それでも耳を傾けた 向こう側で 君が一人で立っている 押し殺したぼくの息を聞いている
そんな夜を過ごしている ぼくは一人で過ごしてる
誰のための夜だろう 誰に易しい夜だろう