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論理の飛躍に気をつけろ! 「である」と「べき」のギャップ
1. うぇいのプチ倫理学講座
どーも、うぇいです。これから〈シリーズ 欲求の哲学〉というものを書いていこうと思っています。性欲、睡眠欲、食欲、金銭欲、名誉欲について、今のところ扱うつもりです。
そのシリーズを始める前に、今回はその予備知識として、メタ倫理学で有名な問題を紹介しようと思います。メタ倫理学っていうのは、そもそも道徳ってなんなの~?みたいな話を議論する倫理学です。本記事では、メタ倫理学では有名な、「である」と「べき」のギャップ問題について解説したいと思います。
2. 「~すべき!」を連呼する自称評論家に気をつけよう
なーんか、Twitterとかネットの記事を読んでると、「日本人は~すべき」とか、「みんな~すべきだ」みたいに、ベキベキベキベキ、べきを連呼してますよね。
こういう「~すべき」という形の文は規範(norm)と言って、「~である」という事実と区別する必要があるのです。
メタ倫理学には、「である」と「べき」のギャップ(is-ought gap)という大きな問題があります。これはイギリスの哲学者デイヴィッド・ヒュームが指摘したことからヒュームの法則とも呼ばれます。その内容は、「a はbである」という事実的言明から「a を c すべきだ」などの規範的言明は論理的に直接導けないというものです。
例えば、「今まで自分の先祖が子どもを残してきた」という事実(であった)から「私も生物として子どもを残すべきである」みたいな規範(べき)は導けないのです。まぁ最近はちょっとずつ結婚しない選択をする人も増えてきましたが、やっぱり親戚一同から「結婚しろよ」的な圧力が加わるように予想されます。
そこまで大仰なものでなくとも、「この部活では伝統的に先輩の言うことは絶対だったから、上級生のオレの言うことをお前も聞け!」という事例も、ヒュームの法則によれば論理的にアウトというのがわかります。
だって、考えてみてもください。「人類はずっと戦争をしてきた」という事実から、「人類はこれからも戦争をすべきだ」という規範は導けないじゃないですか。
僕たちは、「人類はずっと戦争してきた(事実)けれど、みんなで話し合って争わないようにすべきだ(規範)」って思うようになったわけです。事実と道徳は、(全く別とは言わないけど)別な次元なんです。
3. 科学的に実証されていることに従うべき?
第2章で示した「である」と「べき」のギャップという視点で考えれば、科学的な記述でさえも「事実(である)」の記述であるために、「規範(べき)」を導けないことがわかります。したがって、「科学的に正しい」というのを盲信するのはよくないと僕は思います。
「きちんとしたプロセスで行った実験の結果、こういう事実になったらしい! だったら、僕はその事実に合わせて考え方・行動を変えてみようかな」みたいなスタンスだと、論理が飛躍しているというのをキチンとわきまえてる感じになるかな~と僕は勝手に思ってます。
ここで僕が指摘したいのは、科学は事実を究明する学問だということです(特に、自然科学)。したがって、科学的知識は、価値(よい悪い)とか規範(べき)をスムーズに提供してくれるものではないのです。まぁ、結局科学的知識をもとに話し合おうぜってことになっちゃうんですケド。
3. まとめ
今回は、べきを連呼する集団と一線を画すためのプチ倫理学講座を開講しました。
単に「である」ことから、「べき」という主張をすることはできないのです。でも、いろんなところでピョーンと跳躍されているから、皆さま、お気をつけください(僕の文章でもあると思います汗)。
この「である」と「べき」に気をつけながら、<シリーズ 欲求の哲学>を始めたいと思います。
思考の材料
参考文献
一ノ瀬正樹『英米哲学入門』、筑摩書房、2018年
佐藤岳詩『メタ倫理学入門』、勁草書房、2017年
その他
SNS
メンタリストDaiGoの動画 (ダイゴさん好きー🥰🥰🥰みたいなコメント見て、この狂気の思考はなんだろうと考えた)
ヒュームの法則のウィキ ↓
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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