夜のそら
たとえば夜のそらを見上げて
静かな闇のなかにたくさんの美しい星のきらめきを感じているとき
たとえば日の昇る前に目覚めて
まだ暗いなかで今日やることを思っているとき
たとえば夏の陽射しのグラウンドで
遠いゴールを目指しているとき
たとえば草の匂いのする夕陽の下で
その日にあった出来事を思い出しているとき
たとえば灯りを消したベッドの中で
ここではない知らない誰かの感情を感じているときも
森に住むものたちは恋をし
鳥は喜びの歌をうたい
花は実を結び
種は空に舞い
川は流れ
波は果てることなく
おもさの境界には風が
あたたかさの境界には雨が
ただ続いている
もし
夜の空には星のない虚無が
夜明け前の部屋には希望のない悲しみが
強い陽射しには逃げ場のない無力さが
草の匂いには自由のない恐怖が
誰かの感情にはやり場のない怒りが
ただ生まれるときは
探すといい
感じるといい
これまで知らなかった
交わることのなかった
たくさんのものたちの
恋や
歌や
営みや
鼓動や
せめぎあいを
そこには
見えないかけらがあって
まるで鍵のように
心の鋳型にそっとはめ込むことができる
かけらはゆっくりと大きくなって
あなたを支えてくれるはず
きっと見つけることができる
かけらはどこにでもあるから
ただ気づいていないだけだから