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【宇宙ビジネス最新動向解説】米国で相次ぐ宇宙スタートアップの倒産・レイオフ・事業転換。上場した宇宙スタートアップに待ち受ける資金調達の試練とは【ワープスペースCSOが語る:SmallSat Symposium 2024 後編】

 ワープスペースCSOの森は早速、2月6日〜8日に、アメリカ合衆国カリフォルニア州のマウンテンビューにあるコンピュータ歴史博物館(Computer History Museum)にて開催される、小型衛星事業者向けのイベントSmallSat Symposium 2024に参加しました。主催は、人工衛星関連の幅広いニュースを扱うメディアであるSatNews社です。
 SmallSat Symposiumは、マネージメントや産業の現場に携わる方々が多く参加します。本稿では現地参加した森へのインタビューを基に、小型衛星市場の最新動向としてチェックすべき「宇宙業界の二極化」について解説します。
(前編はこちら
(昨年度開催のSmallSat Symposium 2023の記事はこちらです。)

SmallSat Symposiumでは、宇宙業界の最新動向について、活発な議論が交わされました。

 現在、世界各国で発展を続ける宇宙関連ビジネスは、昨年から今年にかけて大きな転換期を迎えていると森は語ります。特に今回のSmallSat Symposiumでは、業界関係者や投資家の間で、「宇宙業界の二極化」について多く議論されていたそうです。

 2024年2月6日にはNASAにて530人の解雇が発表された(*1)ことを筆頭に、これまでの「業界全体がまんべんなく資金調達出来ていた」風潮は大きく変化しています。このことについて森は、

確かにアメリカでも二社ほど破産申請をしていたりと、業界は揺れている。しかしそれは業界全体が傾いているという訳ではなく、むしろ「淘汰が始まった」という印象。これまでの宇宙ビジネス業界では、どんなサービスが売れるかどうかが分からないところがあったが、近年になってどのようなサービスをユーザーが求めているとか、需要のあり方が投資家に理解されてきた。

と語ります。この流れにより、資金調達がままならない企業は、事業の転換や従業員のレイオフ、最悪の場合は倒産など、大きな経営判断を下す必要が生じると予想されます。

(*1 【UchuBiz】NASAジェット推進研究所、職員の8%をレイオフ–無人探査機の開発や運用を担当)

 一方で、日本の宇宙業界の二極化は、もう数年先だろうと森は考察します。昨年、日本では4月12日にispace(*2)、4月26日にRidge-i(*3)、12月6日にQPS研究所(*3)が上場し、続々と資金調達の流れが見えてきました。

(*2 【宙畑】国内宇宙ベンチャー初の上場、ispaceの壮大な構想とリスクを見込んだ戦略的ビジネス)
(*3 【宙畑】AIによる衛星分析サービスを提供するRidge-iが上場。土砂崩れ災害検出システムなどを開発)
(*4 【宙畑】QPS研究所が東京証券取引所グロース市場に上場へ。年間10機の製造が可能な工場の新設も予定)

 しかし、まさに上場こそが、淘汰の開始へとつながるルートだと森は説明します。森曰く、

上場すると今度は一般の目に留まるようになり、半導体産業等の他業界との資金獲得競争に挑む事になる。そこでは多くの資本家から、純粋に「儲かる事業なのか?」という観点から評価されるため、これまでの宇宙スタートアップにありがちな、「利益が出てないのに企業価値が上がる」というマジックが使えなくなる。

 日本の宇宙スタートアップ業界では、今年も何社か上場を控えていると言われています。そうした事業者たちにとって上場はある種のゴールである一方、より熾烈な競争のスタートラインでもあります。そうした競争の中でどれだけのスタートアップが生き残り、「選択」されていくのか。今後の業界の動向に注目です。

(執筆:中澤淳一郎)


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