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花に嵐の映画もあるぞ(邦画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦…
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#イタリア映画

イタリア映画「ウンベルト・D」。これは、老人と子犬のポルカ。

深刻な社会問題。階級や年代の軋轢。笑っていられない、現実。 イタリアの巨匠ヴィットリオ・デ・シーカは、今差し迫った危機を描くことで、映画による社会批判を行い続けた作家だった。 「自転車泥棒」は彼の代表作だが、もう一つ重要な作品がある。 「ウンベルト・D」だ。貧しく孤独な老人の絶望を描くやりきれない物語だ。 まずはこの物語の主役、この老人の曲がった背中を見てほしい。 ご覧、 普通に生活しているだけで、周囲に迷惑をかけてしまう哀しさを漂わせている。 ヴィットーリオ・デ・シ

イタリアの実写版「ピノッキオ」_ウソをつくって悪いこと?ベニーニは、問いかける。

「ライフ・イズ・ビューティフル」。 第51回カンヌ国際映画祭(1998年)で審査員グランプリを受賞。第71回米国アカデミー賞(1999年)で作品賞ほか7部門にノミネートされ、そのうち、主演男優賞、作曲賞、外国語映画賞を受賞した、 「ニュー・シネマ・パラダイス」とならび、今なお人気の高いイタリア映画だ。 監督・主演を務めたのがロベルト・ベニーニ。 全世界の羨望を受けて、その次に監督・主演したのが、「ピノキオ」だった。 皆、ずっこけた。 一転、彼は、ゴールデンラズベリー賞主演

一度は行きたい場所、それは「地平線まで続くひまわり畑」。

どうせこの世界の外に出るのなら、いちめん、ひまわり 見てみたい。 イタリア映画「ひまわり」が日本に帰ってくる。 第二次大戦中のイタリア・ナポリ。ジョバンナ(S・ローレン)と、アフリカ戦線へ送られる兵士アントニオ(M・マストロヤンニ)は海岸で恋に落ち、軍による12日間の結婚休暇を目当てに結婚する。更に除隊を目論んだアントニオだったが嘘がばれ、遠くソ連戦線へと送られてしまう。終戦後、夫の帰りを待つジョバンナは、彼の戦友から敗走中の雪原でアントニオが倒れたと聞き、ソ連へと旅立つ

父が子の手を引くのだが…。イタリア映画「自転車泥棒」と日本文学「子を連れて」と。

1948年にAcademy Award for Best International Feature Filmを受賞したのがヴィットリオ・デ・シーカ監督のイタリア映画「自転車泥棒」だった。 この映画は「理不尽」 それも「貧しさからくる理不尽」 あるいは「誰かや自分のせいにするのは簡単だが、しかしそれだけでは割り切れない、社会のひずみから生じる理不尽」というものを抉る。 「万引き家族」も「パラサイト半地下の家族」も すべて、この映画に源流がある、と言っても過言ではない。 有

映画「父 パードレ・パドローネ」ことばをめぐる、力強くて揺さぶられる物語。

この映画は1977年の第30回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞している。 20世紀後半、タヴィアーニ兄弟はひとつのスタイルで国内外を魅了した、それは 「この兄弟監督の作品は、映像も素晴らしいし、難しい原作を土台にしている知的さに加え、深遠な地の底からゆさぶられる物凄さがあるよね。兄弟で力を合わせると、幅も深さも出るのかとうらやましく思うね。」 「黒澤明が選んだ100本の映画」 (文春新書) 168ページより引用 との黒澤明の言葉に象徴されるように、 どこか遠くの