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花に嵐の映画もあるぞ(邦画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦…
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#洋画

主役は車と音楽と60年代テイスト。Good Old Days カーアクション 三本だて。

のんびり車を走らせるタイプのカーアクション。それは、世界中が経済成長でイケイケどんどん、「マイカーが男のロマンだった」60年代にのみ咲いた徒花だ。 派手に車を潰したり吹っ飛ばしたりせずとも、走る絵作りだけでお客が満足していた時代の産物。車も音楽も台詞回しも上品な世界観。 この時代の代表作を3つ、今回は取り上げて見ていきたい。どこか遠くへ行ってみたいときにでも、どうぞ。 車が主役。人間は脇役。 「ミニミニ大作戦」。イギリスの大泥棒たちが、イタリアのトリノに乗り込んで、500

夢の国を食わず嫌いするひと、まるで俺たちを見ているよう。「ウォルト・ディズニーの約束」。

「プロフェッショナル “夢の国”スペシャル 知られざる、魔法の秘密」を見た。 意見は色々あると思うが、 かの「夢の国」の魔法を信じているか、信じていないかでも、 大分、感想が変わってくると思う。(私は、信じる方だ。) 「夢の国」の魔法を分からない人にこそ、ぜひ観てほしい映画が、今回紹介する本作だ。1961年、創業者率いる「夢の国」が、自らの内面を、告白する。 長年にわたり『メリー・ポピンズ』映画化を目指すウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)は、ついに原作者P.L.トラ

「東京でもカワセミが飛ぶんだ…」そんな新鮮な感覚でニューヨークを語る、そしてニューヨークの恋模様を語る映画「マンハッタン 」。

第73回 英国アカデミー賞において、「1917」が最多7冠を獲得した。 本戦では3冠。嬉しい結果だが作品賞を逃したのは、ちょっとだけ残念! さて、英国アカデミー賞が、日本においても耳目を引く重要な賞となったのはここ最近(第62回の「スラムドッグ$ミリオネア」の辺りから?)のことと思う。 それまでは(よっぽどの映画通でない限り)米アカデミー賞と同じものと思われていた気がする。 よしや英国アカデミー賞を取ったとしても、米アカデミー賞を受けていなければ、日本ではマイナーなまま終

キレた男はおそろしい。無敵の人となるダスティン・ホフマンの「わらの犬」。

誰しも、「世間の常識」というものの内、一点はズレを有しているもの。 人は、そのズレというものを、周囲に隠して生きている。 一番人には隠しにくいズレは、怒りのタネだ。本人にとっては至極真っ当な理由で怒っていても、「なんで怒っているのかわからない」恐怖と不安を周囲には植え付けることとなる。 怒るべき時に怒らず、怒る必要のない時に怒る。 自覚しているタイプなら、まだいい。 問題は、自覚していないタイプの人間だ。 1971年製作のアメリカ映画「わらの犬」は、 この手の人間が周囲に

笑えないコメディ。「トロピック・サンダー 地上最低の作戦」

毎週、平日昼にテレビ東京で放送される映画番組「午後のロードショー」。 2019年10月9日、その日の録画を夜見て驚いた:「プラトーン」だったのだ。 確かにこの映画、前半は軍隊の腐敗を描いた社会派ものだが、後半からはベトコンの大部隊の攻勢を生き残るのアクション映画となる。最後にはクソ上官ことバーンズ二等軍曹を成敗するカタルシスがある。実に午後ロー向きなのだ。 ベトナム戦争が終わって四十数年以上経った。 「フルメタル・ジャケット」、「7月4日に生まれて」「地獄のヒーロー」ほか

ギレルモ版「漂流教室」。つまり、幽霊より怖いおじさん、大暴れ。「デビルズ・バックボーン」。

ギレルモ・デル・トロ監督の作風は、人物造形から2タイプに大別できる。 ひとつは「パシフィック・リム」はじめとするスペクタクル・アクション。 威厳ある大人の男たち。彼らは、主人公にとって純粋に頼りになる存在だ。 もうひとつは、我々を理性と狂気の狭間に誘うダークファンタジー。 どんなに見た目頼もしくても、ここに現れる大人の男を信じてはならない。 彼らは、けだものだ。 弱いものを苛め抜くことで自尊心を満たす荒々しさと ひとつのものに執着し、目的のため手段を選ばない女々しさとが共

地獄へ、道連れ。みんな、道連れ。それがフランス映画の古典「恐怖の報酬」。

本作は第6回カンヌ国際映画祭にてグランプリを受賞している。 ※あらすじ・スタッフ・キャストはこちら↓ ベネズエラの油田で火事が発生。消火にニトロを使うことになり、食い詰めた4人の男が金欲しさに志願する。少しの振動でも大爆発だからトラックでの山道運搬は死と隣り合わせ。ゆっくりとやがて怒涛の如くドラマティックになる展開は観客を画面の中に引きずり込む。クルーゾー監督は男の友情を中心に人間そのものを描き、フランス映画の良さを見せてくれる。モンタンを第1級映画スターへと押し上げ、ハ

すべて元通りにしたかった。 できなかった。 沈痛のデ・ニーロ「ディア・ハンター」。

デ・ニーロナイト 第六夜は、マイケル・チミノ監督「ディア・ハンター」。 概要は・・・あまりにも有名すぎるのでここでは詳しく述べない。下記参照。 マイケル・チミノ監督は、「ベトナム戦争映画」という枠を使って この世に戦がある限り、いつ、どの時代にも存在する 心に傷を負い、社会に適応できない戦場帰りの若い男たちの肖像を描いた。 だから、この長編は、今なお普遍性を持っている。 ニック(クリストファー・ウォーケン)が戦争の死霊に魅入られた姿も、 スティーヴン(ジョン・サヴェージ)が

世紀末を流離うデ・ニーロ、それが「RONIN」。

「勝手にデ・ニーロ・ナイト」 第二夜は、ジャン・レノとの夢の共演、監督は「ブラック・サンデー」のジョン・フランケンハイマーが務めた1998年のアクション映画「RONIN」を取り上げたいと思う。 本作でデ・ニーロは、当時「レオン」で勢いに乗っていたジャン・レノに一歩も退かない 冷静な「ロウニン」に徹する。 <キャスト&スタッフ> サム…ロバート・デ・ニーロ(佐々木勝彦) ビンセント…ジャン・レノ(金尾哲夫) ディアドラ…ナターシャ・マケルホーン(唐沢 潤) 監督:ジョン・フラ