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花に嵐の映画もあるぞ(邦画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦…
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#菅原文太

寺山修司×菅原文太×清水健太郎「ボクサー」。

寺山修司が自分自身の世界観を東映カラーに染め上げた「唯一の商業映画」菅原文太・清水健太郎主演、1977年10月公開映画「ボクサー」より。 この1年後、谷村新司率・矢沢透らフォーク・グループのアリスは、ミドル級チャンピオン:カシアス内藤をモデルに「チャンピオン」をリリース、大ヒットを記録している。「ボクサー」が作られた時代は、本曲と同じように、勝者よりも敗者を謳うことが遥かに意味を持っていた時代を象徴している。 それは冒頭のクレジットロール中、後楽園ホールのリングに続く廊下を延

菅原文太主演「木枯し紋次郎」。_どこかで誰かが待ってくれることもない、荒野。

菅原文太というと「仁義なき戦い」「トラック野郎」主演ばかりが先行。 それだけで語るのは、もったいない! 「仁義なき戦い」前夜、この役者、顔を売るためなら、どんな役でもやった。 あるときは、60年代東映任侠映画のスターたる鶴田浩二や高倉健や藤純子らを、敵の刃から守って死ぬ引き立て役、もとい助演として。またあるときは、数打ちゃ当たるな二本立ての添え物映画の主役として。 東映両撮影所が柳の下のドジョウをつかんでばかり、同工異曲の量産を続けるなか、彼は「新しい、何かをつかもう、スター

映画「男の顔は履歴書」_戦後闇市、ブラック・ジャックが血で濡れる。

顔に傷跡を残したアウトローの医師・・・といえば、ブラック・ジャックだが この男、林立する高層ビルの谷間にぽつんと隠れるように建つ雨宮医院の院長・雨宮修一にも、左頬に深く刻まれた傷跡がある。 見えないようでよく見える、ホンモノの彼の傷跡をクローズアップに切り取るカメラから映画は始まる。周囲の工事の音に耳を塞ぐようにして、じっと目を瞑っている男。なにも、語らない男。 沈黙が雄弁な瞬間。 玄関で音がする、階下に降りると、男が車にはねられボロ屑のように運ばれて来る。日本名は、柴田。

「仁義なき戦い」だけじゃない! 菅原文太の見事な死にっぷり、魅せる実録路線3本だて。

平穏を装った時代にこそ、物騒な作品が観たくなる。  言い方は悪いが、むごたらしい死に様、というもの。  グロテスクでバイオレンス。 どす黒い世界を、覗き込みたくなる。 (SNSで暴言撒き散らすよりはなんぼか健全だと、思いたい。) 例えば70年代東映実録路線のスター、菅原文太の死にざまは、いかがだろうか。 今回は、菅原文太の素晴らしい死にざまを3つ集めて、紹介する。 作品ごとにカラーが違う、それを見事に演じ分ける。 菅原文太が改めて稀有な役者であったことを、思い知らされる。

野球ってなあに?答えは「ダイナマイトどんどん」。

戦前まで、日本では、野球は「学生の趣味」であるとの考えが一般的だった。 日本での野球熱が大人の間でも高まったのは、戦後のGHQの政策のおかげ。全国に野球文化の新しい波が押し寄せた。 本作は、よりにもよって野球の「や」の字も知らない 「や」の字のつく人種た ちが、訳もわからぬまま野球に挑んだ、そんな微笑ましい時代を描いたコメディだ。監督・岡本喜八×主演・菅原文太 の異色の顔合わせ。 昭和25年、九州小倉では昔かたぎの岡源組と新興ヤクザの橋伝組が縄張りをめぐってしのぎをけずっ