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花に嵐の映画もあるぞ(邦画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦…
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2019年12月の記事一覧

映画「父 パードレ・パドローネ」ことばをめぐる、力強くて揺さぶられる物語。

この映画は1977年の第30回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞している。 20世紀後半、タヴィアーニ兄弟はひとつのスタイルで国内外を魅了した、それは 「この兄弟監督の作品は、映像も素晴らしいし、難しい原作を土台にしている知的さに加え、深遠な地の底からゆさぶられる物凄さがあるよね。兄弟で力を合わせると、幅も深さも出るのかとうらやましく思うね。」 「黒澤明が選んだ100本の映画」 (文春新書) 168ページより引用 との黒澤明の言葉に象徴されるように、 どこか遠くの

思い出は何時までも美しく。スコセッシとは違う味付けをしたギャングのデ・ニーロ、それが「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」。

いまさらながら、あらかじめ断りを入れておけば タクシードライバー 。レイジング・ブル。キング・オブ・コメディ。 スコセッシ=デ・ニーロのコンビは、別格だと思ってる。 沢山の人が、様々な言葉で、ここまで語ってくれたと、思っている。 今回、他の人とは違う切り口で スコセッシ=デ・ニーロのコンビ作品を語ってみようと思った が、到底わたしにはできないことだった。 ならば「他の人がほとんど語っていない傑作」を 「他の人とは違う切り口で語る」ことはできないものか。 考えに考えて決め

時代劇「赤穂城断絶」_ 大石内蔵助、死も厭わぬ不退転の覚悟。

日本映画全盛期といえば、年末正月興行の忠臣蔵と夏の怪談映画。 それが年中行事という時代もあった。今は全くそうではないが。 そういう伝統がまだかすかに息づいていた時代だからこそ作ることのできた、 ちょっと古い「忠臣蔵」映画をご紹介。 1978年製作・公開、深作欣二監督の「赤穂城断絶」。 ※あらすじ・スタッフ・キャストはこちら! ポイントはひとつ。萬屋錦之介主演する大石内蔵助だけに注目すること。 萬屋錦之介は、毎年のように忠臣蔵映画が製作・公開されていたの最後の残香を吸って

ありふれた街の悲劇。それが「ポンペイ(2014)」

あらすじはこちら↓ ローマ人に一族を虐殺されたケルト人騎馬族の生き残り、マイロ(キット・ハリントン)は、奴隷となり無敵のグラディエーター(剣闘士)へと成長していた。ある日、マイロはポンペイの有力者の娘、カッシア(エミリー・ブラウニング)の馬を助け、その瞬間二人は身分の差を超えて激しい恋に落ちる。 カッシアはローマからやってきた上院議員コルヴス(キーファー・サザーランド)にポンペイの平和と引き換えに婚姻を迫られていたが、その男はマイロの家族を彼の目の前で殺した男だった。 8月

元マフィア・自分探しの旅真只中のデ・ニーロ。それが「マラヴィータ」。

デ・ニーロ・ナイト、第九夜はカラーを変えてコメディ寄りの作品、 リュック・ベッソン監督との夢のコラボレーション「マラヴィータ」を紹介。 デ・ニーロが元マフィアで自分探し真っ最中のアブないオヤジを演じる。 ※あらすじはこちら! フレッド・ブレイクは泣く子も黙る元マフィアで、家族ともどもFBIの証人保護プログラムを適用され、偽名を名乗って世界各地の隠れ家を転々としてきた。そんなワケあり一家はノルマンディーのコミュニティーに溶け込もうとするが、かんしゃく持ちのフレッドは事あるご

海賊の首領にして華やかに女装するデ・ニーロ! それが「スターダスト」。

勝手にデ・ニーロ・ナイト、第八夜は、2007年のファンタジー映画「スターダスト」をお届けする。 あらすじはこちら↓ イングランドの外れにあるウォール村。18歳の青年トリスタンは愛するヴィクトリアの心をつかむため、魔法の国“ストームホールド”に落ちた流れ星をプレゼントしようとする。だが墜落現場で彼が見つけたのは、美しい女性の姿をした“流れ星”だった。そのころ、永遠の若さを手に入れようと“流れ星”の心臓を狙う魔女の三姉妹、“流れ星”が持つ王位継承の証であるルビーを狙う王子たち

映画「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」…ディーバ、歌ある限り。

ここに2分間のクリップがある。 フランスで最も愛される歌手であり、国民的象徴でもある シャンソンの女王、エディット・ピアフ。 感傷的で、弱々しく、しかしそれ以上に力強いうたごえ。 二度の世界大戦を生き抜いた彼女の顔には、深い皺が刻まれている。 さまざまな辛苦を経て、歳を経て、おばあちゃんになっても、 彼女はステージに立ち続けた。 強いひと。 その偉大な生涯の物語を描くのが、本作だ。 米仏で現在も絶賛活躍中のマリオン・コティヤールが、 堂々たる佇まいでピアフを演じる。全身

ハメをはずすデ・ニーロ、それが「ダーティ・グランパ」に「ラスト・ベガス」。

デ・ニーロ・ナイト 第七夜はコメディ寄りの二作品を。 それも、「キング・オブ・コメディ」のような笑うに笑えない ではなく、健康的で騒がしい笑い のベクトルで。 紹介するは、2016年の「ダーティ・グランパ」と2013年の「ラスト・ベガス」。 どちらも、バカンスを満喫する愉快な親爺を、自然体で(心から楽しそうに!)演じている。楽しみにふける影には、老いの寂しさがあるのだが。 下品の花、だけど最後はしんみり、ダーティ・グランパ。ロッテントマトでボロクソの本作。 中でも辛辣な

すべて元通りにしたかった。 できなかった。 沈痛のデ・ニーロ「ディア・ハンター」。

デ・ニーロナイト 第六夜は、マイケル・チミノ監督「ディア・ハンター」。 概要は・・・あまりにも有名すぎるのでここでは詳しく述べない。下記参照。 マイケル・チミノ監督は、「ベトナム戦争映画」という枠を使って この世に戦がある限り、いつ、どの時代にも存在する 心に傷を負い、社会に適応できない戦場帰りの若い男たちの肖像を描いた。 だから、この長編は、今なお普遍性を持っている。 ニック(クリストファー・ウォーケン)が戦争の死霊に魅入られた姿も、 スティーヴン(ジョン・サヴェージ)が

「働くことに、年齢はない。」 そう本気で信じさせてくれるデ・ニーロの「マイ・インターン」。

デ・ニーロ・ナイト第三夜は、2015年のヒット作「マイ・インターン」を。 デ・ニーロが「今のニッポンの職場にもこんな年長者が欲しい!」と感じさせてくれる、立派でカッコいいお爺ちゃんを演じる。 あらすじはこちら。 舞台はニューヨーク。華やかなファッション業界に身を置き、プライベートも充実しているジュールス。そんな彼女の部下に会社の福祉事業として、シニア・インターンのベンが雇われる。最初は40歳も年上のベンに何かとイラつくジュールスだが、やがて彼の心のこもった仕事ぶりと的確な

世紀末を流離うデ・ニーロ、それが「RONIN」。

「勝手にデ・ニーロ・ナイト」 第二夜は、ジャン・レノとの夢の共演、監督は「ブラック・サンデー」のジョン・フランケンハイマーが務めた1998年のアクション映画「RONIN」を取り上げたいと思う。 本作でデ・ニーロは、当時「レオン」で勢いに乗っていたジャン・レノに一歩も退かない 冷静な「ロウニン」に徹する。 <キャスト&スタッフ> サム…ロバート・デ・ニーロ(佐々木勝彦) ビンセント…ジャン・レノ(金尾哲夫) ディアドラ…ナターシャ・マケルホーン(唐沢 潤) 監督:ジョン・フラ

三浦友和、ふんばる。それが「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」。

一畑電鉄が舞台の一作目「49歳で電車の運転士になった男の物語」、 富山地方鉄道が舞台の二作目「愛を伝えられない大人たちへ」、 そして、肥薩おれんじ鉄道が舞台の三作目「わたしたちの出発」。 松竹が手がけるRAILWAYSシリーズは、日本の地方鉄道を題材に、地味でも優しい日本映画の伝統:昔ながらの人間ドラマを描いたものだ。 今回は、その二作目を取り上げたい。 ※あらすじ・スタッフ・キャストは以下を参照! 舞台となる富山地方鉄道とは!富山県東部運行エリアとする富山地方鉄道、略

絶叫する。 自分だけでも眠らないように。SF映画「ソイレント・グリーン」。

2022年、化学物質によって士壌や水、大気に至っては空が黄緑にかすむほど汚染され、温暖化も悪化し「人間以外の動植物が殆ど生育できない」世界が達成。 人類は衰退しました。 1973年のアメリカ映画。だからこれは1973年から見た近未来。 なのに、ちっとも古臭くなく、ぞわりとさせられてしまうのは、 誰もがそれと気づかないまま粛々と近づく破滅的な未来 の描写だろう。 そして胸を打つのは、 主人公が「こんな未来はいやだ!」と物申し絶叫する姿だろう。 近未来、誰もが眠りに就いてい

白石和彌の「止められるか、俺たちを」_これは70年代のクロニクル、そしてレクイエム。

ここには映画と青春があった でも私はなにをみつけたんだろう 公開当時の惹句より引用 吉積めぐみ、21歳。1969年春、新宿のフーテン仲間のオバケに誘われて、“若松プロダクション”の扉をたたいた。 それが全てのはじまりで、全ての終わりでもあった。 ※キャスト、スタッフ、あらすじは下記参照! おっかない人、を愛おしく描く。白髪の混じったモシャモシャのヘアスタイル、サングラス、帽子、ジャケット、ショルダーバッグを提げた人。 平成生まれの私にとって、若松孝二監督は「キャタピラ