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三浦友和、ふんばる。それが「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」。

一畑電鉄が舞台の一作目「49歳で電車の運転士になった男の物語」、
富山地方鉄道が舞台の二作目「愛を伝えられない大人たちへ」、
そして、肥薩おれんじ鉄道が舞台の三作目「わたしたちの出発」。
松竹が手がけるRAILWAYSシリーズは、日本の地方鉄道を題材に、地味でも優しい日本映画の伝統:昔ながらの人間ドラマを描いたものだ。

今回は、その二作目を取り上げたい。

※あらすじ・スタッフ・キャストは以下を参照!

舞台となる富山地方鉄道とは!

富山県東部運行エリアとする富山地方鉄道、略して「地鉄」。
(なぜ「富鉄」じゃないのは、地方民のみ知る。)
たかが中小私鉄とあなどるなかれ。

路線キロは(市内軌道含めれば)100kmを超え、有料特急や快速急行を運行し、95km/hとそこそこ高速運転を行うなど大手私鉄にも負けない努力を見せ、
一方、ワンマン運行や築ウン十年の無人木造駅舎が多く、軌道はガタガタ、
14760系電車という40年選手がいまだ現役、
東急8590系、京阪3000系ら、魔改造された大手私鉄の車両が控えにいる
など
市内軌道への投資に賭けるために、それ以外のところで質素倹約を徹底する、
名前の通り「地方」を代表する、いま生き残りに必死の中小私鉄。

主人公が勤務する路線は、富山市の中心:電鉄富山駅と黒部市の山奥:宇奈月温泉駅とを結ぶ路線総延長53.3kmの本線。
隣接するあいの風鉄道(旧・北陸本線)と比べて貧弱な単線だが
例えば途中の滑川駅前後では、青空に白い稜線が浮かび、田園に緑が萌え、遠くには富山湾が見え隠れするなど、コントラストが際立ち、
間違いなく美しい沿線風景を拝むことができる。
※沿線風景(ロケ地)の詳細については、下記を参照のこと!

本作、カメラに切り取られた風景の美しさ&調和とは対照的に、話はシビアだ。
予告編を見ればお分かりになると思うが、滝島一家のなかに、波風立ちまくる。
オール電化で家は明るくても、家庭は暗い。

三浦友和に、支えられる、励まされる。


解散手前でぎりぎりのところで踏ん張る「家族の危機」という
一歩間違えれば「前時代的」なドラマに、リアリティを与えているのは
一家の大黒柱を演じる三浦友和の存在感に尽きるだろう。

上背があり、厚い逞しい胸、幅の広い肩、均整のとれた立派な体格。
短めに整えた髪。きりりとした、やや上がり気味の眉。
一重まぶた の涼し気な目。形の良い高い鼻。
一文字に結ばれる口と角ばった顎。
昔ながらの男っぽさがある。 だから、多少丈の高い鉄道員の制服も、似合う。

家族の影を持っていても、うちに篭りすぎることがない。
疲労の色を多少滲ませていても、病むことはない。
そういう、健康的な自然な、悩み方をしている。
なにより、(本人の家庭生活同様)真面目で誠実。
今となっては古いタイプの日本人を、見事に演じている。
(最終的に、彼の実直さ、妻子の理解もあって、家族問題はひと段落、物語は大団円へと向かう。)

映画が作られたタイミングも良かった。
昭和27年1月生まれ、本作製作当時(2011年)で59歳。
10年早ければ若すぎる、10年遅ければ老けすぎる、
「リタイア直前の鉄道員」という演じる役と、役者の年齢がマッチした(稀有な)例だ。

三浦友和は、綺麗に歳をとった男。
男であれば誰でも憧れる面影を持っているからこそ、
たとえ「一家を支える」ともすれば時代錯誤になりかねない男のドラマと言えど、リアリティを持って心に響くのだ。

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ドント・ウォーリー
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