星が降る海に。
夢を見た。誰もいない無人の駅だった。終電を迎えたことは知っているはずなのに、私はいつまでも駅のホームで誰かを待ち続けた。いつかあの人と来た海がそこにはあった。
真夜中の海は昏く怖いはずなのに、瞬く星のおがけで、青く光って見えた。
あの人と来た時は、燦々と太陽が降り注ぐ、真昼の海だった。今はただ、静かに星が降り注ぐ。
私は夢の中にいると理解していて、
だけどちゃんと夜の世界を創造できる自身の空想力に驚いた。
ちりん。
鈴の音が聴こえた気がした。
横を見ると、一匹の猫がとなりに坐っていた。
首輪はしていなかった。
じゃあ一体どこから鈴の音が。
ちりん。
また鈴の音がする。音の行方を探していると、猫が天に向かって前足を伸ばし始めた。
まるで、神様に会いたがっているみたいに。
私も天を仰いでみる。
「あ」
なぁんだ。風鈴があったのね。
「きみも誰か探しているの?」
猫はみゃあと答えた。
「そう。私と一緒だね」
朝焼けが近づいて来ている。
だけど、このまま目が醒めなければ良いのにと思った。
あの人に会えないことは寂しいけれど、ずっとこのままなら、夢の中でもあの人のことを思い続けることが出来るから。