自身と相手 双方を大切にしながら自己表現する #68 アサーション
組織は社会における機関であり、社会やコミュニティー、個人のニーズを満たすために存在します。
企業の場合は、それらのニーズを満足させ、顧客を創造することが目的となります。
そのため組織を構成する部署あるいは個人が、それぞれの機能を持ち、目的を達成するために共依存関係で繋がることが大切です。
その意味でも、組織には、コミュニケーションが絶対に必要となるのです。
コミュニケーションですが、社会学的には、社会組織の中で、それを形成する人間の間で行われる知覚、感情、思考の伝達と言えます。
また、心理学的には、自分自身との対話もコミュニケーションとも言えるようです。
つまり、優れたコミュニケーションとは、人間から人間に知覚、感情、思考などの情報が正確に伝わることと解釈されます。
組織では、優れた主張が必ず認められるとは限りません。
組織の中で自分の主張を認めてもらうには、良好なコミュニケーションが必要であり、それには、信頼関係(ラポール)を築くことが前提だからです。
その意味でも、日頃から組織内での公務による立ち振る舞いや言動が、その信頼関係を左右することとなります。
自身と相手、双方を大切にしながら自己表現を行う、対人コミュニケーションスキルにアサーション(assertion)があります。
直訳すると、断言、断定、主張などとなります。
しかし、決して、自身の意見だけを押し付けることではありません。
自身と相手、それぞれがお互いを尊重し合って、適切な自己主張することを意味します。
アサーションですが、大きく3つのタイプに分けられるとされています。
■ ノン・アサーティブタイプ(消極型/非主張型)
相手の意見を優先し、自身の意見を後回しにするタイプです。
結果的に自分の意見を表現することを躊躇ってしまったり、諦めてしまったりします。
自己肯定感が低く、相手の気持ちや態度に左右されてしまうために自己主張できません。
かといって、自身のことが分かってもらえないという気持ちが残ったり、それを言い訳をしてしまうこともあります。
これでは自身にストレスを貯めてしまいます。
■ アグレッシブタイプ(攻撃型/主張型)
相手の意見よりも、自身の意見を優先するタイプです。
結果的に攻撃的であったり、利己的に自身の意見を相手に押し付けたりします。
自己肯定感が強く、相手の意見に耳を貸すことなく、相手を操作しようとします。
これでは、相手にストレスを貯めさせてしまいます。
■ アサーティブタイプ(バランス型)
ノン・アサーティブタイプとアグレッシブタイプのバランス型ともいわれ、自身の意見を正直に表現すると共に、相手の意見も大切にするタイプです。
結果的に自身の意見と、相手の意見が異なる場合には、互いの意見がぶつかり合うこともあります。
しかしながら、お互いに意見を出し合い、最終的に双方の納得のいく結論を出そうとするファシリテータータイプです。
これは、インサイド・アウトとアウトサイド・インの関係にも似ていると思います。
インサイド・アウトとは、人間の成長には欠かせないとされる「相手や組織、環境を変えるのであれば、まず、自分自身を変える」というパラダイム(モノの見方)です。
対して、アウトサイド・インは、人間の成長を妨げるとされ、「自分は正しい・相手や組織、環境などが悪い」というのパラダイムです。
アサーションでは、如何にして自身と相手のバランスが取れたアサーティブタイプに導くかが重要となります。
そのためにも、まずは、自身のタイプを自己診断して把握することも大切です。
次の質問に対して、YesかNoで回答してみてください。
A項目
① 自分自身に、あまり自信がない。
② 相手と意見が違っても、発言するのが苦手。
③ 意見を求められたり、指摘をされると黙ってしまうことがある。
④自分より立場の上の人に対して委縮しがちである。
⑤ 自分から率先して動くより、誰かに合わせて行動するところがある。
⑥ つい自分の考えより相手の考えを優先しがちである。
⑦ 相手に反論されると言い返せなくなる。
B項目
① 人前で弱みを知られたくないと思う。
② 他人の間違いを指摘することがよくある。
③ 自分の思い通りにならないと感情的になることがある。
④ 他人に助けてもらうことは、あまり好きではない。
⑤ 実力以上に強がって見せることがある。
⑥ 安心して人に任せることが難しいと感じる
⑦ 正しいと思ったら、自分の主張を通す。
結果、A項目でYesが多かった方はノン・アサーティブタイプの傾向、B項目でYesが多かった人はアグレッシブタイプの傾向が高いと思われます。
また、A項目とB項目の双方でYesの少ない方は、アサーティブタイプの傾向が高いと思われます。
これらは、自己診断だけではなく、自分が接する方々のタイプを想定診断することにも有効と考えられます。
しかしながら、診断に対して、必要以上に拒絶したり、必要以上に深刻に受け止めてしまう方がいます。
いえることは、まずは、斜に構えることなく、素直に、かつ卑屈になることなく受け入れてみることが大切になってきます。
その上で優先すべきは、まずは、自分自身の改善です。
自分自身が、どのアサーションのタイプはであるかを自覚して、それが、ノン・アサーティブタイプかアグレッシブタイプなのであれば、アサーティブタイプへの改善に取り組む必要があります。
例えば、診断結果などを参考にして、ポジション・チェンジなどのコミュニケーション手法を用いて、相手の立場に立ってみることは効果的であると思います。
ポジション・チェンジとは、自分のポジション、相手のポジション、第三者のポジションを意識して、そのポジションを変える事によって、物事の見え方や感じ方の変化を体感することです。
それによって、自分の主張を相手のポジションで受け止めて、相手の立場でどのように感じるのかを考えてみます。
また、自分や相手ではなく、全く対峙関係のない第三者のポジションに立ってみて、互いの主張をどのように感じるのかを考えてみるのです。
一般的な人間の思考として、コミュニケーションがうまく行かない場合、問題は自分にあるのではなく、相手にあると考えがちです。
しかし、それを相手ではなく、自分にあると捉える。
そんなパラダイム・チャンジをすることで、コミュニケーションが良好になることも少なくありません。
後から振り返ってみて、お互いに誤解し合っていたと笑い話になるかもしれません。
その結果、想像していたこととは全く違う視点に気付く事が出来ることもあります。
次に組織内にノン・アサーティブタイプかアグレッシブタイプの方がいるのであれば、改善を促す必要があります。
しかし、自分自身がノン・アサーティブタイプかアグレッシブタイプであるにも関わらず、それを受け入れようとしない人も存在します。
さらに、もし、自身より立場が上の人であった場合、なかなか改善を促すのは困難です。
それ故に、このアサーションの改善に関しては、決して個人だけに依存するのではなく、組織全体の取り組みとして意識を変える機会や動機づけする機会を続けて行ってゆく必要があると考えます。
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