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Magic of Ghost

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2020年9月の記事一覧

【2話の4】連載中『Magic of Ghost』

【2話の4】連載中『Magic of Ghost』

※この記事は【2話の3】の続きです。

 先ほどまで息を殺して潜んでいた反動か、恥ずかしさを紛らわすためか、普段より声を荒げていた。
「まぁ落ち着きなさい桐谷君。どうぞ」
 そう言うと、俺の前に10センチメートルほどのグラスに入った太陽のようなオレンジジュースが置かれた。そのグラスは暑がっているのか、先ほどまでの俺のように汗をかいている。
「……ありがとうございます。いただきます」
 俺の喉は、砂

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【2話の3】連載中『Magic of Ghost』

【2話の3】連載中『Magic of Ghost』

※この記事は【2話の2】の続きです。

「……っ! (お、俺か!? なんだよいきなりあいつ! 教員どころか校長に直接言いに行くって相当やばいだろ。なにもしてないぞ俺は!)」
「あぁ、どうですか彼は? クレアさんの元で働けそうですか?」
 校長の口から飛び出した言葉は、理解し難いものだった。
「わざわざロサンゼルスからこんな日本の小さな学校にいらしてくださって感謝しています。依頼を出して一ヶ月間……

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【2話の2】連載中『Magic of Ghost』

【2話の2】連載中『Magic of Ghost』

※この記事は【2話の1】の続きです。

 またもクレアの存在を忘れていた。俺が階段を降りきるよりも早く、クレアが少し後ろで立ち止まり声をかけてきた。
「ん?」
 俺はなにも考えずにクレアの方を振り返った。なにかを言いたそうな顔をしていたが、何故か俺にはクレアの心が読めなかった。
 1秒か2秒といったところだろうか。沈黙があたりを包んでいた。
「やっぱいいや……なんでもなぁい」
 そう言うと俺の横を

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【2話の1】連載中『Magic of Ghost』

【2話の1】連載中『Magic of Ghost』

※この記事は【1話の5】の続きです。

第2話 ~疑い~

 俺たちは昼までの授業をすべて終え、昼休みを迎えた。

「おい優鬼ぃ! 昼飯一緒に食おうぜーっ!」
 遠くから机と椅子の隙間を縫って大助が俺に近づいてきた。
「おう!」
 俺は大助に軽く返事をした。
 混み合う購買でいつものように『焼きそばパンとコーヒー牛乳』を買う。その日の気分でいちご牛乳になることもあった。
 晴れていれば屋上のフェン

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【1話の5】連載中『Magic of ghost』

【1話の5】連載中『Magic of ghost』

※この記事は【1話の4】の続きです。

「(……よくわったな)」
 かすれきった聞き心地の悪い声は、まるで気づかれるのを待っていたかのように直接俺の脳へと話しかけてきた。
「そんな悪霊の臭いプンプンさせてたら気づかない方がおかしいし、生憎心の声が後ろからずっと聞こえてたんでね」
 すると扉の影から殺気にも似た邪悪な念が流れ出てきた。
「(よくもあの女を成仏させやがったな。……何者だてめぇ)」
 ド

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【1話の4】連載中『Magic of Ghost』

【1話の4】連載中『Magic of Ghost』

※この記事は【1話の3】の続きです。

「俺にはわかる。君を通じて、その時から今までの両親の感情すべてがな……。君が生前にしてきた行いが正しければ、その『自殺』という罪を帳消しにして、成仏への道が開かれるかもしれない。だけど、それは俺が決めることじゃない。それだけ成仏するってことは大変なことなんだよ。……成仏したいか?」
 俺の問いに力強く頷いて見せた彼女には、先ほどまでの不安な表情はなくなってい

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【1話の3】連載中『Magic of Ghost』

【1話の3】連載中『Magic of Ghost』

※この記事は【1話の2】の続きです。

 まだホームルームの終わらない教室が並ぶ廊下を、地響きのような足音とともに通り過ぎる。俺は見間違いだと願いながら、屋上へ続く階段を三段飛ばしで駆け上った。

 外と校内を隔てる鉄の扉に全体重をかけ開け放った。屋上を吹き抜けた春の風が、俺の乱れた髪の毛を逆撫でし、上がった体温を一瞬だけ冷やしてくれた。
 風は瞬く間に通り過ぎた。それと同時に、止まることを知らな

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【1話の2】連載中『Magic of Ghost』

【1話の2】連載中『Magic of Ghost』

※この記事は【1話の1】の続きです。

 明らかになにかを取り違えていた。どうやったらこの状況でそんな解釈ができるのか、俺には謎でしかなかった。俺は大きなため息をついて、肩にかけたままの飾りのスクールバッグを机に下ろした。
 その時、どこからともなく香る甘い香り。1ヶ月前は鼻をついて仕方がなかったが、今ではすっかりお馴染みの香水の香りだ。
「朝から騒がしいねぇ。まったく……」
 目鼻立ちははっきり

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【1話の1】新連載『Magic of Ghost』

【1話の1】新連載『Magic of Ghost』

第1話 ~救世主~ 

 マジシャン=憧れ。俺にはいつか大きな舞台で『観客を楽しませる』という夢があった。一見普通の男子高校生だが、幽霊が見えて、人の心の中がわかってしまうという特殊な能力を持っている。
 俺がその能力に気がついたのは中学校に入ってからのことだ。以降、その能力のことは伏せて今まで生きていた。マジシャンになりたいという夢、それを妨害せんとする俺の人生、俺は迷っていた。

「よっしゃあ

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