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人間だけに与えられた物語を編む力

小学校の読書感想文が嫌で仕方なかった。
読みたい本でもないから、書きたい事なんてないし、
なんて書いたら正解なのかな?このシーンで感動したとか?と、それを読む先生の腹を探るように書いてた。

そんな私が、前回に次いで、また読書感想文を書きたくなるとは。。

それも毎日noteを続けている効果じゃないかなと思う。



「羊と鋼の森」と同じく、
羊に惹かれたという不純というか、子どもみたいな、単純な動機で手にとった絵本

「羊の宇宙」夢枕獏 /作、たむらけんじ /絵

たむらけんじさんのイラストもよくて、
どちらのも、それぞれ宇宙の幅をグイと広げてくれたような気分を味わえて、ひとり興奮してる。


◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

「羊の宇宙」は、第一線を引退した老物理学者と、天山山脈に暮らすカザフ族の羊飼いの少年が、
宇宙について語りあうひとときを描いている。


羊飼いの少年が独特な感性で世界を捉えていて、
話を聞いている老物理学者と一緒になって、
読んでる私もその世界観に引き込まれ、読み終える頃には、
老物理学者は久しぶりに触れた、少年の世界を捉える新鮮な感覚に興奮し、
私も興奮して、今noteを開いている。

そんな自分の為の記録として書き記しておきたい。


◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

羊飼いの少年は、馬で移動している。

老物理学者は、馬より車のが速く、
街まで羊の毛を売りに行くのも速くなり、
その分時間が持てるのに、なんで車で移動しないの?と問う

一日に二度、街まで出るとして、半日時間が余るんじゃないのかい?
違うよ。その人は、一日に四度、羊の毛を車に積んで、街まで出かけてしまうことになるのさ。
余った時間に、働いてしまうんだよ。
速くなるということは、時間が余ることじゃなくて、もっと忙しくなるということなんだよ。


ほぉ~なるほど。。

なんでも時短時短で余裕を持とうとしてたけど、
確かにどこまでいっても忙しくなってるよね。。

老物理学者も私も、のっけから少年の視点にうなさられる。
そこから、この宇宙をどう捉えているかという話になっていく。


石ころ、羊、太陽、草原

誰かの知識ではなく、
少年の目の前に広がる、この広大な山の遊牧風景の中から紡がれる宇宙

独特で素朴で深い世界観が広がっていく。

最後に物質と時間の捉え方の話になった。

石の中にある時間の量も、
太陽の中にある時間の量も同じなんだ。


眼に見えないほど小さな物質の中にある時間の量も、
もっと大きなこの地面のような物質の中にある時間の量も同じなんだよ


時間のことなんだけどね。一秒とか、一時間とか、いろんな時間があるよね。


いろんな時間があるけれども、
一秒の中にも、この宇宙は全部入っているよね。一時間の中にも、この宇宙は全部入っているよね。


なんだ、この感覚!?
最後の少年の言葉で自分の感覚が、ドンと天山山脈の谷に突き落とされ、新しい山の風が吹き込んできた。


少年が見ているであろう広大な遊牧民の風景と、
宇宙が溶け合って、今までにない感覚が私の目の前に広がって、その余韻がまだ続いている。


本を読んでこんな感覚になるなんて。。。

「羊の宇宙」と「羊と鋼の森」

人間だけに与えられた物語を編む力
改めて尊く感じた2冊でした。

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