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Photo by
09chiharu
淡水人魚
川に住む人魚は
顔立ちは綺麗だが泳ぎが汚い
濁流に抗い
もがき苦しんでいる
息継ぐ顔はしかめっ面で
命乞いをしている様にも見える
もしも彼女が海に住んでいたならば
潮の流れに停泊で
流線法則に沿り緩やかに泳ぐのだろう
珊瑚礁からの贈り物を携え
名画のモデルになるのだろう
川に住む人魚は
海の存在を知らないから
世波に抵抗しては自分を強固に鼓舞する
海に住む人魚は多分
川の存在を知らないから
この世は楽園だと口ずさむ
私には人魚の言葉はわからない
わからないのなら
そこはただの散歩道
今日も川波の血の気が多く
陽を反射しては人魚を光の屈折のなかに閉じ込めた
平和な河川敷の阿呆の散歩
私だけなら
覗かないなら
川に飛び込む意を持ちいれば
そこから初めて人間として成り立つのだと
右往左往の心情が
泳いだまなこに訴えかける
つまり私はまだ人間でもない
何者でもなく
鳴り物でもない
埋もれて黙る石っころだ