eの不思議 - ネイピア数 -
ネイピア数$${e}$$。
こう言われて、皆さんはどんなイメージが湧くでしょうか?
高校生なら「自然対数の底」という知識はあると思います。
$$
\log{e}=1
$$
微分しても変わらない、楽な関数!みたいなイメージもあるかもしれません。
$$
\frac{d}{dx}e^x = e^x
$$
数学好きな人なら、オイラーの公式
$$
e^{i\pi}+1=0
$$
を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。
色々なところに顔を出す$${e}$$ですが、そもそもなんの数なの?と言うと、説明が難しいのではないでしょうか。
実はこれ、もともとは「金利」の話から出現したのです。
金利とe
銀行からお金を借りたときには金利(利息、利子)が付きますよね。
例えば1年で10%の金利だとすると、100万円貸したら1年後には
$$
100 \times (1+\frac{10}{100}) = 110
$$
となります。
ちなみに、元のお金100万円を元金といい、利息を足した分を元利と言います。1年で元利110万円になったということです。
ここで、1年毎に利息を付けるよりも、半年ごとに半分ずつにしたらどうなるでしょうか?
$$
\def\arraystretch{3}
\begin{align}
100 \times (1+\frac{5}{100}) &= 105 \nonumber \\
105 \times (1+\frac{5}{100}) &= 110.25 \nonumber \\
\end{align}
$$
となり、元利はそれぞれ、
半年後に105万円、1年後に110.25万円
になりました。
1年毎に10%の金利にするよりも、半年ごとに5%の金利にする方が、貸す側としたら儲かるわけです。
ということは、もっともっと細かい期間で利息を付ければいいのではないか?
と考えてみたくなりますよね。
それこそ、無限に区切って、毎瞬間利息が足されていくようなことができたら…
現実には無理でも、数学的にどうなるか考えることはできるはず。
細かい計算は省きますが、結果は以下のようになります。
※1円貸して年利100%の場合を無限に区切った時の元利の場合。
$$
\sum\limits_{n=1}^\infty (1+\frac{1}{n})^n=\frac{1}{0!}+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\cdots
$$
これ、高校生レベルの知識(二項定理など)があれば頑張って計算できます。
無限に区切って足していくので、なんとなくこんな感じになるのかあと思ってもらえればいいです。
無限に足してるんだし、無限に発散するんだろうなあ…と思うかもしれません。
でもこの極限、実は発散しません。収束します。
その値こそが、$${e=2.718281828\cdots}$$なのです!
年利100%をどんなに細かく区切ったとしても、1年でせいぜい2.718倍程度にしか、貸したお金は膨らまないということなんです。
どうでしょう、自然対数の底だったり、オイラーの公式だったりに使われている$${e}$$が、こんな極限から出てくるなんて、なんか意外じゃありませんか?
この話は、『世界は「$${e}$$」でできている』という本を参考にしました。
楽しい文章で説明されていますので、オススメの書籍です。
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そして、実は他にも意外なところに$${e}$$は顔を出します。
宝くじとe
宝くじの当たる確率、知っていますか?およそ$${\frac{1}{20,000,000}}$$だそうです。2,000万分の1。
これ、もちろん2,000万枚購入したら絶対当たるってわけじゃありません。
2,000万分の1であたるくじを2,000万枚購入したときにあたる確率は、およそ0.632。つまり36.8%程度の確率で当たらないのです!
直観的に理解できないかもしれませんが、そうなるのです。
これも高校生レベルの数学で計算できます(もちろん計算機は使用します)。
で、これと$${e}$$がどう関係あるのか?というと、実は$${e}$$の逆数は
$$
\frac{1}{e}=0.36787943 \cdots
$$
となり、先ほどの「当たらない確率」に近い値となるのです!
もちろんこれも、厳密に導出できますが、ここでは省いておきます。
要は、
「$${\frac{1}{n}}$$で当たるくじを$${n}$$回引いても当たらない確率」の極限ということです。
席替えとe
他の例として、席替えをしたときに全員が違う席に変わる確率というものがあります。計算は省略しますが、これも、人数が無限大に近づけば近づくほど、$${\frac{1}{e}}$$に近づき、約37%となります。
どんなにクラスの人数が多かろうと、63%程度の確率で、席が変わらない人が出てしまうのです…
結婚とe
また、結婚問題にも$${e}$$は顔を出します。
これは、「30歳までに100人と付き合うとして、何人目までは結婚しないでおき、その後に付き合った人で過去最高の人と結婚することにする」というアホみたいな戦略を取った場合に、どれくらいの確率で最高の人と結婚できるのか?という問題です。
バカらしいシチュエーションですが、計算はやはり高校生レベルの数学で可能で、確率が最大となる人数を算出できます。
そしてこれ、実は答えは$${\frac{100}{e} \risingdotseq 37}$$となるのです。
こんなところにも$${e}$$は出現してしまうのですね…
更に、このときの確率は、100人と言う人数が多ければ多いほど、$${\frac{1}{e}}$$に近づき、約37%となります。$${e}$$のオンパレードなわけです。
終わりに
ここまで、比較的現実にありそうなお話と$${e}$$との関連を話してきました。対数や微積分で力を発揮する$${e}$$の意外な一面が見れたのではないでしょうか?
神出鬼没の超越数$${e}$$。
少しでもその魅力が伝われば幸いです。
先にも書いた通り、『世界は「$${e}$$」でできている』という本を参考にしてこちらの記事を書かせていただきました!
とても楽しい文章で説明されていますし、微積分などのより詳しいお話が盛りだくさんです。
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