大迫傑選手のマラソンへの思い・敬意・畏怖とは?
さて、先週の日曜日、全日本大学駅伝が行われ、東海大学との接戦を制して駒沢大学が優勝に輝いたとニュースはご存じの方も多いのではないでしょうか?
当チャンネルでも、先週の放送では、東洋大学駅伝チームを取り上げました。今シーズンは、下馬評は低かったのですが、予想をいい意味で裏切ってくれて6位入賞を果たしました。箱根駅伝も楽しみに待ちたいと思います。
さて、今回も大学駅伝にゆかりのある長距離選手を取り上げたいと思います。それは、男子マラソンの日本記録保持者で、東京オリンピックのマラソン代表の大迫傑選手です。
このnoteはVoicyの過去の放送を文字に起こしたものです。
本日のお題 マラソン大迫傑選手の強さ、それを支えるネガティブ・ケイパビリティについて
大迫選手ですが、一般の選手と異なり、実業団には属さずに、単身でアメリカに渡米しナイキのサポートを受けるなど、自分の道を切り開くというイメージをお持ちの方も多いと思います。
私も当初はそういうイメージを持っていました。
実際、彼の書籍を購入すると、ストイックさやクレバーさはあるのですが、もう一つ違った一面もあるなと感じました。
今日は、大迫傑選手の持つ、もう一つの側面(ネガティブケイパビリティ、答えの出ない事態に耐える力)について考えていきたいと思います。
それでは、本編スタートです。
大迫選手の経歴、自分の道を自分で選択するという考え
今年の東京マラソンで日本記録を更新して、東京オリンピックの日本代表を勝ち取ったことを覚えているリスナーの方も多いのではないでしょうか?
出身は東京都町田市で、陸上競技を本格的に始めたのは中学生から。
ここで頭角を現して、2007年に長野県の陸上の強豪、佐久長聖高校に入学して、2008年の高校駅伝ではチームを初優勝に導きました。
早稲田大学に入学後は、
・上尾シティマラソンで、ハーフマラソンの20歳未満でのジュニア記録を更新。
・出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝と大学3大駅伝の制覇に貢献
抜群の実績を残します。
2014年の大学卒業後は、実業団選手として日清食品グループに所属しますが、1年で退部して、アメリカのナイキ・オレゴン・プロジェクトに参加。ナイキ・オレゴン・プロジェクトとは、世界トップクラスのアスリートたちが集う競技力向上を目的に設立された組織です。
アジア人は大迫選手ただ一人のようでした。
高校や大学卒業後は、企業に所属しながらも、競技を続けるというのが一般な中、自ら厳しい環境に身を置くことを選択しました。
2017年の記事の抜粋ですが、実業団とナイキについて、大迫選手は比較していました。
・実業団時代の駅伝は会社から求められているものだった。
・現在の環境、コーチは僕の目標、意見を尊重してくれるし、『コーチが僕を走らせたい大会』というのがない。
・現在の環境は、「本当に走ることに集中できている」
ちなみに、ナイキオレゴンプロジェクトは2019年10月に閉鎖してしまいましたが、大迫選手は現在もナイキのサポートをうけて活動しております。
さて、ここまでが、大迫選手の経歴ですが、共通するのは、他人が引いたレールは歩まず、自分で決めて道を切り開いてきたと言えます。ここからは、大迫選手の著書「走って、悩んで、見つけたこと」の自分の道を選ぶことの一部を抜粋します。
僕は幼いときから、両親に「最終的に自分のことは自分で決めなさい」と言われてきました。
ナイキ・オレゴンプロジェクトに所属したことで、特別な道を選んできたと受け取られることも多いのですが、僕は常に自分にとってベストな道を選んできただけです。
逆に僕から見たら、意外とみんな本来行くべきところに行けていないのではないかと感じています。
僕が選択をするときは、より強くなるにはどうしたらいいかという気持ちが常にあります。ナイキ・オレゴン・プロジェクトもそうですが。自分がちょっと頑張らないとついていけないようなチームを選ぶというのが、僕にとってはベストな選択なのです。
以上です。
また、大迫選手の思考法で興味深かったのは、メンタルとフィジカルを分解するという考えです。
走っているときの辛さはメンタルからくるものなのか、体力的なものから来るのかを俯瞰してみるようです。そして、一つ一つ原因を追求して対処をとって競技に臨んでいるようです。
ちょっと常人では真似できない考え方ですね。
さて、これまでを見た感じ、
・自分のアタマで考える
・自分の道は自分で切り開き
・他人には左右されない絶対的な判断軸を持っている
人だなと思いました。
ただ、大迫選手の書籍「走って、悩んで、みつけたこと」を読んでみると
「マラソン、走ること、陸上競技」に対して安易に結論を出さない、それに対するリスペクトというか畏怖を感じているという側面も読み取れました。
これは、最近注目されるネガティブ・ケイパビリティ(=答えのない事態に耐える力)という概念に近いなと私は思いました。
大迫選手がマラソン競技に感じる畏怖、敬意とは何か? また、ネガティブ・ケイパビリティとは?
まず、ネガティブ・ケイパビリティとは何かというと、「正解をあえて早急に求めず、一旦自分の中に留める、そしてホールドしていく力」です。これは、今まで当たり前とされていた価値観が見直されているコロナ禍の時代に求められる考えです。
ここからは、帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんの書籍、ネガティブ・ケイパビリティのからの引用になります。
人の脳には早急に結論を出そうと「分かろう」とする生物としての方向性が備わっています。様々な社会的状況や自然現象、病気や苦悩に、私達がいろいろな意味付けをして「理解」し「分かった」つもりになるのも、そうした脳の傾向が下地になっています。
しかし、ここには落とし穴があります。「分かった」つもりという理解が、ごく低い次元にとどまってしまい、より高い次元までに発展しないのです。
まして、理解が誤っていれば悲劇はさらに深刻になります。
ネガティブ・ケイパビリティとは論理を離れた、どのように決められない、宙ぶらりんの状態を回避せず、耐え抜く能力です。
この書籍ですが、様々ケース(例えば、教養、医療、文学)に当てはめて、考察がなされています。当チャプターにURLを貼っておきますので、興味の有る方はアクセスいただければとおもいます。
さて、前のチャプターでは、大迫選手は自分の道を自分で決めて切り開いてきたという側面を取り上げてきました。ここからは、これまでと異なるもう一つの側面、”大迫選手のネガティブ・ケイパビリティ”について取り上げたいと思います。
あらかじめお伝えしますが、私の独自の解釈ですのでご了承ください。。。
ここからは著書「走って、悩んで、みつけたこと」の抜粋です。
まず、不安をコントロールするという節からの一部抜粋
不安は誰もが持つものです。
僕はそのネガティブな感情を一度受け入れることも大切だと思っています。つい抗いたくなってしまうけど、その感情を受け入れて、許容する。ネガティブを自覚すると、他のポジティブなことで対処ができるようになるものです。
不安や焦りは他と比べたり、他人からの評価について反応してしまうのであって、自分の足元だけを見ていれば、その瞬間、瞬間に価値があるということが分かるはずです。
続いて、42.195kmとの付き合い方
当たり前のことですが、マラソンは42.195kmを走る競技です。この距離に対して、僕は恐れや不安を持っています。
毎回、最後の5kmは少しでも気を抜くと、足がつって倒れそうになったり、フラフラしそうになったりする状態でゴールをするという戦い方をしていました。
ここで如何に自分の正気を保っていられるかというのが重要ですが、次回も同じようにできるのかについては不安だし、課題になっていて、そのことについて、今は信頼を寄せるスタッフと毎日のように話しています。
次のMGCできちんと勝ちきれるのか不安に思っていると彼に伝えたとき、リスペクトというのはどういうことだろうと話になりました。
その時に印象に残っているのが「傑は長い距離を走ることにリスペクトがあるからこそ恐るのであって、そう思っているうちは大丈夫。むしろ恐れがないときの方が、怖い。距離に対しての恐れがないと、こんなもので走れるだろうと思ってしまい、痛い目に合うことが多い」と話してくれて、それにはすごく共感しました。
いざ走り始めてしまえば、レースは今までの練習で積み重ねてきたことの反芻でしかなく不安を感じる余裕もありません。それを知っていてもなお距離に対する畏怖のような思いを毎回抱いて、レースに臨んでいるのです。
これを読んで、大迫選手は、
「とても真摯に、謙虚に競技に向き合っている」
「不安を感じながらも常にコントロールしている」
「そして、マラソン、走ることに対しての敬意、畏怖を持っている」
「そして、安易に結論をださず、常に上をめざしている」
と思いました。
この考え方、物事の見方は色々参考になる点は多いなと思います。次のチャプターでは、Tipsについて考えていきたいと思います。
Tips "決断すること" と "あえて結論を出さないこと"を使い分けよう
さて、ここからは日常生活や仕事に活かせるTipsについてです。
今回のTipsはこちらです。
「決断すること」と「あえて結論を出さないこと」を使い分けるってことなのかなと思いました。
全てにおいて決断しないというのは極論ですし、割り切って全てに決断を下すのも乱暴です。なので、過去の回で「自責と他責をハイブリッドに使い分けよう」というTipsを出しましたが、今回も、そのあり方がしっくり来るのかなと思いました。
決断して実行に移さないといけないこと=これは自責思考というスタンスで臨むのが良いと思います。
ただ、しっくりする表現が思いつかないのですが、答えの出せないもの、更に高みを目指したいことに対して、「こういうもんだ」って決めつけてしまうと、妥協してしまいます。
あえて答えを出さない、ただ現時点で「こう思うというようなスタンス」だけは示しておくという事が重要なのかなーと思いました。
また、謙虚さって失うと、物事を見る、視野や視座が狭くなると思います。現時点での感じたことはとっておきつつ、模索しながら、更にアップデートしていく考えを大迫選手の書籍を読んで感じました。
これからの時代を生きる上でのヒントにもなるなと思います。
また、成功体験と失敗体験、自信と過信、不安と敬意、はいろんな意味で関連性があるなというのが、大迫傑選手の書籍を見て感じたことで、個人的には興味深かったです。
成功体験は自信を持つという意味では大事ですが、
・過信してはいけない
・安易に承認や答えを求めてはいけない
ということを、私も明日からの仕事では意識していきたいと思います。
終わりに
さて、本日の放送は、如何でしたでしょうか?
今回は、駅伝シーズン突入ということで、色々情報収集をしていたときに、大迫選手の考え方とかって色々参考になるなと思い、まとめてみました。
また、ネガティブ・ケイパビリティという概念を知ったのは、Voicyの人気番組である「荒木博行のBook cafe」からでした。
ネガティブ・ケイパビリティについて、より詳しく知りたいと思った方は、こちらも併せてお聴きいただけたら嬉しいです。
このnoteはVoicyの過去の放送を文字に起こしたものです。
是非音声でもお聴きいただき、フォローボタン、Twitterへのシェアもよろしくおねがいします。
フォローをしていただけると、このチャンネルの最新の放送を受け取れたり、あなたに合ったチャンネルがおすすめされます。
また、「Voicyとはなにか?」「フォローの仕方」などはこちらにまとめておりますので、合わせてご確認ください。
併せて以下のnoteもご確認ください
今回の放送で、例にだしました過去の放送回のnoteはこちらです。