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管理職のススメ

「管理職になんてなりたくない!」

よくSNSでも聞くコメントだが、特に若者の管理職へのイメージは悪そうだ。名前がそもそも「管理」職なんて名前がちょっと偉そうだし、仕事のプレッシャーはありそうだし、ということで毛嫌いされているのだろうか?

私自身は管理職に関して重責ではあるがそこまで悪いイメージがない。むしろ若い人には積極的にチャンスがあればチャレンジしてほしいとさえ思っている。

私がそう思うきっかけになったのは、欧州のある国の会社に出向し、管理職をやっていたからだ。

海外駐在すると下駄を履くというやつで、係長クラスが日本での職位だったが、駐在時に少人数のチームのマネージャーつまり管理職を拝命した。

駆け出し管理職だった私はそもそもどんなことをするべきなのかよくわからず、自分の上司に何をすべきか聞いてみた。

その上司は日本人でなく、現地の会社で採用された外国人(彼から見れば私が外国人なのでが)だった。彼が最初に教えてくれたことが有意義なアドバイスだったので管理職を目指す人や今若くして管理職で頑張っている人に向け共有したい。

管理職の5つの役割

その上司曰く、

「管理職は以下の5点を気をつけるべきだね。①プロジェクト管理②チームマネジメント③予算管理④人事評価とチームメンバーのプレゼンス向上⑤昇格・人事異動の手配・準備。これが出来れば管理職としての仕事を果たせていると考えていいよ」

ホワイトボードに書きながら上司が1つずつ解説してくれた。

①プロジェクト管理
管理職はプロジェクトを切り盛りする仕事が最優先である。自分のチームが抱えるプロジェクトの目標を設定し、それを自らの上司と合意した上で進捗管理してく。メンバー(部下)の進捗を確認し、遅い場合はフォローしたり業務分担を変えたり、自分が手伝える部分はサポートして仕事を前に進める。そしてその進捗をきちんと上司へ報告する。プロジェクトを進める上で適切なアドバイスやサポートを得るために。上司→あなた→チームメンバーの3者の間をあなたがハブとなり繋いでプロジェクトを進める。

②チームマネジメント
チームメンバーのパフォーマンスを最大化する。メンバーは必ずしも自分が思うとおりに動いてくれなかったり、メンバー間や社内外でトラブルを発生させることがある。その状況に適切に対応する必要がある。
特にチームマネジメントではメンバーの適性や性格を把握する必要がある。メンバー1人1人に個性があり、こだわりポイントや苦手な部分がある。そこを日々のコミュニケーションで見抜いて、メンバー間で補いあったり、自分が間に入ることでサポートする。
業務を分配したりメンバー間のタスク・負荷を調整することも忘れずに。業務をアサインする場合の動機付けや理由の説明、仕事の目的をしっかり説明しておくこともチームマネジメントにおいて重要。

③予算管理
プロジェクトを行う上で大切なのが、人・時間・知見そしてお金。予算があれば人や時間や知見の部分をショートカット(人を雇う、ノウハウのある外部に委託等)することも可能。
部門内で必要な予算を確保し、実行スケジュールを計画し、管理する。場合によっては通常定められたプロセスとは異なる手段で予算を引っ張ってくる、確保することも重要。そうして得た予算を有効活用し、プロジェクトを進める。

④人事評価とチームメンバーのプレゼンス向上
毎年積み上げていく中長期で積みあがる査定と、ボーナスと連動する短期の査定の両方を進める。中長期で積みあがる査定は、コンピテンシーと呼ばれる能力に関するものが中心。どのような業務を経てどんな能力や経験が身についているかを査定していく。ボーナス連動の短期の査定は評価期間にコミットしたことがどこまで実現しているか、期待以下か期待通りか期待を超えるのか、そういう観点で見ていく。
いずれの査定も社内での椅子取りゲーム。自分が付けたメンバーへの査定(特に高い評価)を通すためにも適切な業務を与え、部下のプレゼンスを上げ、自分の上司や他の上司陣からも認められるように尽力する。大きな塊の仕事を任せる、目立つ仕事を付与し、それを全力でサポートする。

⑤昇格・人事異動の手配・準備
昇格は、査定の結果も含めて能力が既に一定の水準を超えている、または能力が上がった人間を社内での昇格候補テーブルに乗せる。査定の話とも連動するが、職位の高いマネジメント・管理職層(テーブルに乗せる人を選ぶ権限がある人)に認知されていることが絶対条件。
社内での試験、または外部の試験を受けさせる。またその試験の準備を必要に応じ手伝う。
異動は本人の成長に加え、自チームだけでなく組織全体の最適を考え手配。どの異動が本人のために最適なのかを自分でも考えつつ、本人の異動希望も確認しつつ、組織の上位からくるニーズにも応えていく。まるでパズルのようだが、これらを勘案して組織内で調整をする。

「この5つを意識しながら、まずはメンバーとのコミュニケーションに励んでみて。もちろん例外もあるだろうけど、きっと指針になると思う」

上司はそう言って説明を終えた。

右も左もわからない私にとっては、大海を出る前に大きな羅針盤を渡してもらえた気持ちになった。

実践してみた結果

当時の私も最初からすべてを上手くできたわけではないが、ガイドがあるとやはり違ったなと振り返って思う。この教えがなければ漫然と管理職っぽい業務をこなすことで精一杯ではなかったかと。

特に④人事評価とチームメンバーのプレゼンス向上⑤昇格・人事異動の手配・準備は、これまで平のプレイヤーとしてやることはなく、仕事が新鮮だった。

もちろん3年間の管理職経験の中でうまくいったことも、失敗もたくさんあった。業務のアサインの仕方が悪くてチームメンバーを怒らせたり、人事評価のフィードバックに緊張して直前の夜に眠れなくなったり、大変ながらいい経験をたくさんさせてもらえた。何よりメンバーの成長に伴走できたことが嬉しかった。

今はこのチームの管理職をやれてよかったと胸を張って言える。欧州の地を去る前に当時のメンバーから「今までのマネージャーの中で5本の指に入るくらい、いい上司だったよ、ありがとう!」という、この上ない誉の言葉を送ってもらえた。

上記の5つはあくまで私の上司の受け売り、その会社でのものだが、もう少し広い視点で管理職についての「いろは」を教えてくれた本があるのでこちらも紹介しておく。

著者の佐々木氏は東レに入社し、自閉症の長男に続き、年子の次男、年子の長女が誕生。初めて課長に就任したとき、妻が肝臓病に罹患。うつ病も併発し、入退院を繰り返す。すべての育児・家事・看病をこなすために、毎日6時に退社する必要に迫られたという。

そこで、課長職の本質を追究して、「最短距離」で「最大の成果」を生み出すマネジメントを編み出す。数々の大事業を成功に導くことに成功しているそうだ。管理職としてのマインドや振る舞いを学ぶ上で最適な一冊と思う。

本の内容についてここでは細かな紹介を控えるが、タイトル通り佐々木氏が新しく課長になった人に向けて書いた手紙の形式で珠玉のアドバイスが載っている。

5つのポイントや佐々木氏の本が今若くして管理職になり、悩んでいる人へのヒントになれば幸いだ。

また、私がかつて師事した上司にマネジメントの在り方をしっかりと見せていただいた経験があり、それも自分の中で一つの柱になっている。このnoteもご一読いただければ嬉しい。

管理職としていいマネジメントをするための、当事者向けの指針やガイドラインが少ないと思うため、こうした情報を広く学び、発信していきたい。

頑張りたい人へのエール

難しさもあるが管理職の醍醐味はやはりさまざまな権限を持ち、チームと共に仕事を前に進められる事、何より成長するチームメンバーを身近で見られること。

担当者として、プレイヤーとして仕事をしてきた目線から1つ上のレベルで仕事ができる。何より管理職はポータブルスキルだ。仕事が変わっても管理職の経験は活かせる。

若い人たちには、最初から難しいと諦めず、割り切りすぎずに管理職にぜひチャレンジしてもらいたい。また、管理職としての仕事に悩む若手の人にも日々研鑽をして欲しい。

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柳本純一郎 Junichiro Yanagimoto
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