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★物語/夜空に消えた声

┃物語/夜空に消えた声┃

(第一章:静寂の街)
冬の夜、街は深い静けさに包まれていた。雪がしんしんと降り積もり、街灯の光がぼんやりと滲んでいる。その中を、一人の青年が歩いていた。名前は涼介(りょうすけ)。彼は、かつて愛した人の声を探していた。

その人の名前は奈々(なな)。彼女は涼介の幼馴染であり、初恋の相手だった。二人はいつも一緒に過ごし、将来の夢を語り合っていた。しかし、奈々は数年前、突然この世を去った。病気だったと聞かされたが、涼介にはそれを受け入れることができなかった。

奈々がいなくなった後も、涼介は彼女の声を忘れることができなかった。彼女がよく歌っていた歌、彼女が笑いながら話していた言葉。それらは、彼の心に深く刻まれていた。

「奈々……君の声を、もう一度聞きたい。」

涼介はそう呟きながら、雪の降る街を歩き続けた。


(第二章:幻の声)
ある夜、涼介は不思議な夢を見た。夢の中で、奈々が遠くの夜空の下で歌っていた。その歌声は、まるで星々が奏でる音楽のように美しく、涼介の心に深く響いた。

「涼介……夢の続きを、一緒に探して。」

奈々はそう言い残し、星空の中へと消えていった。目が覚めた涼介は、胸の奥に奇妙な感覚を覚えた。まるで奈々がどこかで彼を呼んでいるような気がしたのだ。

その日から、涼介は奈々の声を探す旅に出ることを決意した。彼女が最後に歌っていた場所を見つければ、もう一度彼女の声を聞けるかもしれない。そう信じて。


(第三章:記憶の足跡)
涼介は、奈々との思い出を頼りに、彼女が好きだった場所を巡り始めた。二人がよく通った公園、彼女が好きだった小さな喫茶店、そして彼女が歌っていた音楽ホール。

その中で、涼介は一つの手がかりを見つけた。奈々が最後に歌った音楽ホールの控室に、彼女の手書きのメモが残されていたのだ。

「夜空の星が滲む場所で、また会いましょうね。」

その言葉を見た瞬間、涼介は奈々が何を伝えたかったのかを理解した。彼女が言っていた「星が滲む場所」とは、二人が子供の頃によく訪れた丘のことだった。そこは、街の灯りが遠くに見え、星空が美しく輝く場所だった。


(第四章:星が滲む丘)
涼介はその丘へ向かった。雪が降り積もる中、彼は懐中電灯を片手に、足を進めた。丘に着くと、そこには静寂が広がっていた。夜空には無数の星が輝き、雪の白さがその光を反射して幻想的な景色を作り出していた。

涼介はそっと目を閉じ、耳を澄ませた。その瞬間、微かに奈々の声が聞こえた気がした。

「涼介……ありがとう。」

涼介は目を開けた。そこには誰もいなかったが、彼の心には確かに奈々の声が響いていた。そして、彼の足元には雪の中に埋もれた小さな箱があった。

箱を開けると、中には奈々が書き残した手紙と、一枚の楽譜が入っていた。手紙にはこう書かれていた。

「涼介へ。
もしこの手紙を見つけてくれたなら、私の最後の願いを叶えてほしい。私はもう歌うことができないけれど、この楽譜に私の想いを込めた。涼介がこの歌を完成させてくれることを願っているからね。」

涼介は涙を流しながら、その楽譜を手に取った。それは、奈々が彼のために作った未完成の曲だった。


(最終章:夢の続きを紡ぐ)
それから数ヶ月後、涼介は奈々の楽譜を完成させ、彼女が最後に歌った音楽ホールでその曲を披露した。曲のタイトルは「夢のつづき」。それは、奈々が涼介に託した想いそのものだった。

涼介の歌声がホールに響く中、彼は奈々がそばで微笑んでいるような気がした。彼女の声はもう聞こえないけれど、彼女の想いは確かに涼介の中に生き続けていた。

「奈々、僕は君の夢を引き継ぐよ。君が教えてくれたこの道を、これからも歩いていくよ。」

涼介はそう誓いながら、星空を見上げた。そこには、滲むように輝く一つの星があった。それはまるで、奈々が彼を見守っているかのようだった。

そして、涼介の歌声は夜空へと溶け込み、星々と共に永遠に響き続けた。


この物語は、歌詞に込められた「別れ」「声」「夢の追求」というテーマを元に、奈々の声を象徴的な存在として描きました。

涼介が奈々の想いを受け継ぎ、彼女の夢を紡いでいく姿を通して、別れの中にも希望があることを表現しました。


この簡略な物語の創作の参考にした歌詞は以下の作品です。
和風なシャンソンで、とても素敵な作品です。

┃夢のつづき/作詞:石田 実┃
夜の静けさ 心に響く
遠くに滲む 幻の影
涙が零れ 孤独な街で
一人歩く 夢のつづき

さよなら言わず 時は流れ
思い出だけが 笑っている
今も心に あの日の声
夢のつづきを追いかけて

古い写真を 眺める度に
心が震える 昔の二人
戻れぬ日々を 胸に抱いて
思い重ねる 夢のつづき

さよなら言わず 時は流れ
思い出だけが 笑っている
今も心に あの日の声
夢のつづきを 追いかけて

星が滲む 夜空に願い
君は何処かで 微笑んでるか
夢が消えない 限り続く
この道を行く 夢のつづき

さよなら言わず 時は流れ
思い出だけが 笑っている
今も心に あの日の声
夢のつづきを 追いかけて
  






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