そ、そういうことなら、近々日本酒といこう
パンチェッタ、という言葉を初めて知ったのはYUIの曲だった。
2011年のナンバー“Cooking”にそれは登場する。
当時初耳の言葉だったから、この詞を聴くたび僕の頭の中にはスイーツが浮かんでいた。
「パンナコッタ」に引きずられての連想であることは間違いない。
どう考えてもスイーツを炒めることなどないのに。
パンチェッタは豚バラ肉を指すイタリア語だが、日本ではとくに塩漬けを指していうことが多い。
もちろんスイーツではない。
生ベーコンという俗称があるとおり燻していないものが多く、生ハム同様、日本に入ってくるのはずいぶん遅かった。
パンチェッタの日本での市民権はまだそれほどない。
買おうにもなかなか見かけないし、たまにイタリアンな店でカルボナーラ、あるいはアマトリチャーナの具材として見るくらい。
それすらベーコンが使われている場合も多いし、レシピを見てもたいていベーコンで代用できると書かれる。
昨日はひょんなことからそのパンチェッタを手に入れた。
ならもう使い途は一択、大好きな穴あきロングパスタ・ブカティーニとあわせてアマトリチャーナといこう。
先週店で食べたアマトリチャーナはスパゲッティだったし。
■ アマトリチャーナ
Bucatini all'Amatriciana(ブカティーニ・アッラマトリチャーナ)
パンチェッタからにじみ出た脂は旨みのエキス。
それを余すところなくパスタに吸わせるために、オリーブオイル、チーズ、パスタのゆで汁を総動員し、ソースの乳化は怠りなく。
仕上げに、先日のいただきもの・沖縄の天然塩をひとつまみ。
熟成パンチェッタとトマトの旨みに、オリーブオイルとニンニクの香りをまとったブカティーニ。
ひゃぁぁ、なんちゅう旨さだ、これは。
ふと気になる情報が目に入る。
イタリアでは、アマトリチャーナにはパンチェッタではなくグアンチャーレを使うのだそうだ。
グアンチャーレ、豚トロの塩漬け。
早よ言うて。
*
添えものはちょっと酸味がほしいから、イカのマリネにしよう。
そう思ってスーパーに行くも、目当ての剣先イカが売られていない。
急遽、牡蠣のマリネに路線変更。
白ワインで蒸し焼きにしたプリップリの牡蠣を、トマト・玉ねぎとともにバルサミコ酢のマリネ液に半日漬け込んだ。
■ 牡蠣のバルサミコ酢マリネ
Ostriche marinate con aceto balsamico(オーストリケ・マリナーテ・コナチェート・バルサーミコ)
広島の大粒の牡蠣、ナイス。
兵庫も牡蠣の名産地、もうすぐ出回る頃かな。
イタリアンな皿を囲むとき、料理にいるからと買うボトルワインは実際料理にはごくわずかしか使わないから、残りを飲む楽しみももれなくゲット。
うまうま~と白ワインを傾ける。
*
――ま、これではなかったんやけどな。
あらら、イカが店頭になく瞬時に牡蠣に乗り換えたのは、家族が焼き牡蠣食べたいと呟いていたことを思い出したからだったが、どうやら食べたかったのは殻つきのまま醤油を垂らして網焼きするやつだったらしい。
そ、そういうことなら、近々日本酒といこう。
(2023/11/25記)