[週刊 未亡人生活] 第9号!<魔術的思考2>「教えて!おじいさん」埼玉の山奥で出会った謎のコミュニティの主との奇妙なお話。
ごきげんよう、ある未亡人です。
先週、
モンブランの話をしたばかりなのですが、
今週、
過ぎゆく夏がなごり惜しくて、
歯医者からの帰り道、
かき氷を食べてしまいました。
人気店らしく、
涼しい夕方にもかかわらずお客さんでいっぱいでした。
さらに、そんな話をしといてなんなのですが、
早いもので、もう来週はお彼岸ですね。
大好きなおしゃれおはぎのお店がありまして、
なんとかブツを用意したいのですが、
最近は予約の電話もつながりません。
それならば早くから予約しとけよってかんじですが、
ご家族のかたたちに譲ろうかなと、気持ちがくじけてしまいました。
未亡人である自分になかなか慣れることができません。
そんな未亡人でございますが、
今週もよろしくお願いします🍒
はい。先週につづくお話です。
マジカルシンキング期のお話、part2です。
夫を亡くして1年ほど経った頃、
いきなり、唐突に、大学時代のクラスメイトから誘われました。
季節は冬でした。
友だちの周辺で、
その老人が話題になり、
訪ねるブームが起きていたみたいです。
場所は埼玉の奥地でした。
とある場所(すでにじゅうぶん奥地)からさらに、
バスで50分ほどかかるとのこと。
さっそく友人が連絡をとってくれて、
次の土曜日の夕方、
池袋のデパートで待ち合わせて、
友人とふたりでおじいさんに会いに行きました。
電車に乗る前に、
なぜか、友人はデパ地下にて、お惣菜やら大福やらを買い込みました。
お金は必要ないのだけれど、
皆でつまめるものを買ってくるようにと、
おじいさんに言われたそうなのです。
そう思いつつ、友人とふたり、電車とバスに揺られて向かいました。
あたりはすっかり暗くなり、バスが向かう先の地名も謎。
なんとなくわかってきたのは、
ものすごくさびしくなっていく風景のかんじから、
山あいの温泉地よりもハードな場所に行くらしいということでした。
窓の外のさびれた風景・・・
ずいぶんと遠いところにきてしまった。
そのさびれかたはまるで、
夫を亡くしてからの自分のこころもようを象徴しているかのようでした。
車中では友人が自分の身の上におきている話をしてくれました。
それはご実家に起きている困りごとで、
以前からすこしずつきいていた話ではありましたが、
さらに事態は悪化していました。
しかも、わたしとの待ち合わせの場所に来る前までは、
お子さんの困りごとで病院に行ってたそうなのです。
何度も尋ねましたが、「大丈夫」と友人は力強く言うのです。
「もともと自分が相談したかっただけだから、気にしないで」
などと軽やかに言うのでした。
🦋
もともと、その友人はスピリチュアルな方面にはうといほうで、
むしろ、きわめて現実的な考えかたをふだんからしているひとです。
内心、わたしは驚いていました。
大学時代からの付き合いだけれど、そんな彼女は初めてでした。
バスはわたしたちを乗せて、
どんどんさびしい地域へと向かっていきます。
家の灯りがまばらになり、やがてほとんど見えなくなるにつけ、
逆に、友人への信頼感、親しみの度合いが増していきました。
はじめて見る、友人の悩ましい表情でした。
行き詰まっているのが自分だけではないのだという気がして、
正直、じゃっかんうれしかったし、
山のおじいさんに会うのもワクワクさえしてきました。
目的地の停車場にバスが到着すると、
わたしたちはさらに歩き、
やがて、サイキックおじいさんの家にたどり着きました。
そこは、驚くほどの、ふつうの民家でした。
あたりに家は見当たりません。
玄関で出迎えてくれたのはおじいさんひとり。
どこにでもいそうな服装の老人でした。
年齢は75歳くらいかな。
どこからどう見ても、
さかさにして揺すってみたとしても、
霊感とか、ぜんぜん出てこなさそう・・・
独り暮らしらしく、おうちのかたはいませんでしたが、
こぢんまりとした居間に通されると、
そこには大きなコタツがあり、
20代〜30代の成人男女が、
5人ほど、いました。
そのかたたちの間に会話はなく、
みなさんぽかんとした表情で、ついているテレビに顔を向けています。
バラエティ番組をみながら笑うこともなく、
皆で持ち寄ったらしいお惣菜をつまんでいます。
けっこうもりもり食べるんだなとおもいました。
友人とわたしはコタツの端のほうにおずおずと座り、
持ってきた惣菜やらスイーツやらを天板に並べていきました。
コタツのある居間とつながっている仏間(?)には、
小ぶりの祭壇のようなものが置かれてあり、
不自然なほどのぬいぐるみたちがそれを囲むように並べられていました。
まるで、なにかに祈るかのように、
一様にぬいぐるみたちの体は祭壇のほうに向いていました。
もしかして供養?・・・
とっさにわたしなどにもそうおもえるほどの残留思念をかんじました。
なぜかちいさなうさぎのぬいぐるみが多かったので、
亡くなったお子さん(胎児含む)に供えているのかな、と連想しました。
なんとなく、そちらに気をとられ、こころで手を合わせながらも、
つい顔を見合わせ、愛想笑いをしてしまう我々です。
かといって、「きょうはどちらからいらしたんですか?」
といった世間話など、とうていできない雰囲気です。
🦋
この日は土曜日でした。
どうやら、集まっているかたたちはお互いに顔見知りらしく、
毎週土曜日の夕方に、決まって集まっているようです。
全員が全員、服装が地味で、控えめに言っても引っ込み思案でした。
ぽつぽつと話をしながらも、互いに目を合わせません。
我々は大人の女性として、
けっこう親しみやすいほうだとおもってましたが、
この居間ではまったくとりつくしま&話の糸口がみつかりません。
ふたりで来てよかった。
こころからそうおもい、ときどき顔を見合わせては、笑いました。
すると、おじいさんが、突然、友人に向かって言いました。
友人は驚いて、
と、こたえました。
ふたりとも驚愕してしまい、しばらく言葉を失いました。
友だちの前でおそろしい質問をするんだな・・・。
常識を超えた、ざっくばらんな軽口にも驚きました。
そこにいたひとたちからはなんの反応もなく、
まあそれより、置かれている状況がうさんくさすぎて、
ふたりとも相談をする気持ちにならず、
所在なく、持ってきた大福をついばみました。
なんとなく、『千と千尋の神隠し』をおもいだし、
そこにあるものを食べてしまったら、
二度と元の世界には帰れなくなるような気がしていました。
ちょこっとだけ考えてしまった自分をこころで叱りました。
そんなわけで、席についてはいるもののなんの相談もしていない我々でしたが、
突然、なんの前触れもなく、またまたおじいさんが言いました。
ある県にある、有名でもないちいさなお寺の名を言うのです。
そのとき・・・。
わたしは内心では驚きましたが、気配には一切出しませんでした。
なまぬるい反応をしました。
「いや、いいお寺だからさ」おじいさんは言いました。
「ふたりで行ったらいいなとおもって」と。
友人をみると、どうしてだろうね、という顔をしています。
そりゃそうでしょうね。
わたしも、どうしてだろうという表情をして返しました。
しかし。
実際には・・・
そこは・・・
夫の墓がある寺でした。
しかし、そこでそれを言うのはイヤでした。
友人はもちろん、わたしの夫の墓の場所なんて知りません。
それまで誰かに、一度たりとも、
墓の場所を話したこともありませんでした。
わたしはおじいさんに、なにも響いていないという顔をして、
そっけなく言いました。
おじいさんには夫が亡くなった話をしていませんでした。
「どうしてそのお寺なんですか? お知り合いのお寺なんですか?」
と、ききました。
するとおじいさんは、
「違うよ。なんでだろうね」と言って、笑いかけてきました。
わかってるよ、というような表情でわたしをじっと見ながら、
もう一度、「ふたりで行くといいよ」と念を押すように言いました。
「気分転換をしなくちゃね」とも言ってました。
不思議なことに、驚いたけれど、動揺はなかったです。
それを言われたからといって、おじいさんの霊感への評価もありません。
いま、そのときのことをおもいだしながら書いていますが、
そうおもいます。
いまだったら、素直に墓があることを言っちゃうかな。
あのときの自分は、「それがなに?」ってくらい、
こころが動きませんでした。
ちなみに、ずいぶんのちに、
このことについて友人に打ち明けたとき、
ものすごく驚かれました。
「よくまあ、信じる気にならなかったよね」と。
🦋
それから、1時間ほどその家で過ごし、帰るときがやってきました。
おじいさんは不思議な絵(コピー)をくれたのですが、
脇に、お経のようなものが鉛筆で書かれてました。
ものすごくへたくそな字でした。(たしか誤字もあった)
いま、そこになんの絵が書かれていたのか、まるでおもいだせません。
しかも、カジュアルにもほどがあり、鉛筆書きって・・・。
(絵はどこかにいってしまいました)
その絵をくれたとき、おじいさんはわたしに、
予言のように告げました。
いやー・・・と言いました。
相手はおじいさんだけど、なにされるんだろうとしかおもえなかった。
怖っ。
帰り道。友人とわたしはおじいさんにもらった絵を筒にして持ち、バス停に立っていました。
あの成人の集団は盛り上がることもなく、毎週あの家に集まっているのだろうか。
いや、もしかしたら、あの家に住んでいるのかも。
おじいさんを中心とした、不思議なコミュニティが形成されている?
また50分バスに乗り、終点のさびれた駅に到着すると、
わたしたちはお茶でもしないかぎり都会には帰れない気がしており、
店を探したのですが、なんと、ちいさなマクドナルドしかありませんでした。
マックがあるなんて、逆に奇跡だよねとおもいながら、
店に入り、友人とふたりで列にならびました。
なんで友人にそんなことを言ったのか。
とにかく疲れ果てていたし、寒かった・・・。
ほんとに最低だとおもいながら、温かいコーヒーをひとつ買った。
お腹はまったく空いていませんでした。
友人はわたしの隣で言いました。
まったく・・・。
サイキックじいさんのあとに、神様か。
マックのカウンターでする話じゃないよね。
神様がいたら、びっくりだ。
なんだか逆に愉快さがこみあげてきて、
ふたりで笑っちゃいました。
このひととはずっと友だちだろうな。
笑いながら、そうおもえた。
翌朝、おじいさんから家に電話がかかってきましたが、出ませんでした。
友人は、その後、同僚といっしょにおじいさんの家を訪ねたそうです。
🦋
いまでもときどき、あれはなんだったのかなとおもいながら、
ほんとうにあったことなのか、友人に確かめるのですが、
夢や妄想などではないとわかり、そのたびに笑っています。
マックの列に並びながら神様の試練理論をきくなんてなー。
この話をロンドンからのバスツアーで隣の席になった女子にしたところ、
「ものすごくあたるサイキックを知ってるけど行きますか?」と言われた。
「ほんとにすごいんですよ」と。神戸にいるかたらしい。
「いや、やめておきます」と答えました。
おじいさんとの思い出をロンドンでしちゃうなんてなー。
📍カナシミペディアを更新しました。
こちらもよろしくお願いします。
かき氷の名店<雪うさぎ>さんにて、
いちごヨーグルト(とちおとめ)をいただきました。
ふんわり氷+いちごソース+練乳のセットが、
何層にもわたって重なっており、
スプーンで掘りすすめつつ、さらにヨーグルトを足し足しいただきました。
幾層もあるため、ひとりで食べていても飽きなくて、たのしかったです。
また今年も、夏が終わりました。