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見栄の果てに残るもの
足りないから振り込んでおいて。
伯父は数日前に渡した数万円をあっという間に使い果たし、今日も私に無心の電話をかけてくる。
どうしたらその額をたった数日で使い果たせるのかと、私も周囲も驚きとともに呆れているが、本人はなんのその。ないものはない、と開き直っているように見える。祖母にやんわりと確認したら、この金遣いの荒さは昔からで、今までは祖母が補填し続けていたという。
なんてこった。
通りで、破産に追い込まれるわけだ。
同じ兄弟でも、私の父は「ないなら使わない」というタイプ。
徹底してお金を使わない人で、持ち物がボロボロでも全く気にせず、使えればなんでもいいという考えだ。そもそも実家は裕福ではなかったので、私も同じ考えで育ってきた。一人っ子なのに洋服はもちろん、学習机さえお下がりだったが、特に気にしたこともなかった。
だからこそ、見栄と体裁で塗り固められた伯父と祖母の生活感に、感覚として理解できないところが多い。どうして払える余裕がないのに新車を買ったのかとか、収入に見合わない賃貸を借りるのか。
生活状況を聞いたとき、理解できないことだらけだった。
けれど、彼らには彼らなりの理由があって、何もかも譲れないのだと言う。
周囲がどんなにそれはおかしいと苦言を呈しても、聞く耳を持たないどころかうるさい、と一蹴される始末。
関係の薄い人には羽振りの良いところしか見せていないので、実態との乖離も大きい。そうしてついた小さな嘘のために、どんどんと嘘を積み重ねる姿も、見ていて悲しくなる。
それでも自分たちだけで自立して暮らせるのであれば良いが、そうではないから困りものだ。家賃や光熱費、携帯代の支払いなど私が管理して振り込んでおかなければ全て滞納してしまう。延滞料だってばかにならないので、仕方なく私が管理しているが、それさえも甘やかしていることになるのは重々承知だ。
ないものはない、渡せるお金はないと言っても無心の電話はとまらない。
いっそ携帯をとめてしまおうかと思ったこともあるが、それは解決策と言えるのか怪しいし、延滞して社会的信用をなくすデメリットのほうがよほど大きいので得策とはいえない。
前にも書いたが自分のことではないにしろ、お金の無心が毎日のようにかかってくるのはしんどい。ないものはないのだ。無い袖は振れないということわざを壁に書いて貼っておこうか、と思うほど。
もう少しで終わるから、と自分を励ましながらどうにか進めているが、そろそろ限界だ。私が意地悪しているように思われるくらいなら、残りのお金を全て渡して自由にしてもらえばいいやと、半ば投げやりな気持ちになっている。
それでも手を離せずにいるのは、私が弱いからなのだろうか。
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