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テツガクの小部屋24 アリストテレス②

・形相論
イデア論批判は、普遍が個物から離れて存在すると想定することの不合理なることを示している。それゆえアリストテレスは、普遍すなわち形相は個物に内在することによってはじめて存在できると考えた。普遍の存在は個物の存在によってささえられねばならないのである。ところで個物とは、アリストテレスによれば、形相と質料の結合体である。それゆえ形相も質料もそれ単独では存在しえず、結合体、すなわち具体的な個物となってはじめて存在しうるのである。個物が独立して存在する唯一の存在である。それゆえ彼はまず最初に個物を実体としたこの意味での実体を彼は特に第一実体と呼ぶ。

ところで質料は没規定的な、すべてに共通した基体であって「これ」と指し示されるいかなる個別性も与えない。事物が「このもの」となるのは形相によってである。例えば木材は木製のすべての製品に共通する基体であって、それ自身の内にいまだどのような個別性も有していない。それが特定の個別性を示すのは、例えばこの机となるのは、それに机の形相が加わることによってである。それゆえ事物の本質はそのものの形相にある。形相によってその事物の「何であるか」(本質)がはじめてしめされるのである。

アリストテレスは形相に独立した存在は拒むが、その他の点では結局プラトンのイデアが有していたのと同じ性格を形相に与えている。形相は普遍であると同時に事物の本質であり、永遠に不変である。それゆえそれは、質料同様、造り出すことができない。事物の「何であるか」(本質)は形相によって与えられる。また逆に、個々人がそれぞれ特殊性を有しながらもすべて人間であるのは、形相の普遍性に基づいている特殊性は質料に起因する。それゆえ彼は、こういった見地からはやはり形相を実体とせざるを得なかった。彼は形相を第二実体と呼んでいる。実体を個物とするか普遍とするかに関しては、アリストテレスは動揺を示しているのである。この問題は中世に継承され、普遍論争を引き起こすことになる。

しかしアリストテレスは形相に独立した存在を認めることはあくまでも拒否する。形相は事物の本質に対する原因、すなわち形相因であり、事物の本質を構成することによってのみ、換言するなら、事物に内在することによってのみ、存在性を有するのである。

※形相と質料について、もう少し言葉自体のご説明を加えた方がよいと思ったのですが、長くなるので次回(アリストテレス③の前に、補足として)挿入する形で投稿する予定です。


参考文献『西洋哲学史―理性の運命と可能性―』岡崎文明ほか 昭和堂





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