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岩手県大船渡市三陸町綾里地域で発生している山火事(山林火災)について当事者の視点で様子を書く

文字通り対岸の火事としてこれまで目に映ってきた山火事を直接目の当たりにすることとなった。2025年2月19日に第一報が発せられた岩手県大船渡市三陸町綾里の集落・田浜地区の山火事(山林火災)は、2月21日の夜になっても勢いを増すように火の手を広げている。

岩手県大船渡市三陸町綾里と言われても、恐らく岩手県民でさえその位置をイメージできない可能性がある。そのため、ほんの少しだけ説明しようと思う。もっとも来訪という観点で言えば、大船渡市民でさえ訪れた経験のない人々も多いと思われる。

岩手県の地図※筆者で一部加筆

岩手県大船渡市三陸町綾里は、岩手県の南東の端側にある地域である。東日本大震災では、大船渡市の中で比較的大規模な被害を受けている。また、地形の関係から、津波の到達点が高かった地域でもある。

津波の到達点(高さ)に関しては諸説あるため確かなことは言えないが、大船渡市は東北の中で2番目~3番目に高かったと言われている。その高さを出したのが綾里地区と見られる(繰り返しになるが諸説ある)。

また、東日本大震災が発生した2011年3月11日の夕方、多くの帰宅途中の生徒が津波によって流されたという情報が飛び交った。後にこれは誤情報だったことが判明するが、その情報で流されたとされた地域が綾里地区である。

今回の山火事が起きているのは、その綾里地区の田浜下というエリアである。古くは気象観測ロケットを飛ばしていた気象観測所に向かう際に通過する集落であった。

2年前の式年大祭の時期に訪れた場所でもある。

2025年2月大船渡市三陸町綾里の山火事の延焼エリア(想像)

上記は、筆者が目視で確認した火の手が回っている場所から、想像で作成した2月21日夜時点での山火事の延焼範囲である。赤枠で囲ったエリアに隣接する薄い灰色の道路があるが、その内側に住宅地がある。

つまり、この道路を超えるかどうかが、今回の山火事で家屋の被害が出るかどうかの分水嶺である。恐らく、自衛隊・警察・消防署・消防団が重点的に守っているラインでもあるのだと思われる。


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岩手県大船渡市三陸町綾里の田浜地区で起きた山火事(山林火災)を写真で見る

ここからは、岩手県大船渡市三陸町綾里の田浜地区で起きた山火事について、写真と共に様子を見ていく。なお、様々なマスメディアで報道されていることから、より詳細な状況を追う場合は、それらを見た方が良いと思われる。

それでは、2025年2月19日に撮影した写真から見ていこうと思う。

岩手県大船渡市三陸町綾里地域山林火災の様子(2月19日~2月20日:遠方から見た様子)

2月19日昼過ぎの様子。部分的に煙が立ち上がっている
2月20日夜①。火の手が大きく上がっている様子が見える(昼は陽光で遠くから火が見えない)
2月20日夜②。火の手が広がっている様子が伺える
2月20日夜③。火の手が沖合側に伸びている様子
2月20日夜④。沖合だけでなく、山全体へと火の手が広がっており、住宅地へと迫っている様子が伺える

岩手県大船渡市三陸町綾里地域山林火災の様子(2月21日:住宅地側と遠方から見た様子)

2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子①:奥の方に煙が広がっているのが見える
2月21日昼。田浜地区の様子。震災以前は多くの建物があった
2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子②:①の撮影時の背中側。こちらにも火の手が回っている様子が伺える
2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子③:②の別角度。林の奥に煙が広がっている
2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子④:②の1時間~2時間後。消化の影響もあるが、複数の煙の筋が上っている様子が見える
2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子⑤:②と④側にある小道を進んだところ。前方に煙が見える。道が荒れているのは、経年荒廃に加えて昨年木々を伐採した林業業者が片付けをせずに去った影響とのこと
2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子⑥:住宅地から200m程度の位置だが、既に燃えている様子が伺える
2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子⑦:⑥の別角度。火の粉によるものか発火点が散っている。近くに消防団は控えているが、様子見(様々な事情・計画によるものと思われる)
2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子⑧:⑦で見られた火が種火になって燃え広がる
2月21日昼。遠方から見た様子。2月20日夜④とほぼ同じ位置で撮影
2月21日夜①:一つ前の写真と同じ位置で撮影。住宅地に迫るほど燃え広がっている
2月21日夜②:山林火災の規模が広範囲にわたっているのが伺える
2月21日夜③:2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子⑤の小道の50mくらい手前の宅地から。昼用に奥へと行くのが非常に危険になるほど火の手が迫っている
2月21日夜③:2月20日夜②と同じ位置での撮影。より住宅地側へと火が押し寄せているのが分かる
2月21日夜④:2月20日夜④と同じ位置で撮影。沖合側は沈静化したようにも見えるが、住宅地側への延焼が伺え、事態の悪化が想起される

大船渡市三陸町綾里の田浜地区での山火事(山林火災)は、2月21日の朝時点で225ha規模が焼けたとされ、夜時点で数年前の岩手県釜石市で起きた山火事に匹敵する規模になる可能性が示唆されている。

参照:林野庁「日本では山火事はどの位発生しているの?

林野庁の資料によれば、数年前に発生した釜石市での山火事の焼損面積(ha)は2002年の観測以降最大とされており、それに匹敵する規模となれば、過去20年少しの中で最大規模の山火事となる。

大船渡市では昨年5月に同じく三陸町で山林火災が起きている。こちらは綾里地域に隣接する越喜来(おきらい)地域のやはり岬の方が燃えており、9haが焼損した。このときは、雨が降った影響で早期の鎮圧が実現している。

一方で、今回については雨による鎮圧を望める状況になく、また乾燥・風の影響が大きい時期での山火事となる。そのため、住民にとって不安な日々が長く続くと見られ、その生活をどうしていくかが課題になる可能性がある。

追記:岩手県大船渡市三陸町綾里地域山林火災の様子(2月22日:住宅地側と遠方から見た様子)

2月22日の23時時点では、大船渡市三陸町綾里地域で発生した山火事(山林火災)は、状況が悪化に向かっている様子が見聞きされる。

山火事の状況を想像して作成したMap

地元紙である東海新報の2月22日発行分の記事によれば、2月21日時点における焼損範囲は赤線より下とされる。規模としては318haと言われている。今回の山火事において、防衛線になると見られるのは、青線部分である。

青線部分は道路となっており、青線より左側(外側)が居住地となっている。といっても青線の道路に面して建っている建物は多くなく、最も近くても100m以上離れている。一方で、燃えやすいものが多く、青線を割って左側(外側)に火の手が移ってしまうとたちまち危険な状況になる。

焼損範囲の拡大という意味合いにおいては、上部の青線の上側(外側)に火の手が回ると焼損する面積が更に大きなものになる可能性が高い。青線の下側(内側)で火の手を抑えられる限りにおいて、焼損は田浜地区と野々前地区に限定されるが、青線の外側に出ると白浜地区まで延焼範囲が拡大する恐れがある。

地図上の丸で囲ったエリアは、先述の「2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子⑧」の写真が撮影されているエリアである。四角は、2月22日19時時点で火の手が迫っている住宅地である。この区画で火の手が拡大した場合、危険に晒される住宅が増えるだけに、緊迫感が高まっている。以下は、2月22日に撮影した写真だ。

2月22日①:「2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子⑥-⑧」と同じ場所。奥に見える赤色のものは消防車
2月22日②:「2月21日昼。火の手の接近が危ぶまれる住宅地の様子⑥-⑧」と同じ場所。奥の方に燃え広がっている影響か昨日よりも炎が増えている
2月22日③:ヘリコプターが消火活動に訪れた。昨日は様子見の色合いが濃かったエリアだけに、火の手の広がりを感じる
2月22日④:昨日火がついていた場所は鎮火されていた
2月22日⑤:定点観測化しているが、元正栄北日本水産株式会社付近から撮影。左側が住宅地側だが、その辺りから煙が立ち上っている様子が見える
2月22日⑥:こちらも定点観測化しているトンネル前からの様子。依然として煙が立ち上っている
2月22日⑦:やはり定点観測化している小路地区から見た様子。昨日よりも落ち着いているように見える
猫がいた
今日は船の姿が多く見られている
2月22日⑧:2月21日夜③と同じ場所から撮影。依然として火の燃え広がりを感じる
2月22日⑨:19時前後に漁港から見た様子。住宅地に近い場所が燃えている様子が伺える
2月22日⑩:元正栄北日本水産株式会社付近から見た様子。住宅地側へと火の手が広がっているように見える。一方で消防車が集まってきている様子が伺える
2月22日⑪:トンネル前からの確認。依然として昼に煙が立ち上っていた辺りが燃えている様子が伺える
2月22日⑫:小路から見た様子。若干ながら落ち着いたように見える一方で火の手が点在しており、また奥の方で広がっているようにも見える

23時時点で、大船渡市内の防災放送にて消防団の緊急招集が呼びかけられている。火の手が拡大を見せているためだ。各報道機関の報道は18時前の報道が多く、山火事が落ち着きつつあるかのような印象を受ける。しかしながら、その後消火活動の休止と風の強まりにより、事態が急速に悪化している。明朝消火活動が再開されるまで緊迫感が高まると見られる。

個人的な話

冒頭でささやかに触れているが、今回岩手県大船渡市三陸町綾里地域で起きた山火事(山林火災)は、筆者にとって対岸の火事ではない。困ったことに当事者である。

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