シャリンバイ
自宅前の歩道脇に小さな植栽地がある。十二月の夜、ヤマモモの樹の幹にホタルのような光点がびっしりと群がり、枝からはレモン色の光がグラデーションを描いて流れ落ちる。サツキとオトギリソウの植え込みでは、赤と青と緑と橙色の光が賑やかに点滅している。
だが、玄関のドアを開けて真正面に見えるのは、それらイルミネーションを背景にしたシャリンバイの、洞窟の入り口のような黒々としたシルエットだ。独り飾りをまとわず、周囲の光を捕獲し、吸収し、紡錘形に肥え太ったブラックホール。光は永遠に解き放たれることはない?
小雨の降り続く初夏の夜、玄関のドアを開けると、濡れた葉の一枚一枚が街灯の光を反射して、シャリンバイはクリスマスツリーのようにキラキラ輝いていた。