怪猫伝
見渡す限りの
涼やかな朝の恐怖である
舐めたらまだ夜の味がするコンペイトウの砂漠に棲むモフネコが眼ヤニをふきふき起床するやいなや頭蓋が核爆発しくさった
蒼天にエレクトするキノコ雲は
ごっつう禍々しゅうてドモならんのう 骨灰まみれのコンペイトウが草原に七日七晩降り続けたという
千のモフネコの千の首は
千万の弾頭に増殖して極超音速ミサイルに装填すると無数の瞳孔が縦に光り出しました
それで、猫又AIの
秘儀的核実験は成功したの?
次は千のヒトでやろう
あなたは高まる動悸を抑え切れない
口角から泡混じりのヨダレを垂らしながらノーズクリップを装着して瀝青の海を大汗かいて背泳するスイミンググラスの眼ン玉かっ開いて
ミサイル噴射は脳天の
渦巻きを逆回転させ無色透明無味だがひどい腐臭のする穴を開けてその中であなたが飼育した鍋島藩のモフネコはキノコ雲のエキスを吸いながら孵化する
あなたも真夜中に
あんどんを舐めるの?
ざらざらの舌で
液晶画面を舐めるの?
海が果て砂漠が尽きる処で
屍骸となった都市のハイウェイを疾駆するフェイクの太陽に溶かされて ネバネバと糸を引く繭の中からモフ猫又に劣情するあなたが撒き散らす放射性物質ゼノンの華
発赤する湿疹
じゅくじゅくと黒化する地衣類の
全世界への自由闊達な感染
あなたの尻尾は七つに裂けている
ちぶさも九つに裂けてゆく
跳べ! おらパライソさ行くだ*
うっとーしいミサイルと
核爆発後の廃野でほがらかにM字開脚を決めるあなたの
モフネコ怪猫伝
ニャ~コラ、、
*「おらパライソさ行くだ」
諸星大二郎のマンガ作品中のセリフより拝借。