冬を待つ
まだ頬の紅い子どもの頃に
玩具のポストに投函した手紙は
頬の蒼い大人になれば
約束の樹にもたれ掛かって
恋人を心待ちにしている時にしか
配達されて来ないから
舞い落ちるイチョウの葉っぱを
一つ一つ数えながら
ひとり手紙を待っていた僕は
淡いピンクの残像だけを残して
コスモスの花が萎れていることに
気が付いたのでした
最後の葉っぱを見送った
ケヤキは空に辿り着けなかった
せめてあの雲に触れようと
枝先を尖らせて
精いっぱいに背伸びするけど
どうしてそれが
僕の胸に突き刺さるのだろう
海のように深いけれど
取るに足らない僕の悔恨は
ちぎれた手紙の破片と一緒に
褐色の落ち葉と混じり合い
風に吹かれて地を這って
川から海へ流れ着いて
流木の鳥に咥えられ
あの空まで飛んで行けるなら
やがて来る冬に
夜空を舞い降りる雪が
この街を純白に染めてくれるだろう