道に迷った夢《Dream Diary 39》
xxxx年/06/08(x)
私は東の大都市から故郷の町へ車で帰る途中だった。東の大都市というのは東京のことですか? いや故郷の町から見れば大阪も東の方角だ。名古屋もだ。京都もじゃないか? 京都は東からやや北の方角だな。つまり東北だ。東北地方に京都は無いぞ。東北地方にはイーハトーヴがあるんだぞ。嘘つけイーハトーヴは故郷の町の隣りの港町にあるスーパー銭湯の名前だぞ。まったくスーパー銭湯の奴らだきゃあすぐイーハトーヴだのホビット村だのサラザール・スリザリンだの、その手のお花畑な名前ばっか付けやがって、グァンタナモ湾収容キャンプとか煉獄怒張学園とか驚邏大四凶殺とか、もっとこうなんちゅうか、ワシらみたいな港湾労働者の切ないハートにグッと来るような名前を付けられんのか。センスの問題じゃセンスの。などと面白くもない話を打ち切るために教えてやるが、東の大都市とは実は大阪のことなのだ。私は大阪から車で西ヘ向かい、故郷の町へ帰る途中だった。大阪から兵庫に入って30分くらい走っただろうか、その辺りで道に迷ってしまった。私は車を路肩に停めて降りてみた。周りには沢山の家と複雑な路地で出来た街がどこまでも続いている。路地の一つを歩いて行くと、三叉路の中央に三人のオバちゃんが立って、ボッティチェリの『春』に描かれた三美神みたいに頭上に揚げた手を絡ませて世間話をしていた。三オバちゃん神だ。「国道2号線に出るにはどう行けばいいですか?」 彼女達に尋ねると、口調を揃えて「北のこっちへ~行って東へ~、そのあと~南のあっちを~曲がって西へ~」と歌いながら指差して教えてくれた。ああ、あそこら辺だな。だいたいの見当が付いたので、私は車に戻って教えられた経路を行こうとした。しかし最早私には、東西南北の方角がさっぱり分からなくなっていた。分からないまま車を走らせていると、やがて道路が六つに分かれた場所に来た。六つの矢印を組み合わせた木製の方向指示標識が、それぞれの道の行く先を表示している。私は車を停めて思案した。イーハトーヴやホビット村やサラザール・スリザリンは問題外だ。煉獄怒張学園と驚邏大四凶殺は、こないだDVDで視たしマンガも読んだから、一度グァンタナモ湾収容キャンプへ行ってみるか。私は方向指示器を点滅させると、ゆっくりと車を発進させた。