赤トンボ
夕焼け小焼けのコーヒーショップ
実を言うとそれほど
コーヒーが好きなわけじゃない
わけが分からないまま
この世界に投げ出された私の
「在る」と「居る」を持て余して
どうしていいのかさっぱり分からず
コーヒーでも飲むほかないのだ
趣味や嗜好や気晴らしなんてものは
だいたいそういうことだ
「なんならこんなコーヒーなんか、
赤トンボにでもくれてやらあ~~っ!」
ヘンな人がいると思われてはマズイ
小声で叫んで顔を上げると
視野がこれまでとはまるで異なり
全方向に360度広がって見える
これは複眼による視覚世界?
私が赤トンボになってしまった!?
すると 前のテーブルの女子高生達が
抜き足差し足で私の前にやって来ると
人差し指でグルグルやりだした
Whole宇宙的女子高生指先グルグル
キュ~~~~~~~~~~ポトッ
女子高生達はキャッキャ笑いながら
目を回した私を指でつまんでは
しげしげと眺めて面白がっている
あ、シッポのあたりを撫でられると
あああ、なんだかとっても 気持がいいな
こんなに気持ちがいいのなら
もうコーヒーなんかいらないや
そう思った瞬間ヒトに戻った
「 ヘンな人がいる~!」
女子高生達は悲鳴を上げながら
店の外へ逃げて行った
なんなんだよ
コーヒーでも飲むか
*マガジン:「コーヒーショップの物語」