【詩】架空
ぼくの頭のなかで咲いた
架空の桜が満開なので
ぼくは架空の友達を呼んで
昼間からお酒を飲みまくって
ふたりで大盛り上がり
架空の花びらが散るたびに
ぼくらの時間も過ぎ去っていって
明日仕事行きたくねえなあ
ぼくがぼんやりつぶやいて
架空のきみは無言で首肯して
お酒がなくなってきて
ぼくは架空ストアに行ってきて
てきとうに架空ビール
架空チューハイなどを買ってきて
桜の木のもとに戻ってきて
くだらない架空話をして
きみの架空顔はうっすらかすんでいて
明日仕事行きたくねえなあ
ぼくがふたたびつぶやいて
架空のきみはすうっと消えていって
そして当惑する隙もなく
架空の春はどんどん加速して
架空の桜は禿げ散らかって
架空のきみは跡形もなくなって
見上げれば視界不良で
振り返れば後の祭りで
前を向けば八方塞がりで
もう仕方がなくなって
つまみの架空チップス頬張って
でもお酒の缶はカラで
気づいた頃には
架空は架空でなくなり
嘘は嘘でなくなり
それでもぼくはぼくのままで
なにもかも
手の施しようがなくなりました
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