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【短編】意思薄弱

今日は少しばかり気取った心持ちで、できうる限りの朗らかな表情をつくり、いくばかの小銭をポッケに突っ込んで、都会の街を歩いてみた。ただ闇雲に、輝かしいネオンに色付けられた街並みを彷徨い歩いた。ほかにやりたいことなんて、ひとつもなかったから。「家族円満」なんて言葉はもう聞き飽きた。「永遠の愛」なんて言葉はこれっぽっちも共感できない。どうしていつも、こんな後ろめたい気持ちになってしまうのか。間違った人生を歩んできたつもりはない。甘ったれた歳の重ね方をしてきたつもりもない。なのに、そう胸を張って否定するには戸惑いを感じてしまう。そんな自分が情けなくて、もどかしくて、厭になる。普段入ることのない百貨店に入り、普段見向きもしないラグジュアリーエリアを敢えて選び、帰路を遮るように歩き続けた。歩いて歩いて、それでも歩いて。気がつくとティファニーの指輪を眺めていた。売り場のディスプレイを覗き込んで、吟味してるふりをしてみた。けれど実際は、そんなに見てなかった。なにを見たらよいのかさえ、よくわからなかったから。



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