【詩】てへぺろ
ある日世界は
てへぺろに目覚めた
てへぺろをすれば
すべてが丸くおさまり
すべてが赦される世界
ぼくもてへぺろ
わたしもてへぺろ
毎日てへぺろ
ずっとてへぺろ
料理に失敗したって
てへぺろ
悪さして怒られたって
てへぺろ
仕事で色々やらかしても
てへぺろ
宿題ぜんぶ忘れても
てへぺろ
てへぺろは正義
てへぺろは優しさ
社会現象のてへぺろ
世間が絶賛するてへぺろ
雑誌をめくれば
てへぺろ特集が紙面をかざり
テレビをつければ
芸能人がてへぺろについて語る
街じゅうてへぺろ
あふれんばかりのてへぺろ
まさにてへぺろ天国
てへぺろこそが理想であり
てへぺろこそが救いでもあり
また時にてへぺろは癒しでもある
老若男女みんなてへぺろ
朝から晩までてへぺろ
ある日きみは言った
てへぺろなんて
馬鹿馬鹿しい
てへぺろなんて
消えてなくなればいいのに
てへぺろなんて
てへぺろなんて
そんなきみの痛切なる嘆きに
わたしは慈愛に満ちた心で寄り添い
そっと後ろから抱きしめて
振り返った憂い顔のきみに
てへぺろ
する振りして
あえてしない
そんなわたしを見て
きみはあきれてため息ついて
観念したかのように
てへぺろ