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【読書感想文】ホリーに叱られない読書の仕方

ホリー・ジャクソン 服部京子=訳『優等生は探偵に向かない』東京創元社(2022年)。

を読んだ。

この本は、9月に読んだ『自由研究には向かない殺人』に続く、ホリー・ジャクソンのミステリー小説。

『優等生』は、『自由研究』から地続きの物語で、主人公や周りの登場人物も再登場する。

再登場というか、続編というか、本作は『自由研究』のその後の話から始まり、また主人公ピップが謎解きをすることになり……というお話。

前作で謎が残った人々の話(伏線回収)とも言える。

前作で、作者ホリー・ジャクソンに私が本を先走ってチラ読みしては、竹篦返しをくらい、どんでん返しで叱られる。

ということを、何度となく繰り返したので、今回はお利口に最初からよそ見をせず、チラ読みもほぼせず(?)、頭から順番に読んだ。

あと何ページ位あるかなと確認する時に、文字が見えちゃうこともある。

それを含まなかったら、パーフェクトにチラ読みしてない!

ホリーに叱られることはない。

よしよし。

この本では、コナーというピップの同級生で友人が、兄のジェイミーが突然家に帰ってこないという事態に、ピップに助けを求めるところから始まる。

ピップは前回の事件を解決に導いたことで、小さな町リトル・キルトンでは有名人。自身のポッドキャストで、事件を解決に至らせた紆余曲折を公表するということもしている。

今回はそのポッドキャストのシーズン2と銘打って、ジェイミー探しが始まる。

ポッドキャストやSNSを通じて、情報を集め、事件を解決に導いていく。

さて。

SNSとは、情報の塊でありながら、魔の巣窟のような面も併せ持つ。

匿名で、訳知り顔にコメントして、ピップやコナー一家に対する、誹謗中傷もある。

でっち上げではないのか。

ジェイミーが失踪したなんて、都合が良すぎる。ピップの売名行為じゃないのか。

そんな中、前作にも登場した人物X(ネタバレになるので伏せます)の裁判が終わる。ピップたちの思わぬ形で。

わたし、世間知らずだったんです。(中略)わたしにとって真実はなにより大切なものでした。だから信条としてとてもこだわっていたんです。どんな犠牲を払っても真実を見つけだすと。そして真実とはつまり、Xは有罪で、Xに正義の鉄槌が下されることを意味していました。しかし現実の世界では正義なんてものはどこにも存在せず、真実はたいして重要ではなく、司法制度のもとでXは自由を取りもどしてしまった

p.422より引用
(Xはネタバレ防止のため、私が書き換えました。本文中には、登場人物名が入っています)

ピップは、自信を失う。

自分が何者か見失う。

何のために、何をしているのか。

真実とは、事実とは何なのか。

司法制度とは、社会的な正義とは何か。

ピップのしていることは、正しいのか。

この本の最後に以下の文がある。こちらもネタバレ防止のため人物名をYとした。私の勝手な改変なので、ご注意をば。引用部分の「自分」というのは、ピップのこと。

"ぼくたちは同類だよ、きみとぼくは。心の奥底ではきみはそうだとわかっている" Yの声が入りこんできて、頭の中でしゃべりはじめる。なにより恐ろしいのは、Yが間違っているかどうか自分にはわからないこと。自分がYとどう違うのか、具体的に指摘できない。ちがうということはわかっているけれど。それは言葉ではあらわせない"感覚"なのかもしれない。もしくは、ただたんにそう望んでいるだけなのかも。

p.534-535より引用

正義とは。

ピップやYがしたことは、確かに同じベクトルを向いている。

物理的な違いはないだろう。

社会的な制裁が与えられない、社会的な罰が認められない事態に、個人の力だけで解決しようと、取り組もうとしている点については、特に。

でも、私はピップとYに大きな違いがあるとすれば、それは迷いと、内省だろうと思っている。

迷いのない人間は「間違えない」。

自分の行うことに確信をもっていて、何も恐れない。

それはある意味、すでに正義ですらなく、盲信とも言え、身勝手な私刑とも言える。

この本を読んでいて、社会的な正義が機能しない時、司法制度が機能しない時、無力な個人たちが何をし、何ができ、何を信念とするべきかを問われているように感じた。

そこに必要なのは、間違いなく、自らを正しいのかと内省する力であり、そして一度信じたことでも、迷うことだ。

人生に一本道がないのと同じように、何事も枝分かれしていく無数の選択肢の中で、迷い、傷つき、信じ、選び、反省しを繰り返していく他ないのだろうと思う。

ホリー、こんな読みでどうでしょう。

先走ったり、チラ読みもしなかったし、ちゃんと読みました!

ピップとYは違う。

私は確かにそう思う。

ーーー
今月3冊目!

もう1冊読める、かな……。

欲張らないほうがいいかな。迷。

【今日の英作文】
人生は一度きり。目一杯生きなきゃ。
You only live once , so you should live it to the fullest.

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