#生き方「ムチ、時々アメ」

「うりもくん、ほんと下手くそね〜」

大学一回生の頃、

クリスマスを楽しく過ごしたい一心で、

夏から始めた恋人探しのコンパ活動で、

やっと見つけたMさん。

年齢は1つ上の、

目鼻立ちがくっきりした、

少し綺麗な感じの女性だった。

なぜか盛り上げ役に回ってしまう自分に、

珍しく積極的に声をかけてくれた。

「ねえ、連絡先、教えてくれない？」

今でもドキドキしたことを覚えている。

Mさんとは、

2回目、3回目と2人で会ううちに、

お付き合いすることとなり、

クリスマス当日は、聖夜となった。

お付き合いが深まるうちに、

Mさんからよく怒られるようになった。

明らかに私の力不足。

「もう、あなた男でしょっ！」

どんどん自信が失われていく。

来る日も来る日も、

男らしくあろうと努力をした。

でも、

結局怒られてしまう。

「もう、しんどいかも‥」

と気持ちが萎えそうになった時に、

Mさんは、少し微笑みながら言う。

「そんなうりもくん、かわいいよっ」。

ムチが多い中で、

時々ふっと渡される、

アメ。

それはそれは、

甘く感じるものだ。

この世で1番甘いスイーツ。

そして私はもう一度奮起する。

できる限りの努力をする。

だが現実は憧れに程遠く、

再び、怒られる毎日。

耐えきれなくなった私は、

春の訪れとともに、

とうとうMさんに別れを告げた。

たまたま私は、

口に頬張ったアメを、

すぐに噛んで粉々にしてしまうタイプ。

アメ沼からは無事に脱出できたが、

恐るべし、

ムチ、時々アメ。

八風さんの恋バナを聴いて、

ふと自分の懐かしい記憶が、

蘇ったのだった。

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