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#秋の創作活動⑤最終話:さよならウーリー【ウーリーと黒い獣たち】

「待って待って〜っ、

 こわいこわいこわいっ、

 こんなに激しい雨、

 見たことないわ〜」

オロオロしっぱなしだったが、

自分を信じて、

つながる人達を信じて、

選ばれし勇者として前へ進み続けた。

その結果、

念願の母ルボンとの和解が成立し、

役割を終えてホッとした私だったが、

やはりターリキィ王国の状況が気になり、

急いで我が家に戻ることにした。

なぜか留守だったカイサーも戻り、

幸せの再会を果たしたのだが、

着替えの途中だった私に

外の雨で体を洗い流すように言うカイサー。

少し意味がわからなかったが、

いつものように、

言う通りに従うことも

幸せなことだと感じていた瞬間。

突然カイサーが

豪快に何かを空に投げる仕草をみせた。

種のようなものが空高く舞い、

7つの方向に散らばると、

急に大きな光が国中を覆い、

そして私の裸の身体までも

急に光り出したのだった。

「いやんっ」

と思わず私が言葉を発したと同時に、

空の様子が大きく変わった。



戦いが終わってから、

ポツポツと雨は降り出してはいたのだが、

おそらくターリキィ王国の

日照りの危機を一気に救うほどの

大粒の雨が空から降ってきたのだった。

これをゴリラ豪雨と言うべきか。

信じられない光景だった。

民衆は大喜びで歓声を上げ、

広場は笑い声のうねりを巻き起こした。

更に、

今まで中止されていた、

国営放送の

「アクーンのバズリだすわよ!」

の配信が突然、

国全体に流れ出し、

アクーン王の

得意のネマノモである

アカンオールスターズの歌の熱唱が始まった。

懐かしい歌声。

これはアクーン王の復活を意味した。

民衆の中には、

アクーン王の

『今3時っ!』

の歌中の掛け声に、

『そうね、言うてもうてるね〜♪』

と大声で歌い返し、

雨の中でも思わず屋外で踊り出す者達も

ゾロゾロと出てきた。


私も共に喜びを感じようと

調子に乗って裸で外を走り回り、

シャワーを浴びるかのように

久しぶりの恵の雨を楽しもうと思ったのだが、

あまりの雨の激しさに、

剛毛のわりに皮膚があまり強くない私は

チクチクと強い痛みを感じだした。

足を止め、

思わずしゃがみ込んでうつむき、

「えっ、痛い痛い、痛いて〜」

と叫んでしまった。

その弱々しい勇者の姿を見たからか、

周りにいた民衆たちも

更にケラケラと

笑っているような雰囲気を感じた。


「おいっ、

 おーいっ、

 うーりーもーっ!、

 こら、うりもって言うとるがなっ!!」

たくさんの笑い声の中、

微かに聞こえてくる男の声に気付き、

うつむいていた私は

その声の方へ顔を向けた。

その声は、

なんと、

・・・・・・

クラスメイトの丹波(タンバ)の声だった。

「‥ん、えっ、こわいこわいこわい、ん?」

ハッとして、

もう一度周りをそっと見渡した。

自分は今、

確かに1年1組の、

教室の自席に座っていることに気付く。

続けて声をかけてきた丹波は言った。

「なんでデコピンしても

 全く気づかへんねんっ」

そのツッコミで、

周りのクラスメイトも再びドッと笑う。

「うりもって、

 最近友達を無視するよなっ、

 そんなんしてたら、

 ほんまに友達なくすでっ!」

衝撃的な言葉だった。

私自身、

全く身に覚えのないことだからだ。

「ちょ、ちょっと、待って待って待ってっ」

頭が混乱している。

とにかく、

立ち去ろうとしていた丹波を呼び止め、

必死に謝って、

今度モノマネを1つ披露することを条件に、

最近の自分の様子を教えてもらった。

私は髪の毛がくしゃくしゃになるほど

強く頭を抱えて驚いた。

どうやら私は、

周りに声をかけられても、

その声が聴こえず、

結果的にみんなを無視していたらしい。

頭やおでこ、腕などにデコピンをされても、

何も反応しないという筋金入りな態度。

クラスメイトのほとんどが

私のその態度に、

もう呆れている段階だったそうだ。

そう、

私は、

教室の窓側にある自席で、

妄想の世界に

どっぷりと浸っていたのだ。

知らないうちにどんどん頭の中で

描いていた物語。

いつしか、

自分でコントロールができないくらい

のめり込んでしまい、

周りの喋り声や物音さへも

聞こえなくなってしまっていたようだ。

「いやいや、

 勇者とか、

 言うとる場合やないやんっ」

デコピンされても気づかない程、

妄想していた自分が恥ずかしくなり、

小声で思わず

セルフツッコミを入れた。


その日から、

私にとって

「妄想」は、

現実の生活に支障をきたすもの

と捉えるようになり、

一切の妄想を絶ってしまうことになった。

私は現実世界において、

勇者ではなく、

憂鬱な気持ちになっただけの

ただの憂者だった。

そうして、

私の中の

『ウーリーと黒い獣たち』は、

その長い物語の幕を

閉じることとなったのだった。


私の頭の中で旅をしていた

ウーリーは、

いつしか記憶から無くなっていったが、

なぜか私のルックスには

ゴリラの余韻が

今でも刻まれたままだ。

(誰がゴリラやねんっ)

その後の人生において、

ウーリーのように

一国の勇者に選ばれるかは、

私にとって

果てしない道のりになりそうだ。

だって私は、

今日も、

他力(ターリキィ)本願で

生きているんだもの。


チャンチャンッ!

〜 完 〜



<これまでの物語はこちら>


秋の創作活動に協力してくださった
noterさん達をご紹介します!

◯書きのたねさん
◯アークン
◯彩夏さん
◯lovehaertさん
◯ららみぃたんさん
◯よしよしさん
◯ゆきママさん
◯西野圭果さん
◯ほっしーさん
◯習慣応援家shogoさん
◯チョコさん
◯souさん
◯うりも

本当に、

素晴らしい作品になりました!

ありがとうございました🙇‍♂️。

みんな最高!

つながりバンザ〜イ🙌✨。

ウーリーロケットペンダント予約受付中!笑



<打ち上げライブをします!>

本当にありがとうございました!

10月8日(火)21時〜。

「ウーリーと黒い獣たち

 完成記念打ち上げライブ!」

記事投稿してくださった方達で

訪れてくださる方に

苦労話やまだ頭の中にある妄想の続きなど、

お伺いしながら、

物語を読んでくださった方や

まだ物語を読んでいない方も一緒に、

楽しくお喋りをして楽しむ

ライブにしたいと思います!。

是非、物語を通して

つながりを深めましょう🎙️🦍✨。

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