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#生き方「スポットライトを浴びた夜」
「 絶対に違います!
調べてもらっても構いません!」
まるで私は舞台俳優のように
暗い闇の中、
スポットライトを浴びながら答えた。
小心者の私でも、
その日は大きな声を出さずにはいられなかった。
世間は週末で、
夜の街で楽しむ人達が沢山いた。
その頃の私は、
がむしゃらに働いていた。
その日も夜10時ごろ、
営業の仕事を終え、
クタクタになって
電車で最寄り駅まで戻ってきた。
疲れ切っていたが、
まだまだ営業職について、
間もなかった私は、
自分に足りないものを
なんとか補いたくて必死になっていた。
月の営業目標を達成しないといけないし、
何より、
お客様に本当に必要なご提案をしたいと思い、
色んな勉強をしようと
先輩から10冊近くの本を借りて、
大きな袋を抱え帰ってきた。
「ちょっと借りすぎたかな‥」
と思いながらも、
自転車の前カゴに入れて
駅の駐輪場から自宅へとペダルを漕ぎ出した。
思ったより前カゴの重みを感じていたが、
時にハンドルを取られ
小刻みに揺れながらも
とにかく早くお風呂へ入ってサッパリしたいと
家路へと急いだ。
すると突然、
後方から声がした。
「ちょっと待ちなさい!」
バイクで近寄ってくる音がした。
少し戸惑いながらも、
自転車を止めて後方へ振り向いた。
よく見ると、
険しい顔をした
小太りな警察官だった。
「はい、自転車止めて!」
状況が理解できないまま、
自転車のスタンドを立てた。
そんな私に
警察官は言った。
「君、お酒を飲んでるよね!」
私は思わず、
「はっ?」
と口走ってしまった。
すると警察官が続けて言う。
「後ろから見てたんや!
自転車の運転、
フラフラやないかいっ!」
「いやいやいやいや、
こわいこわいこわいっ」
私のいつもの口癖が出てしまう。
私はすぐに言い返した。
「仕事の帰りに本を借りてきて、
前カゴの本が重くて
フラフラしてただけですよ!」。
小太りな警察官は笑いながら言った。
「もうええって、
ちょっと待っとき、
すぐにわかるから」
小太りな警察官は、
無線で応援を呼び出した。
「ちょっと待って待って待ってっ」
私は暗い夜空を見上げた。
10分ほど
小太りの警察官は
ペンライトを当てながら
私が乗る自転車の登録番号などを調べた。
そうしているうちに
応援の警察官が1人、2人と
バイクで現場に到着した。
到着後すぐ、
ペンライトの光を浴びながら
私は飲酒チェックを受けた。
もちろん、
飲酒の反応はなかった。
ただでさえ仕事で疲れて、
更に努力をしようと重い荷物を持って
帰ってきただけの私。
イライラが募った。
静まり返っている警察官達の方を見た。
すると、
警察官は笑いながら言った。
「俺たちも
飲みたいのを我慢してるしなっ」
なんのはなしですか?
生まれたての子鹿が立つシーンのように
自転車のハンドルを左右に
プルプルさせながら、
必死にペダルを漕いで
前へ前へ進もうと、
真面目に生き抜いていた私の
スポットライトを浴びた
夜のお話だった。
<あとがき>
昨夜のスタエフライブでの
田和さんのメッセージと、
彩夏さんの名言を信じて、
を初めて投稿してみました。
田和さん、
回収をお願いします🙇♂️。
(私も参加させてもらいました!
とても楽しかったです😊)
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