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2024年8月3日 昼寝は夏の季語

夏の昼寝はどんな時期の昼寝よりも
格別です。
じりじり焼けるアスファルトや熱風から離れて、
薄暗い部屋の中で眠る時、
眠りは通常よりより一層、蠱惑的になります。

今日は、ジムに行って体を動かした後だったので、
より一層、眠りは深いものでした。

夏の昼寝に必要なものは、
エアコンの効いた部屋と水分と薄暗さ、
そして昼寝前に運動しておくことのようです。
子どもの頃、プールの授業後は
ひどく眠く、授業でもどうしても目をあけていられなかったことを
思い出します。
あの時の眠りに近い眠りが、
大人になっても得られるのです。
ノスタルジックに「子どもならでは」と思い込んでいたのですが
必要なのは、くたくたになるほど
身体を動かすということだったようです。

エアコンで部屋を冷やしておくのは
昼寝の準備としては当然です。
寝ている間に、熱中症になる危険性が高いので、
部屋は涼しくしておく必要があります。
うちでは、サーキュレーターも回しています。
部屋の中の空気をまわすのでより、涼しい気がします。
部屋がすっかり涼しくなったら、
麦茶で水分補給です。
個人的には麦茶に氷を入れるのはあまり好きではありません。
味が薄まってしまうような気がするのです。
昼寝前には、麦茶をコップ1~2杯は飲むことにしています。

夏の日差しはカーテンが遮っていることを確認した後、
電灯がついている場合は、消して、部屋を薄暗くします。
夏はもともとつけていないことも多いのですが、
部屋が薄暗くなると、
窓の外が一層明るく、乾いて見えます。
黄色っぽい光です。
あんな中に立っていたら、瞬く間に蒸発してしまいそうです。
薄暗くなると、少しだけ温度が下がったような気がします。
これで、夏の昼寝への準備は完了です。

寝ようと思わなくても
運動のおかげで自然と瞼が落ちてきます。
どうして、こんなに眠いのだろうと感じます。
夏の日、明るい中で眠ると
夜眠る時よりも、深く眠ってしまうことが多いようです。
日差しとのコントラストがそうさせるのか、
命の危険を感じた肉体がそうさせるのか、
短くても
いつもよりずっと深い眠りになります。

たとえるならば、
砂漠にある井戸の底、
深海の海底、
山奥の滝つぼの中にいるような
深い、眠りです。
見ている夢の内容にかわりがあるわけではないのですが、
「夢」の壁が分厚く、強固で、破れにくい感じがします。
日常の睡眠で見る夢は、
もろく、破れやすく、外からの感覚の干渉で
すぐに、色あせていってしまうのです。
夏の昼寝で見る夢は、そういう夢とは質が異なる感じがあります。
現実からとても遠く
そして、圧倒的な多幸感があるのです。
夢の内容は、覚えていませんが、めくるめく展開、
南米文学のようであった気はしますが、
とても幸せでした。

ただ、夏の昼寝には、1つ難点があります。
ひどく、深く眠るので、
目覚めるときがなかなか大変なのです。
目覚める時に
圧がひどくかかります。
身体に実際に圧がかかったように感じることもありますが、
おそらくあれは、
脳の機能に何らかの負荷がかかっているのでしょう。
井戸から地上へ上ってくるとか
深い海から陸へ上がるとか
滝つぼから浮上するように、
労力がいるものなのです。
時に、目覚めたいのになかなか目覚めることができず、
かなりの時間をかけて、
意識を戻していくことになります。
そういう体験をしたことがない人には、
「ひどく寝起きが悪い」と言われてしまうのですが、
それだと、気分の問題のようで納得がいきません。
あの起き難さは、脳のモード切替の問題で、
気分の問題ではないと思うのです。

あの深い眠りに至るには
現実世界で生きるモードの脳とは違う部分を使っているのだろうと
思っています。
だから、肉体が疲れていないと至れないのです。

時には、目覚めたいのに目覚められず、
何度も深い眠りと覚醒を行き来します。
これは、水圧がかかった海底から、水面までを
往復するようなもので、かなり苦しいことです。
時には、目をあけたいのに開けられず、
「開けろ開けろ」と念じ続けることもあります。
このまま目が覚めないのではないだろうかと思うこともなかなかの恐怖です。
深い睡眠から目が覚めるための鍵は
やはり肉体のようです。
寝返りをうてたり、瞼を開閉できたりすると
じわじわと深い眠りが溶けて消えていくのがわかります。

「死ぬ」ということを考えた時、
あの深い眠りの世界に行くのだろうか、と考えることがあります。
それならば、あまり怖くないような気もします。
むしろ、あの場所に長く滞在した後に、「生まれる」ことの方が苦痛だろうとさえ思うほどです。

夏は生命と死の季節。
だから、夏の昼寝では、あんな深いところまで降りていってしまうのでしょうか。

ちなみに、昼寝は夏の季語だそうです。

昼寝(ひるね)三夏

【子季語】
午睡、昼寝覚、昼寝起、昼寝人、三尺寝
【解説】
夏に仮眠をとること。夏は寝不足や暑さによる食欲不振などで衰弱することが多く、回復のために昼寝をする。弁当を終えた仕事師などが、ちょっとした日陰を選んで横になっているのは三尺寝。日陰が三尺ほど移る間の短い眠りであるところからこういわれる。


きごさい歳時記 

季語になるくらいだから、
やっぱり、昼寝は夏なのです。

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