12月20の手紙 世にも危険な医療の歴史
拝啓
年末に向けて、少しずつ仕事が落ち着いてきました。
ラストスパートに向けて、一息ついておこうか、と思った翌朝、
体が重くなりました。
寝ても寝ても、眠たいですし、
何となく体温が高い気がします。
気持ちの緊張が切れてしまったのでしょう。
かなり疲れがたまっていたようです。
一つ一つの動作が、のろのろしていて、何をするにも時間がかかります。
スマホでどうでもいい情報をあさり続けていることからも、
これは末期的状態です。
もう一度元気を取り戻すには、つまり、仕事に支障がない体の調子に戻すのには、なかなか骨が折れそうです。
「どうすれば、体の調子が戻るか」
体調の不調がわずかでもあると、そのことばかり気になるのが、人間です。
恋愛も、お金も、家族も悩みの定番ですが、健康も悩みの大きな部分を閉めるものだと思います。
ひどい咳喘息になった時のことを思い出します。
かなりつらい日々でした。
たかが咳、されど咳なのです。
生活がすべて、咳とともにあるということは、
かなりつらいものでした。
何をしても咳が気になります。
話をしても、仕事をしても、咳が出ます。
映画を見に行っても、咳が気になって集中できませんでした。
食事中でも咳が出てむせることもあります。
最も困ったのは、睡眠中も咳が出るということです。
深い睡眠に入った瞬間に咳が出て、
目が覚めてしまうのです。
人間は睡眠が浅い日々が続くとそれだけで、さらに体のの調子を崩します。
咳を続けてすることで、肋骨や腹筋が痛かったですし、
最終的には、咳の衝撃が大きすぎて、
腰痛が起きました。
咳と腰痛が同時に起きると、ひどい苦しみです。
直したいと思って、色々なものを試したことを思い出します。
結局、咳喘息は内科の薬で、
腰痛は時間をかけた、地道な筋肉トレーニングで治ったのでした。
一番効果があるのは、地道な治療でした。
でも、つらい時は、地道な治療を選べないのですよね。
思い切った治療、すぐよくなりそうな治療に手を出してしまいます。
咳喘息や腰痛でこれですから、
精神的な病気やがんなら、もっとそうなってしまうだろうと思います。
人間は、病気を早く、手っ取り早く治せるなlら、それを選んでしまうものなのです。
さて、今回は、
世にも危険な医療の世界史 リディア・ケイン、ネイト・ピーダ―セン著 福井久美子訳
の感想です。
書店で、この毒々しい帯に惹かれて、購入した本です。
内科医のリディア・ケインとフリージャーナリストのネイト・ピーダ―センの共著です。
現在では驚くような治療法が、ごくごく最近まで、頼られ、信じられていたことを、多くの資料から写真とともに紹介してくれる本です。
元素、植物と土、器具、動物、神秘的な力、という5部に分けられ
さらに具体的な章に分けられています。
元素の部では、水銀や金など、
植物と土の部では、アヘン、タバコ、土など
器具の部では、瀉血、ロボトミー、焼灼法など、
動物の部では、ヒル、断食など
神秘的な力の部では、動物磁気、ラジオニクス、ローヤルタッチなど
が取り上げられています。
高校の時は世界史を選びましたし、雑学も好きでしたから、
知っていることや単語もそれなりにあったのですが、
それでもこれだけまとまって読むと
「知っていた風に思っていただけだった」ということに感じ入ります。
「昔の人は、バカバカしい治療に頼っていたんだね」などと思えるのは
最初の数ページだけです。
高みの見物をしていられるのは、医療の世界史を知らずにいるからです。
最後まで、読めば、
現代医療や薬学に心底、畏敬を抱くだけでなく、
「今、自分が受けている治療は本当に真実正しいのか」
「飲んでいる薬は大丈夫なのか」
更に言うと、
「健康にいいといわれている習慣や食べ物は果たして本当にそうなのか」という疑念がが湧き上がってきてかなりぞっとします。
例えば、最近、
「入浴時にエプソムソルトを入れると、体が温まる」という
ネット情報を知って、
ネットで購入して、うきうきと湯舟にいれていますが、
果たしてそれは本当に効果があるのか、という話なのです。
例えば、
今から110年程前には、放射性物質、ラジウムが健康にいいと思われていて、
ラジウムが崩壊した際に発生する
「ラドン」という希ガス元素を飲料水に溶け込ませて
飲むことがはやっていたらしいのです。
放射性物質の健康問題が明らかになるまでは、「ラドン」入りの飲料水を作る装置が売れていたとか…。
昔の人は愚かだったと断言できますか?
最近まで、日本では、水素水が流行っていたではないですか。
水素水を飲んだことがある人も、
よくわからないけれどエプソムソルトを浴槽に投げ入れている人も、
ラドン入り飲料水をつく装置を買ってた人を馬鹿にはできません。
医療と科学は進歩していても
人間が健康になりたい一心でやる行動の一部は
バカバカしくも非科学的なのです。
でも、自分の中にもその非科学的な部分が確かにあって、本当に恐ろしくなりました。
自分は、近代的な文明人だと、ほとんどの人は思っているわけですが
流行りの治療やダイエット、薬に飛びつく様子は
数百年もしくは千年程は変わっていないようです。
「科学的に考える」というのは、実はかなり難しいものなのかもしれません。
医療史ですから、グロテスクな表現と感じる部分もありますが、
イラストや資料写真も多く、軽妙で、読みやすい本でした。
(この軽妙な語りの背景には、恐ろしい数の死人と苦しみがあるわけですが…。)
入浴しながら、読んでいたので、
後半は、入浴剤と思って投げ込んでいる物質が本当は何なのか、安全な物質なのか、不安になりました。
現代の健康基準、流通基準が昔ほど緩くないことを祈るばかりです。
そして日本の現在の医療には、心から敬服と称賛を送りたくなる本です。
我々市民でも、丁寧な治療や服薬ができるのは、本当にありがたいことです。
怪我の治療で焼きごてをあてられたり、切断されたり、体調不良で、毒を飲まされ嘔吐させられたㇼ、タバコ浣腸をされたりする時代でなくて、本当に感謝です。
出来れば、比較的健康で、安全な状況にいるときに読むのをお勧めします。
心から、今の健康や、状況に感謝できると思いますので。
この記事が参加している募集
気に入ったら、サポートお願いします。いただいたサポートは、書籍費に使わせていただきます。