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【読書ノート】44「水と原生林のはざまで」アルベルト・シュヴァイツァー

アルベルト・シュバイツァーはドイツ出身の哲学者、神学者、医者で、アフリカのガボンでの医療等にその生涯を捧げ、ノーベル平和賞を受賞した。この本は1921年に出版されたもので、第一次世界大戦勃発前後の4年半にわたるガボンでの活動の記録である。意外なことに本書では現地で医療活動の詳細よりむしろ、ガボンの黒人社会の有様や彼らの生活、またそこに滞在している白人たちの木材ビジネス、キリスト教伝道の様子などの方に多くのページを割いている。今から100年ほど前の西アフリカの奥地の様子が生き生きと伝わってくる。本書は1957年に翻訳出版されて版を重ねているが、やはり名著だと思われるので第一次世界大戦後の活動記録であるランバレネ通信 (シュヴァイツァー著作集に収録) 共々、(光文社あたりから)新訳をぜひ出版して欲しい。 

「われわれも、われわれの文化も、ひとつの大きな責任を負っている。我々は他の地域の人々に善を行いたいとか、おこないたくないとかの自由をまったく持たない。おこなわなければならないのである。我々が彼らに善を行うのは慈善ではなくて償いである。疾病をもたらしたもの一人に変わる救助をもたらす一人が出て行かなくてはならない。我々が力いっぱいなしたとしても、罪の千分の一も償うものではない。これを基礎としてかの地におけるあらゆる「愛のわざ」は考えられ、打ち立てられなければならない。」
「・・・ 国家も国家として この償いを助ける義務があることは自明の理である。しかし、国家は、これをなそうとの考えが社会にある時に初めて行うことができる。のみならず、人道問題は国家の手一つで消して解決できるものではない。これはその本質上、社会と個人とに関することであるから。」

p167

「我々は自ら進んで 有色人種の間に出かけ、絶望的な最前哨に立って危険な気候や、故郷と文化とを遠く隔てた事情などのもとに、苦難の生涯を自ら選ぶ 意思を持たなければならない。私は自分の経験から彼らにできる善事の中に、彼らが捨てたすべてに関わる十分な報酬を見いだすであろうとその人たちに言うことができる。 」

p168

(2023年7月12日)

「ヤングインディジョーンズ」のこの回にシュバイツァー博士が登場する。


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