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【読書ノート】20「財政から読みとく日本社会――君たちの未来のために」井手英策

中高生向けジュニア新書だが大人が読んでも十分勉強になる。日本では社会保障はなぜ高齢者向けの支出が中心なのか,なぜ公共投資・公共事業が多いのか,他の先進国に比べ教育費の私的負担が多いのはなぜか,税の負担を重く感じるのはなぜか、など日本社会の基本的な事柄を財政という切り口で分析する良書。特に他の識者も同じことを言っているがやはり教育への投資は未来の日本にとって不可欠である。

「日本経済はバブル崩壊後の25年間で平均0.9%の実質成長率しか達成できていません。これは他の先進国と比べても明らかに低い数字です。潜在成長率をあげるには3つの方法があります。1つ目は、労働人口、つまり働く人の数を増やすこと、2つ目は設備投資を増やすこと、3つ目は技術革新によって生産性を高めていくことです。

ですが、人口減少社会にあって、かつ移民を基本的に受け入れていない日本では、今後労働人口が減少していくことは誰の目からみても明らかです。
また、企業が設備を海外に移している状況では、国内で設備投資を増やすことにも限界があります。ですから、日本経済の成長のカギは技術革新に支えられた生産性の上昇にあるわけです。

ところが既に見てきましたように、経済は長期にわたって停滞し、私的な教育費負担が難しくなる中で、公的な教育支出はいまだに先進国最低のレベルです。それだけではありません。技術革新を支えるのは基礎研究です。基礎研究の4分の3以上が大学や政府機関で行われていますが、日本の大学・政府機関による研究開発投資は先進国で下から2番目というのが現状です。

財政の中で教育の地位を高めていくことは、人間の権利、そして経済の未来、いずれにとってもとても大切なことだと言えるでしょう。」p147 p148

(2021年11月9日)


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