「金閣寺」三島由紀夫著
「金閣寺」三島由紀夫著
この作品で三島由紀夫は「美」という象徴的、観念的なものを破壊しようとした。
人間は何かに依拠せねば生きるのは難しい。しかし、依拠するという事は「依拠」したものの奴隷でもある。
ニーチェの「神は死んだ」という意識的な個人による個人の復権でもある。
これは近代以降の個人の自我の受難劇でもある。
三島は現実に起きた事件を題材にしてこの「金閣寺」を書いた。
小説としては傑作の部類に属する。
小林秀雄はこの著作を読み「最後に主人公は死ぬ(殺す)べきだったね」と言った。 個人が個人の自我を消失すれば比喩的には「死」である。
「芸術家は最初に虚無を必要とする」と小林秀雄が言ったように個人的自我は消滅し、高い次元で復活する。その為には「死」が必要なのである。無論、現実の死ではない。魂次元での「死」である。
小林秀雄が言った「己の宿命と刺し違えた」も個人的自我の解体、消去である。別名「無私」「無常」等々とも言う。
、、此の間の事情は説明し難い。
三島由紀夫と小林秀雄の世界観の違いである。
後年、三島由紀夫に対して小林秀雄は「我慢、辛抱が必要だ」と言う様なことを言っていた。三島由紀夫の自決を予感していたのである。
三島由紀夫の自決に対しての取材に対して、小林秀雄は全てにノーコメントであった。
読書メーターに書いた記事「金閣寺」三島由紀夫著
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