話すことのないエピソード
湿度を感じる夜風が
わたしの身体を通過する
後れ毛がうなじで無邪気に舞遊ぶ
また雨が降るのか分からない
歓迎されぬ重たげな雲が
真夜中なのに何層にも色彩を持つ
アルミの手すりは冷たく
揺れる樹木は緑の濃淡が妖しく
防犯灯は無機質に道を照らし
光に寄る虫は有限の命を使い切る
人差し指と親指で作るフレーム
切り取る夜景は変哲のない日常
つまらない夜の帳をも
あなたと見たいと望む趣意
きっと誰にも話すことのないエピソード
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