鉄の華(くろがねのはな)6
【星斗をつかむ】
文政五(一八二二)年の年が明けると、筆まめな藤兵衛は江戸からの帰郷を知らせてきた。水が温む四月ごろ本人に先んじて、こもで巻いた大きなつづらが届いた。つけられた手紙には、「江戸での成果につき屋根のあるところで丁寧に保管するように」との指示があった。
もともと江戸への出府は、藤兵衛が直接彦根藩から二百匁(口径五〇ミリ)玉大筒の注文を受けたことが発端だった。鉄砲の注文は、幕府からにせよ彦根藩からのものにせよ国友村の年寄を通すことが定めで、その取り決めを破っ