餃子と僕と、時々ラー油
私にとって餃子とは、王将でビールと共に食べるものであり、
スーパーで値引シールが貼ってある眠眠の餃子を油多めで焼いて食べるものなのだが、
奥さんにとっては、家で具材から手作りし、自ら皮に包むものであり、
キャベツではなく白菜を使用するものであった。
一緒に住み始めた頃から、何度も共に餃子作りを行い、未経験から始めたにしては、うまく包めるようになったと思う。
ただ、奥さんと比べるとひどいものである。
あるのかないのかわからないひだの部分で、かろうじで皮がくっついており、3個に1つは具材が皮からはみ出している始末である。
さらに、奥さんはスピードも速い。私が1つ包む間に3つは出来上がっている。
私も包んでみたい気持ちはあるものの、遅く見た目も悪いのであれば参戦するだけ足手まといなのではないかと考え、最近は具材作りと、焼きに専念している。
先日も、白菜が残っているからという理由で奥さんが、今日は餃子!と宣言した。
奥さんが、冷蔵庫に白菜が余っていると言ったから、今日の献立餃子に決定。
のような話で、白菜が余ってるから、と言われた時には鍋が頭に浮かんだが、鍋とは正反対のメニューで驚いた。
なんなら、挽肉はなかったから、買い足した。
それほど、奥さんの餃子には白菜が不可欠である。
王将で食べたり、みんみんの餃子や、ライフの冷凍餃子を食べたことはあったが、久々の手作り餃子で、包むブランクがある私は、せめてもの貢献をと思い、白菜を切った。
挽肉を加えてこねた。
塩胡椒は多めにし、生姜とニンニクもこっそり多めに投入した。
しそがあれば入れるとさらに我々夫婦好みの味になる。
この日はしそはなかったので、白菜、にら、挽肉というシンプルな具材になった。
2人で包んでいると、やはりスピードの差は歴然で、職人とバイト初日くらいの差があり、出来上がりの見た目に関しては大人と子供くらいの差があった。
奥さんが包むのが速いのか、私が張り切って具材を作りすぎたのが原因かはわからないが、事前に準備していた皮が足りなくなった。
包む工程では役に立たない私は、皮の買い足し役に立候補し、すぐに近くのスーパーに向かった。
20%引きになっている餃子の皮があり、迷うことなくそれを手に取りレジに急いだ。
会計直後、奥さんから連絡が入る。
「皮1つじゃ足らんかも」
慌てて売り場に戻り、最後の1つになっていた値引きされている餃子の皮を手にして、2分ぶり2度目のレジに向かう。
レジに向かう途中、お酒のコーナーが目に入った。
餃子にはアルコールも必要である。
素人はここでビールを買う。
確かに餃子にビールはよく合う。
だが、自宅での手作り餃子のいいところは、大量に食べられることである。
いくら安く食べられる王将だとしても、多く食べようと思うとそれなりに金額がかかってしまう。
人件費の部分を削っている、手作り餃子は、外で食べるよりは圧倒的に安く、大量に食べることができる。
我が家では、一番大変な包むという工程を奥さんに丸投げしてしまっているのだが。
ハイボールも悪くないだろう、だが、ビールもハイボールも炭酸で、餃子でお腹がいっぱいになる前に、炭酸でお腹が膨れてしまう。
これでは非常にもったいない。
自宅での餃子を十二分に楽しむためのアルコールは赤ワインである。
これは安ければ安いだけいい。薄い飲みやすい、ぶどうジュースのようなワインを餃子と共にぐびぐび飲むのが一番いい。
氷を入れるとなお良い。
その店にあった、一番安いパックの赤ワインも購入し、家に帰った。
自宅の4軒手前あたりから何やら香ばしい匂いはしており、家に着くと第一陣の餃子が焼き上がっていた。
焼きの工程も丸投げしてしまった。
「あー、赤ワイン頼めばよかった」
と奥さんが言う。
ペラペラのエコバックから、1,8リットルのパックの赤ワインを無言で出す。
「たまには役に立つやん」
コップに氷を山盛り入れて、赤ワインを注いで、2人ともまず一口飲む。
そこからは、2人ともほぼ無言で一心不乱に餃子を口に運んでいた。
まずは、酢に醤油、そこにラー油といったオーソドックスなタレにつけて食べる。
ラー油のこだわりというほどのものではないが、花椒の実が入っているラー油が個人的にはお気に入りである。
奥さんは、それで最後まで食べるのだが、私は味変をしたくなる。ポン酢で食べたり、酢胡椒で食べたりもする。
第1陣はあっという間になくなり、第2陣を並べて焼いている間に、奥さんは残りを包んでくれていた。
体感5秒くらいで1つ包んでおり、身贔屓と自分ができないこともあり、この数字は盛っているとは思うが、10秒では確実に1つ完成している。
結果的に奥さんは100個ほど包んでくれ、私も20個くらいは包んだ。
奥さんの餃子宣言から、買い物の時間なども合わせると2時間以上の時間を費やし、餃子パーティーが始まった。
餃子を包むのが速い奥さんでさえ、10秒ほどはかかる餃子は、10秒かかることなく食べることができ、食べ切れるのかと思っていた100個以上の餃子は、1時間もかからずに2人で全て食べてしまった。
もちろんワインもきれいになくなっていた。
コスパ最強、タイパ最悪の自宅での餃子パーティ。
次の日、部屋には餃子の匂いがまだ充満している。
朝はこの匂いだけで、ご飯が、
食べれるわけがない。