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エッセイ「深掘りするのが理由じゃなくて」
「深掘りするとネガティブになるんですか?」
と言われて、はて。と思った。
「そう言われてみると、深掘りしたらすべてネガティブな方向に行くかというと、そうとはかぎらないなと、今思いました」
「深掘りしても答えが出ないときは、苦しいかもしれないですけど」
「ああ、そうですね、答えが出ないと苦しいですよね。ただ、答えが出ないことを考えるのも好きなんですよ。考えること自体が楽しいところがあって。でもじゃあ、なんでそれがしんどくなってくるのかな…。楽しいことのはずなのに、だんだん落ち込んでくるんですよね。だから、深く考えるのがいけないんだ、深く考える自分の性質がいけないんだ、と思っていつの間にか自分を責めているんです。
でももしかしたら、考えることにすごいエネルギーを使って、疲れてきて、そのときに思考がネガティブになっているということかもしれないですね。リラックスしているときとか、落ち着いているときは全然ネガティブにならないし、むしろすごく前向きに考えられるんですよ。だから、ほんとうに、問題は考えることとか深掘りすること自体ではなくて、疲れに気づかないでやり続けてしまうというところにあるのかもしれません。
あと、今、この話で思い出したんですけど、昨日ちょうど、気づいたことがあって。
いつも仕事で原稿を書くとき、ものすごく疲れるんですよ。そのときにもよるんですけど、だいたい45分とかが限界なんです。目が疲れて肩が凝ってきて、頭が回らなくなって。でも昨日は、事務的な作業でいつもと同じようにパソコンに向かっていたのに、気が付いたら3時間くらいぶっ続けで作業していたんです。それもいつもほどの疲れもなく。だから、そのときに、私はライターという自分の仕事を軽くみていたんだなと思いました。毎回ものすごい神経を使って、エネルギーを使って書いていたんだと。そういう仕事を自分はしているんだと、ようやく気づいたんです。
だから、なるべく疲れないように、いつも心がけてはいるんですけど、これまで以上に気をつけたいと思いました」
「そうですね。あとは、疲れることはしょうがないので、疲れに気づくということでしょうね。気づくことで、休んだりとか対処ができますから」
「ああ、ああ、そうですね。たぶん今は、もう気づいたときにはすでに深みにはまっているという状態なので」
「疲れている、と認める指標を低くすればいいのかもしれませんね。疲れていることに軽いうちに気づければ、落ち込むところまでいかないでしょうし。回復させるのも早いでしょうし」
「ほんとうですね。さっきもお話ししたことですけど、私は周りの環境とか気候の変化とかにすごく刺激を受けやすくて、ただでさえ疲れやすいんですよ。それなのに、その疲れているかどうかの指標を、周りの人たちと同じように考えていたんだなと気づきました。会社勤めのときは仕事の量や内容を自分でコントロールできない部分が多かったし、みんなと同じような動きをしないといけなかったので、知らず知らずにすごく無理をしていたんだと思います。そう考えると今は、自分で選んで組み立てることができて、しかも自分の責任だし、そういった意味ではフリーランスは私に合っていると。だから今はまだ、自分で一から全部考えて作っていかないといけないという大変さにいっぱいいっぱいではありますけど、だからといって会社員に戻ろうとは全然思わないですね。不安でぐらぐらしながらですけど、ただ目の前のことにまい進していけばいいんだ、そう思っています。
あとは、平日の人がいないときに遊びに行ったりだとか、もうちょっとフリーランスの良さを満喫したいですね」
「そうですね(笑)、それはぜひ。無理をせず、過ごしてくださいね」
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