こころを癒す読みもの|玄鳥去頃に想う。
暑すぎた夏が終わり、
季節が、また、移ろいでいます。
春先、
駅前の雑居ビルに巣を作っていたつばめ、
その雛たちも巣立ち、
いまや玄鳥去、
海原を南へと、渡っている頃でしょう。
「あんな風に、空を飛べたら」
そんな憧れからか、
『空の飛び方』というアルバムを聴いていた、
あの夏の終わりを、おもいだします。
自然に近い生きものたちは、
自分のからだに優しい場所へ移動することで、
移ろう自然と共生することを選びました。
農耕することで定住を選んだ私たちは、
そういうわけにはいきません。
だから、
環境を自分たちにとって、
都合の良いものへと作り替えつづけて、
生きています。
居住まいを正すことから都市の発展まで、
私たち人間が、
その不自由を克服しようとする試みのように感じます。
命というものの、ひとつの指向性、
といっても良いかもしれません。
空を飛べない私たちにとって、
コントラストの強い季節の変わり目は、
何かと、
心身の不調を来しやすくなります。
今夏は、
流した汗の分だけ、からだはカラカラになり、
行き合った人の分だけ、こころはクタクタに、
なっていることでしょう。
その、
カラカラ、や、クタクタ、が癒される分だけ、
養生できる秋が来ることを願います。
そして、また、
鳥たちに、その旅の途中、ひと時の間、
疲れた羽を休める水辺があるように、
私たちの社会の不均衡と不平等、
それらから生まれた業によって、
声や言葉を奪われた者たち、
こころの傷を負った者たちが、
これ以上の傷を負うことなく、
癒しの旅を始められる水辺の季節となることを、強く、願っています。
あなたの命という名の時間を使って、
最後まで読んでいただいたことに、
心から感謝します。
どうか、
あなたのこころが、からだが、いのちが、
すこしでも、楽になりますように。
✎_U