主語が変わってもプロレスのマスクであるモノを作ろうと思った話。
みなさんこんにちは、
グラフィックデザイナーのウエマツです。
今回は、
『主語が変わってもプロレスのマスクであるモノを作ろうと思った話。』と題して、最近考えていたことについて書いてみたいと思います。
「主語が変わる」とは。
まず本題に入る前に、ご存知の方もいるかも知れませんが私はプロレスラーのマスクやコスチューム、キャラクターなどのデザインをしています。
今回制作していたのはのは「オーバーマスク」と呼ばれる、入場の際の演出として被るマスクになります。
特徴としては、戦うことを目的としていないので、派手な装飾を施すことができ形も自由度がとても高いモノになります。
例えば新日本プロレスのBUSHI選手でいうと、
↑ こちらが実際に試合をする用のマスク。
↑ こちらがオーバーマスクです。
これを試合用のマスクの上に被って入場し、見にきてくれているファンの方達を楽しませるためのもので、リングに上がったら脱いで役目は終了となります。
前置きが長くなりましたが、
今回はこのオーバーマスクのデザインを制作している際に考えていたことをまとめておきたいと思いこの記事を書いています。
ここから本題ですが「主語が変わる」、について、
今回の意図するところは、
となります。
もう少し詳しく説明します。
まず考えたいのが、プロレスのマスクの使用の主な目的ですがそれは、
「正体を隠してプロレスの試合をする。」です。
ここからさっき書いたように主語(目的)を変えてみます。
例えば目的を「展示」として、美術館に置いてみたとします。
その際、誰が見ても「プロレスのマスク」と認識してもらえるものってどんなものだろう、と考えていました。
例えば先ほどのBUSHI選手で言うと、
試合用のマスクは、人が被らずマネキンに被せて美術館で展示をしていたとしても「プロレス」を連想してもらいやすいと思います。
逆に先ほどのオーバーマスクは、何の情報もなくこのマスクを見た人でここからプロレスを連想する人はそれほど多くないかと思います。
なので、主語が変わったらプロレスのマスクとは呼ばれない可能性のあるモノと言えるわけです。
まぁ、このマスクのそもそもの目的は入場の演出。
あえてそれ単体ではプロレスとかけ離れたデザインにすることで脱いだ時のギャップを作るところまで考えて作られているので、これで正解ではあります。
ただ、今回オーバーマスクをデザインするにあたって今一度原点に立ち返り「プロレスのマスクとは。」というところを考え直していました。
そこで、上記のように同様にプロレスで使用されていてもプロレスを連想できるモノとできないモノがあることに気がつき、主語が変わってもプロレスのマスクと呼ばれるモノの特徴を把握しておく必要があると考えたというわけです。
プロレスを連想させるマスクとは。
それでは主語が変わってもプロレスを連想させるマスクにはどのような特徴があるかというとそれは、
これはあくまで私の主観ではありますが、このように定義付けしました。
私なりにプロレスのマスクを連想したモノの画像を何枚か載せておきます。
こんな感じでしょうか。
逆に同じように顔を覆うマスクであってもプロレスを連想できなかったモノの画像も載せておきます。
もう一度言いますがあくまで私の主観なので私とは違う感じ方をする方もいると思っています。
ただ、私の中でプロレスのマスクを連想させる大きな要因のひとつに「固さ」があると考えました。
同じようなデザインでも柔らかさを感じられるモノの方がよりプロレスを連想しやすいのでは、という仮説を立てています。
主語が変わってもプロレスのマスクを。
今回このようなことを考える背景にはオーバーマスクのデザイン制作があると冒頭に書きました。
現在制作中のマスクは、
新日本プロレス所属のBUSHI選手のものになります。
11/19、新日本プロレス、
栃木・FUKAI SQUARE GARDEN 足利(足利市民体育館)
レック Presents WORLD TAG LEAGUE 2024
この日に使用予定のものになり、当日は生配信もあります。
もしお時間ある方は見てみていただけると嬉しいです。
話を戻して、BUSHI選手はキャリアも長く、1000枚近く試合用のマスクやオーバーマスクを作ってきた方です。
そんな選手のマスクデザインです、その選手の作り上げてきたブランドやイメージを活かして今までのプロレスに少し無かったモノを作りたいと考えました。
そのためには本質的に試合用のマスクや、オーバーマスクのイメージを作っているものは何なのかを言語化しておく必要があったわけです。
今回のデザインの中で大事にしたのが、
「自分がだったらどんなマスクをお金を出しても買いたいか。」
というところです。
選手が試合で使用したマスクはサインを入れて売られることがよくあります。
そこで1プロレスファンとしてどんなオーバーマスクを買いたいかを考えたら、
プロレスのマスクらしさがあるモノ
バランスよくプロレスらしくない部分もあるモノ
となったわけです。
だからこそまずは、
「主語が変わってもプロレスらしいマスクを作る。」
を優先してデザインを進めていき、そこからどのようにプロレスらしさを外していくかを考えました。
10/29現在では、
選手からのGOも出て、マスク制作職人の手にデザインが渡り、そこから生地や色味、細かい調整や修正をしているという段階です。
この記事を読んでくれた皆さんも、どこかで様々なマスクや被り物を目にする機会はあるかと思います。
その時に「素材の固さ」という視点でもそれを見てみてもらえるとプロレスのマスクに対する解釈が深まったり、少し楽しい気持ちになるかも知れません。
今後またプロレスのマスクに対する解釈が深まったり、変化があったら記事にしたいと思います。
以上、ウエマツでした〜