「サムスン危機」報道20年とノーベル文学賞
◎毎年の風物詩というか、決まった時期に「サムスン危機」という見出しが踊り、業績悪化を伝える記事が載り始めてもう20年は経つ
昨日の日経新聞は、サムスンについて【増収も採算悪化に危機感】と題して以下のように伝えている。
「韓国サムスン電子が8日に2024年7〜9月期の連結決算速報値を発表し、3四半期連続で増収増益だった。ただ採算は4〜6月期に比べ悪化している。業績は市場の期待に届かず、足元の株価は年初来で約2割安い。半導体の先端品の開発が遅れ、競合との差を埋められないでいる。
(中略)
背景には業績が伸び悩んだことがある。7〜9月期の営業利益は前年同期比3.7倍の9兆1000億ウォン(約1兆円)だった。売上高は17%増の79兆ウォン。主力の半導体メモリーの市況が回復した恩恵を受けたものの、これまでに比べると勢いを欠いた。
営業利益は4〜6月期に前年同期比16倍の10兆4400億ウォンだったのに比べ、伸び率や額が縮んだ。韓国の証券アナリストなどの予測の平均(10兆4000億ウォン)にも届かなかった。」
世界のスマホ市場を席巻し、半導体生産でも日本企業よりも優位に立つ同社。上記の記事だけ見ても太字部分は増収増益を示し、それが鈍化しただけ。なのに毎回「サムスン危機」の見出しが躍り、明日にでも倒産するかの如き書き出しからの、よく読めば儲かっとるやんけ的報道が続く20年。それは、まるで亀田興毅選手の試合で、このあとまもなくゴングです!と絶叫しCM挟んで1時間を稼いだTBS以上ではないか。
日経をはじめ我が国の人民日報Y新聞、先ごろ子会社夕刊紙の休刊を決めた自民党御用紙S新聞、これらに周波数が近いネットニュースは、20年間一体誰の溜飲下げるためにサムスンが危機と記事を書いてきたのか。それはニッポンの失われた30年と重なり合って、落日からの旭日は遠く、いまだ同レベルの業績が出せる日本企業がない故の僻みなのか。
ノーベル文学賞へ毎年の期待はご本人も辟易ではないか
そしてまた、今年もノーベル文学賞選考が話題に。となると、今度こそはと期待がかかる村上春樹氏。もう十年は言われ続けただろう。
言うまでもなく同氏の作品は、世界中の人々に彼の思想や世界観が受け入れられ、影響を与えてきた。ここまで来たら受賞の有無で作品の価値は変わるはずもなく、毎回高まる周囲の過度な期待にご本人はもう辟易とされているかもしれない。
折しも今年は、現代韓国を代表する作家のハン・ガン氏が、同国民初でアジア人女性としても初となる同賞を受賞した。各メディア報道によれば、心に傷を抱えた人々と、その魂の回復を詩的で繊細な文章でつづり、著書「菜食主義者」に収録した1編が評価され、韓国で最高峰とされる李箱(イサン)文学賞を受賞。国際的な評価も高く、同書の英語版で16年、英国の国際ブッカー賞をアジアの作家で初めて受賞したとあった。よって、着実に評価を得てその前評判通り受賞を果たしたと言えるだろう。
今なお続く「サムスン危機」報道20年を振り返りつつ、隣国を代表する作家のノーベル文学賞受賞を一人の日本人として素直に喜びたい。
(以下随時追記)